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ルカ(聖夜月ルカ)

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007 : バラの村

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その晩、私達は町の宿屋に泊まることにした。

「マルタンさん、大丈夫ですか?
まだ病み上がりなのですからそんなに無理をなさってはいけません。」

「ありがとう。
しばらく休ませてもらえば大丈夫だと思います。
…クロワさん、本当にあなたには何度も助けてもらって…感謝してますよ。
それなのに、私はあなたが私を置いて他の男と町を出ていったと信じこんでいた…
本当に申し訳なく思ってます。」

「マルタンさん…そんなこと、お気になさらないで下さい。」

クロワは、私の謝罪を快く受け入れてくれた。



「……すべてソレイユの暗示だったんですね…
……クロワさん…私のソレイユに対する気持ちはまやかしだと思われますか?
あの薬草の作用なのだと…」

「……いいえ……
マルタンさんのお気持ちは、きっと純粋なものだと思います。
…どうか、ソレイユ様を幸せにしてあげて下さい。」

それがクロワの本心かどうかはわからなかったが、それでもそう言ってもらえたことは嬉しかった。



「ありがとう、クロワさん…!
私も、自分の気持ちに自信があるわけではないのですが…
それでも、彼女を救ってやりたいと思うのです。
 彼女の過去を知って、私はあらためてそんな風に感じてしまったのです…」

「…マルタンさん…
ソレイユ様を守ってあげて下さいね。」

「ええ…そのつもりです。
私に何が出来るかはわかりませんが、彼女の心の支えになりたいと思っています。
ありがとう、クロワさん。
あなたのおかげで勇気がわいてきました。」

「良かった…
そうだわ、マルタンさん!
オーバンさんのことなのですが…」

「オーバン?
あなた、オーバンのことを知っているのですか?」

「ええ!
オーバンさんなら、メラニーさんの所にいらっしゃいますよ。」

「何ですって?
オーバンが生きている!?
しかも、なぜ、オーバンがメラニーさんの所に…?!」

クロワは、クロワがオーバンをみつけてからのことを話してくれた。

死んでしまったものと思っていたオーバンが生きていた…

それは私にとっては最高のニュースだった。

しかし、オーバンがメラニーの夫だったとは…
彼は一体どういったいきさつであの館で働くことになってしまったのだろう?

今更そんなことを聞いても仕方がないが、落ち着いたらソレイユと一緒にオーバンに会いに行こう…

ソレイユには謝罪させなければならない。
オーバンの家族には大変な迷惑をかけてしまったのだから…

いや、迷惑等という軽々しい言葉で済むものではない。 
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