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010 : 小人の歌曲
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クロワに頼めばなんとかしてくれるかもしれないが、クロワがそこまでする義理もない。
私としても、当然頼みにくい。
私は、自分の無力さを痛感した…
……次の日…
エドモンは、朝食も食べずにクロードの部屋に閉じ籠ったままだった。
今後のことがよほど心配なのだろう…
クロワが作った痛み止めの薬と滋養薬だけは飲んでくれたようだったが、エリックが部屋に行っても、エドモンは取り合わなかった。
しょんぼりとした顔で出てきたエリックにクロワが声をかけた。
「エリック、お姉ちゃんと遊びましょう!」
エドモンは、昨夜のジゼルの言葉に悲観して具合いが悪くなってしまったのかもしれない。
ジゼルに、エドモンの話をしてみようとしたのだが、今はまだ結論が出せないとのことで、聞いてはもらえなかった。
その晩、私は思い切ってクロワにエドモンの家の話をしようと思った。
しかし、クロワの様子がおかしい…
話しかけても上の空なのだ。
「クロワさん!!
私の話を聞いてますか?」
「え…??
あ…すみません。
今、少し、考え事をしていたもので…」
「一体、どうしたというのです?
さっきから、心、ここにあらずといった感じではありませんか。
なにか心配事でもあるのですか?」
「……ごめんなさい……
マルタンさん…あなたはクロードさんのお話をどう思いますか?」
「クロードさんの話?
小人がどうこうという話のことですか?」
クロワは深くうなずいた。
「小人なんてものがこの世にいると思いますか?
クロードは、ジゼルさんの言う通り、精神を病んでしまったのだと思いますよ。
きっと、作曲がうまくいかなかったことが原因でしょう。
お気の毒に…」
「でも、それにしてはやけに具体的なお話だとは思いませんか?」
「妄想と言うものは、時としてとても具体的で合理的な話を作り上げてしまうものです。
彼は芸術家だ…
普通の人よりも感性が豊かな分、現実感のある話を思い付いたのでしょう。
いや、彼にとっては、それは紛れもない現実だったのでしょう…」
「………エリックが言ったんです……」
「……え……?」
「『満月の夜、僕は小人さんのお家に連れて行かれるんだ』…と…」
「エリックがそんなことを……?!」
私としても、当然頼みにくい。
私は、自分の無力さを痛感した…
……次の日…
エドモンは、朝食も食べずにクロードの部屋に閉じ籠ったままだった。
今後のことがよほど心配なのだろう…
クロワが作った痛み止めの薬と滋養薬だけは飲んでくれたようだったが、エリックが部屋に行っても、エドモンは取り合わなかった。
しょんぼりとした顔で出てきたエリックにクロワが声をかけた。
「エリック、お姉ちゃんと遊びましょう!」
エドモンは、昨夜のジゼルの言葉に悲観して具合いが悪くなってしまったのかもしれない。
ジゼルに、エドモンの話をしてみようとしたのだが、今はまだ結論が出せないとのことで、聞いてはもらえなかった。
その晩、私は思い切ってクロワにエドモンの家の話をしようと思った。
しかし、クロワの様子がおかしい…
話しかけても上の空なのだ。
「クロワさん!!
私の話を聞いてますか?」
「え…??
あ…すみません。
今、少し、考え事をしていたもので…」
「一体、どうしたというのです?
さっきから、心、ここにあらずといった感じではありませんか。
なにか心配事でもあるのですか?」
「……ごめんなさい……
マルタンさん…あなたはクロードさんのお話をどう思いますか?」
「クロードさんの話?
小人がどうこうという話のことですか?」
クロワは深くうなずいた。
「小人なんてものがこの世にいると思いますか?
クロードは、ジゼルさんの言う通り、精神を病んでしまったのだと思いますよ。
きっと、作曲がうまくいかなかったことが原因でしょう。
お気の毒に…」
「でも、それにしてはやけに具体的なお話だとは思いませんか?」
「妄想と言うものは、時としてとても具体的で合理的な話を作り上げてしまうものです。
彼は芸術家だ…
普通の人よりも感性が豊かな分、現実感のある話を思い付いたのでしょう。
いや、彼にとっては、それは紛れもない現実だったのでしょう…」
「………エリックが言ったんです……」
「……え……?」
「『満月の夜、僕は小人さんのお家に連れて行かれるんだ』…と…」
「エリックがそんなことを……?!」
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