154 / 641
012 : 竜殺し
6
しおりを挟む
私は、川に沿って先日泊まった町まで戻った。
遠い所でなくて本当に良かった。
おそらく、夕方までには戻れるだろう。
町の食料品店で様々な物を買い込んだ。
魚を売っている店もあったが、イシドールは魚が嫌いなようだった。
いや、「嫌い」というのとは違う。
どう言えば良いのかわからないが、何か特別の理由があって食べないのではないかという気がした。
店先でそんなことを考えていると、店の奥で食べていかないかと声をかけられた。
到底レストランとは呼べるような店ではなかったが、それらしきことをしているようだ。
朝から何も食べていないこともあって私は店内に入った。
狭い店内には客は一人きりだった。
髭を生やした年配の男だ。
「あんた、竜の滝を見に来たのかね?」
老人は私を見るなり声をかけてきた。
「いえ…私は、この先の大きな町に行こうと思いまして…」
「仕事かね?」
「まぁ、そのようなものです。
ところで、竜の滝とはどこにあるのですか?」
「この町沿いに大きな河があったじゃろ?
あの河を遡っていけばすぐじゃ。」
「竜の滝という位ですから、何か竜にまつわる伝説でもあるのですか?」
「その通りじゃ。
竜の滝の滝壷には、昔、このあたりの守り神の竜が住んでおり、そのおかげで作物は豊富に実り人々は幸せに暮らしていたんじゃ。
ところが、ある時、ある男がその守り神である竜を殺してしまったんじゃ。」
「なぜ、そんなことを!?」
「町を守り、繁栄させてもらうため、竜には毎年生贄として若い娘を捧げていた。
その年は、男の一人娘が生贄になったからなんじゃ。
男は娘を捧げるのがいやさに、守り神である竜を殺したんじゃ!」
老人はまるで昨日のことのように熱を込めて語った。
「その後、竜の神の祟りによって滝壺の水嵩は増し、一晩にして川幅は何倍にもなり、田畑はすべて水没し多くの人々が亡くなった…
それ以来、この町では作物はほとんど実らなくなってしまったんじゃ…」
「なるほど…そんな伝説が…」
「伝説なんかじゃありゃあせん!
これは本当の話なんじゃ…
その証拠に、今でも竜を殺した男の末裔がおるんじゃ。」
「まさか!」
「本当じゃ!
隣町の町はずれに一人で住んでおる。」
遠い所でなくて本当に良かった。
おそらく、夕方までには戻れるだろう。
町の食料品店で様々な物を買い込んだ。
魚を売っている店もあったが、イシドールは魚が嫌いなようだった。
いや、「嫌い」というのとは違う。
どう言えば良いのかわからないが、何か特別の理由があって食べないのではないかという気がした。
店先でそんなことを考えていると、店の奥で食べていかないかと声をかけられた。
到底レストランとは呼べるような店ではなかったが、それらしきことをしているようだ。
朝から何も食べていないこともあって私は店内に入った。
狭い店内には客は一人きりだった。
髭を生やした年配の男だ。
「あんた、竜の滝を見に来たのかね?」
老人は私を見るなり声をかけてきた。
「いえ…私は、この先の大きな町に行こうと思いまして…」
「仕事かね?」
「まぁ、そのようなものです。
ところで、竜の滝とはどこにあるのですか?」
「この町沿いに大きな河があったじゃろ?
あの河を遡っていけばすぐじゃ。」
「竜の滝という位ですから、何か竜にまつわる伝説でもあるのですか?」
「その通りじゃ。
竜の滝の滝壷には、昔、このあたりの守り神の竜が住んでおり、そのおかげで作物は豊富に実り人々は幸せに暮らしていたんじゃ。
ところが、ある時、ある男がその守り神である竜を殺してしまったんじゃ。」
「なぜ、そんなことを!?」
「町を守り、繁栄させてもらうため、竜には毎年生贄として若い娘を捧げていた。
その年は、男の一人娘が生贄になったからなんじゃ。
男は娘を捧げるのがいやさに、守り神である竜を殺したんじゃ!」
老人はまるで昨日のことのように熱を込めて語った。
「その後、竜の神の祟りによって滝壺の水嵩は増し、一晩にして川幅は何倍にもなり、田畑はすべて水没し多くの人々が亡くなった…
それ以来、この町では作物はほとんど実らなくなってしまったんじゃ…」
「なるほど…そんな伝説が…」
「伝説なんかじゃありゃあせん!
これは本当の話なんじゃ…
その証拠に、今でも竜を殺した男の末裔がおるんじゃ。」
「まさか!」
「本当じゃ!
隣町の町はずれに一人で住んでおる。」
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
【完結】あなたの思い違いではありませんの?
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
複数の物語の登場人物が、一つの世界に混在しているなんて?!
