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007 : バラの村
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「…そうなの。現れたのよ。
私が18の時だった。
この館が建てられ、私は今までの施設を離れ、ここに一人で暮らし始めました。
その時に、使用人として働いていたベルナールという男と私は恋に落ちてしまったの。
私達は深く愛し合い…そして結ばれました。
私は普通の女として彼と暮らしたいと、町長に打ち明けました。
そして、そのことでベルナールは、亡くなったのです…
秘密裏に処刑されたのです。
女王を汚した者として…
… …そう…私の愛した者は皆死んでいく…
ですから、私は、誰をも愛してはいけない人間なのです。
他人を愛せない人間を愛してくれる人なんているでしょうか…?」
抑揚のない声で、ソレイユはそう話した。
「ソレイユ…」
「マルタンさん!どうしてここへ…」
「ソレイユ…!!」
マルタンはソレイユをきつく抱き締め、口付けた。
「マルタンさん…」
クロワはその意外な光景に目を丸くした。
「昨夜、やっと思い出して…そして…
…私はあの時、薔薇の木を…」
「…薔薇の木…?」
「あぁ…君に喜んでもらおうと、薔薇の木を隠していた所へ取りにいって…」
「そうだったの……
でも、もういいの…
あなたは、夢を見ていただけなのよ…」
ソレイユは、口元に寂しそうな笑みを浮かべた。
「マルタンさん、実は…」
「…わかっている…話は聞いていた…
でも…私の気持ちは夢でもまやかしでもない…
私は本当に君を愛している…」
「マルタンさん…!!」
感情的なクロワの声が飛んだ。
「まだ、薬の作用が消えてないのね…
クロワさん、心配しなくて大丈夫よ、そのうちに覚めるわ…」
「違う…!
私は君と暮らしてきて、君のことを知っていくうちに本当に好きになったんだ。
断じて薬のせいなどではない!」
「……マルタンさん、そんなに私の身体がほしいのなら、いつでもお相手しますわよ。
なんなら今からでも…」
マルタンの動きが一瞬止まり、そしてその手がソレイユの頬を打った。
ソレイユは打たれた頬を押さえ、無表情でその場に立ち尽していた。
「……すまない。
だが、もうそんなことを言うのはやめてくれ。
ソレイユ…これからは私がベルナールの代わりになろう。
私のことをベルナールだと思ってくれればそれで良い。
私は命を賭けて君を愛する。
ソレイユ…ここから逃げて二人でよその町で暮らそう…」
「……マルタンさん……ありがとう…
私…打たれたのは生まれて初めてです…」
一粒の丸い涙を流すソレイユの身体を、マルタンは強く抱き締めた。
私が18の時だった。
この館が建てられ、私は今までの施設を離れ、ここに一人で暮らし始めました。
その時に、使用人として働いていたベルナールという男と私は恋に落ちてしまったの。
私達は深く愛し合い…そして結ばれました。
私は普通の女として彼と暮らしたいと、町長に打ち明けました。
そして、そのことでベルナールは、亡くなったのです…
秘密裏に処刑されたのです。
女王を汚した者として…
… …そう…私の愛した者は皆死んでいく…
ですから、私は、誰をも愛してはいけない人間なのです。
他人を愛せない人間を愛してくれる人なんているでしょうか…?」
抑揚のない声で、ソレイユはそう話した。
「ソレイユ…」
「マルタンさん!どうしてここへ…」
「ソレイユ…!!」
マルタンはソレイユをきつく抱き締め、口付けた。
「マルタンさん…」
クロワはその意外な光景に目を丸くした。
「昨夜、やっと思い出して…そして…
…私はあの時、薔薇の木を…」
「…薔薇の木…?」
「あぁ…君に喜んでもらおうと、薔薇の木を隠していた所へ取りにいって…」
「そうだったの……
でも、もういいの…
あなたは、夢を見ていただけなのよ…」
ソレイユは、口元に寂しそうな笑みを浮かべた。
「マルタンさん、実は…」
「…わかっている…話は聞いていた…
でも…私の気持ちは夢でもまやかしでもない…
私は本当に君を愛している…」
「マルタンさん…!!」
感情的なクロワの声が飛んだ。
「まだ、薬の作用が消えてないのね…
クロワさん、心配しなくて大丈夫よ、そのうちに覚めるわ…」
「違う…!
私は君と暮らしてきて、君のことを知っていくうちに本当に好きになったんだ。
断じて薬のせいなどではない!」
「……マルタンさん、そんなに私の身体がほしいのなら、いつでもお相手しますわよ。
なんなら今からでも…」
マルタンの動きが一瞬止まり、そしてその手がソレイユの頬を打った。
ソレイユは打たれた頬を押さえ、無表情でその場に立ち尽していた。
「……すまない。
だが、もうそんなことを言うのはやめてくれ。
ソレイユ…これからは私がベルナールの代わりになろう。
私のことをベルナールだと思ってくれればそれで良い。
私は命を賭けて君を愛する。
ソレイユ…ここから逃げて二人でよその町で暮らそう…」
「……マルタンさん……ありがとう…
私…打たれたのは生まれて初めてです…」
一粒の丸い涙を流すソレイユの身体を、マルタンは強く抱き締めた。
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