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012 : 竜殺し
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私は少年をおぶったまま、全力で走った。
幸いなことに町の者達はそれほどしつこくは追って来なかった。
人々の投石がなくなってから、私はやっと歩調を緩め普段のペースで歩くことが出来た。
「すまない…俺のせいで…」
「気にしなくて良いのよ。
でも、どうしたの?あんな所で倒れて…」
「具合いが悪くなってね…
向こうの山まで薬草を採りに行こうと思ったら、足がふらついて転げ落ちてしまって…
そしたら、足が痛くて立てなくなって…そこを、奴らにみつかって…」
「どっちの足?」
「こっちだ。」
クロワは反対側にまわりこみ、少年の足首に触れた。
「うっ…」
「……多分、折れてはいないと思うんだけど、ヒビが入ってるかもしれないわ。
早く手当てしないといけないわね。」
「あんた、医者なのか?」
「そうではないけど、少しならわかるわ。」
「彼女は医者よりも腕の良い薬師だ。
安心して任せておけば良い。」
「そうか…
迷惑ばかりかけてすまないな。
あ…俺の家はその林の奥だ。
家なんて呼べるようなもんじゃないけどな…」
少年の言った通り、そこはクロワの住んでいた小屋よりもさらに狭く汚い小屋だった。
私は少年を奥の寝床にそっと寝かせた。
「水はあるかしら?」
水瓶にあった水はあまり新鮮ではなかったため、私は少年に教えてもらった川まで水を汲みに行った。
クロワの見立てによると、少年の熱は風邪によるもの、そして、足首はやはりヒビが入ってるかもしれないとのことだった。
クロワに手当てを施された少年は、安心したのかぐっすりと眠っていた。
私も石で傷付いた傷を手当てしてもらった。
「とりあえずは良かったですね。
たいした病気ではなさそうで…」
「そうですね。
若いから足もしばらくすれば治ると思うのですが…
ただ、あの子は慢性的な栄養失調みたいですね。
あの痩せこけた身体をご覧になりましたか?」
「あの子はここで一人で暮らしてるんようですが…
先程の町の人々のことと言い、なにやら事情がありそうですね…」
「ええ…」
クロワの顔が暗く沈んだ。
幸いなことに町の者達はそれほどしつこくは追って来なかった。
人々の投石がなくなってから、私はやっと歩調を緩め普段のペースで歩くことが出来た。
「すまない…俺のせいで…」
「気にしなくて良いのよ。
でも、どうしたの?あんな所で倒れて…」
「具合いが悪くなってね…
向こうの山まで薬草を採りに行こうと思ったら、足がふらついて転げ落ちてしまって…
そしたら、足が痛くて立てなくなって…そこを、奴らにみつかって…」
「どっちの足?」
「こっちだ。」
クロワは反対側にまわりこみ、少年の足首に触れた。
「うっ…」
「……多分、折れてはいないと思うんだけど、ヒビが入ってるかもしれないわ。
早く手当てしないといけないわね。」
「あんた、医者なのか?」
「そうではないけど、少しならわかるわ。」
「彼女は医者よりも腕の良い薬師だ。
安心して任せておけば良い。」
「そうか…
迷惑ばかりかけてすまないな。
あ…俺の家はその林の奥だ。
家なんて呼べるようなもんじゃないけどな…」
少年の言った通り、そこはクロワの住んでいた小屋よりもさらに狭く汚い小屋だった。
私は少年を奥の寝床にそっと寝かせた。
「水はあるかしら?」
水瓶にあった水はあまり新鮮ではなかったため、私は少年に教えてもらった川まで水を汲みに行った。
クロワの見立てによると、少年の熱は風邪によるもの、そして、足首はやはりヒビが入ってるかもしれないとのことだった。
クロワに手当てを施された少年は、安心したのかぐっすりと眠っていた。
私も石で傷付いた傷を手当てしてもらった。
「とりあえずは良かったですね。
たいした病気ではなさそうで…」
「そうですね。
若いから足もしばらくすれば治ると思うのですが…
ただ、あの子は慢性的な栄養失調みたいですね。
あの痩せこけた身体をご覧になりましたか?」
「あの子はここで一人で暮らしてるんようですが…
先程の町の人々のことと言い、なにやら事情がありそうですね…」
「ええ…」
クロワの顔が暗く沈んだ。
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