「カレンデュラ・デルフィニューム! 貴様との婚約を破棄する」
お決まりの婚約破棄を叫ぶ王太子ローランドは、その晩、ただの王子に降格された。聖女ビオラの腰を抱き寄せるが、彼女は隙を見て逃げ出す。
婚約者ではないカレンデュラに一刀両断され、ローランド王子はうろたえた。近くにいたご令嬢に「お前か」と叫ぶも人違い、目立つ赤いドレスのご令嬢に絡むも、またもや否定される。呆れ返る周囲の貴族の冷たい視線の中で、当事者四人はお互いを認識した。
転生組と転移組、四人はそれぞれに前世の知識を持っている。全員が違う物語の世界だと思い込んだリクニス国の命運はいかに?!
ハッピーエンド確定、すれ違いと勘違い、複数の物語が交錯する。
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/11/19……完結
2024/08/13……エブリスタ ファンタジー 1位
2024/08/13……アルファポリス 女性向けHOT 36位
2024/08/12……連載開始
みそっかすちびっ子転生王女は死にたくない!
沢野 りお
ファンタジー
【書籍化します!】2022年12月下旬にレジーナブックス様から刊行されることになりました!
定番の転生しました、前世アラサー女子です。
前世の記憶が戻ったのは、7歳のとき。
・・・なんか、病的に痩せていて体力ナシでみすぼらしいんだけど・・・、え?王女なの?これで?
どうやら亡くなった母の身分が低かったため、血の繋がった家族からは存在を無視された、みそっかすの王女が私。
しかも、使用人から虐げられていじめられている?お世話も満足にされずに、衰弱死寸前?
ええーっ!
まだ7歳の体では自立するのも無理だし、ぐぬぬぬ。
しっかーし、奴隷の亜人と手を組んで、こんなクソ王宮や国なんか出て行ってやる!
家出ならぬ、王宮出を企てる間に、なにやら王位継承を巡ってキナ臭い感じが・・・。
えっ?私には関係ないんだから巻き込まないでよ!ちょっと、王族暗殺?継承争い勃発?亜人奴隷解放運動?
そんなの知らなーい!
みそっかすちびっ子転生王女の私が、城出・出国して、安全な地でチート能力を駆使して、ワハハハハな生活を手に入れる、そんな立身出世のお話でぇーす!
え?違う?
とりあえず、家族になった亜人たちと、あっちのトラブル、こっちの騒動に巻き込まれながら、旅をしていきます。
R15は保険です。
更新は不定期です。
「みそっかすちびっ子王女の転生冒険ものがたり」を改訂、再up。
2021/8/21 改めて投稿し直しました。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
一輪の廃墟好き 第一部
流川おるたな
ミステリー
僕の名前は荒木咲一輪(あらきざきいちりん)。
単に好きなのか因縁か、僕には廃墟探索という変わった趣味がある。
年齢25歳と社会的には完全な若造であるけれど、希少な探偵家業を生業としている歴とした個人事業者だ。
こんな風変わりな僕が廃墟を探索したり事件を追ったりするわけだが、何を隠そう犯人の特定率は今のところ百発百中100%なのである。
年齢からして担当した事件の数こそ少ないものの、特定率100%という素晴らしい実績を残せた秘密は僕の持つ特別な能力にあった...
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
転生初日に妖精さんと双子のドラゴンと家族になりました
ひより のどか
ファンタジー
ただいま女神様に『行ってらっしゃ~い』と、突き落とされ空を落下中の幼女(2歳)です。お腹には可愛いピンクと水色の双子の赤ちゃんドラゴン抱えてます。どうしようと思っていたら妖精さんたちに助けてあげるから契約しようと誘われました。転生初日に一気に妖精さんと赤ちゃんドラゴンと家族になりました。これからまだまだ仲間を増やしてスローライフするぞー!もふもふとも仲良くなるぞー!
初めて小説書いてます。完全な見切り発進です。基本ほのぼのを目指してます。生暖かい目で見て貰えらると嬉しいです。
※主人公、赤ちゃん言葉強めです。通訳役が少ない初めの数話ですが、少しルビを振りました。
※なろう様と、ツギクル様でも投稿始めました。よろしくお願い致します。
※カクヨム様と、ノベルアップ様とでも、投稿始めました。よろしくお願いしますm(_ _)m
魔がさした? 私も魔をさしますのでよろしく。
ユユ
恋愛
幼い頃から築いてきた彼との関係は
愛だと思っていた。
何度も“好き”と言われ
次第に心を寄せるようになった。
だけど 彼の浮気を知ってしまった。
私の頭の中にあった愛の城は
完全に崩壊した。
彼の口にする“愛”は偽物だった。
* 作り話です
* 短編で終わらせたいです
* 暇つぶしにどうぞ
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる