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012 : 竜殺し
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「えっ?!
あんた、記憶がないのか?」
「そうなんだ…
何もかもきれいさっぱり忘れてしまった…」
「そうか…そんなことがあるんだな。
…なんだかうらやましいぜ。」
「うらやましい…?」
イシドールの言葉は酷く意外なものだったが、別に私のことをからかっているわけではなさそうだ。
「あぁ…出来ることなら、俺も全てを忘れたい…」
彼の事情を考えると、それはとても重い言葉だった。
「……忘れることは出来なくても、乗り越えることなら出来るさ…」
「俺にも乗り越えられるだろうか?」
「あぁ…必ずな…」
それから、日を重ねるごとにイシドールの足も回復して来た。
まだ多少の痛みはあるようだが、もう私の肩を借りることなく歩くことも出来るようになった。
栄養状態も良くなってきたせいか、顔付きも少しふっくらしてきたようだ。
そして、それからまた数日経ったある朝のことだった。
「イシドール、足の具合いはどう?」
「あぁ、ずいぶんと良くなった。」
「痛みはない?」
「そうだな。ほとんどない。」
「長いこと歩ける?」
「う~ん、どうなんだろう?
多分、もう前と変わらないように歩けるとは思うけど…
…どこかに行くのかい?」
「そうよ!
イシドール、あなたも私達と一緒に旅に出ましょう!」
「えっ…??」
私はクロワの突然の言葉に度肝を抜かれた。
当のイシドールも混乱しているようだ。
「イシドール、こんな所にいて何の希望も持たないまま死ぬことだけを考えて暮らしていくのはよくないわ。
こんな所、もう忘れなさい!
私達と一緒にこの町を離れましょう!」
「…で、でも…俺、金も持ってないし、町の者にみつかったらまた何をされるか…」
「お金なんて働けばなんとでもなるわ。
町の人達にみつからないように、夜遅くに発ちましょう!」
「でも…俺…」
あんた、記憶がないのか?」
「そうなんだ…
何もかもきれいさっぱり忘れてしまった…」
「そうか…そんなことがあるんだな。
…なんだかうらやましいぜ。」
「うらやましい…?」
イシドールの言葉は酷く意外なものだったが、別に私のことをからかっているわけではなさそうだ。
「あぁ…出来ることなら、俺も全てを忘れたい…」
彼の事情を考えると、それはとても重い言葉だった。
「……忘れることは出来なくても、乗り越えることなら出来るさ…」
「俺にも乗り越えられるだろうか?」
「あぁ…必ずな…」
それから、日を重ねるごとにイシドールの足も回復して来た。
まだ多少の痛みはあるようだが、もう私の肩を借りることなく歩くことも出来るようになった。
栄養状態も良くなってきたせいか、顔付きも少しふっくらしてきたようだ。
そして、それからまた数日経ったある朝のことだった。
「イシドール、足の具合いはどう?」
「あぁ、ずいぶんと良くなった。」
「痛みはない?」
「そうだな。ほとんどない。」
「長いこと歩ける?」
「う~ん、どうなんだろう?
多分、もう前と変わらないように歩けるとは思うけど…
…どこかに行くのかい?」
「そうよ!
イシドール、あなたも私達と一緒に旅に出ましょう!」
「えっ…??」
私はクロワの突然の言葉に度肝を抜かれた。
当のイシドールも混乱しているようだ。
「イシドール、こんな所にいて何の希望も持たないまま死ぬことだけを考えて暮らしていくのはよくないわ。
こんな所、もう忘れなさい!
私達と一緒にこの町を離れましょう!」
「…で、でも…俺、金も持ってないし、町の者にみつかったらまた何をされるか…」
「お金なんて働けばなんとでもなるわ。
町の人達にみつからないように、夜遅くに発ちましょう!」
「でも…俺…」
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