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ルカ(聖夜月ルカ)

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007 : バラの村

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クロワとメラニーが小屋の中へ入ると、オーバンの容態が急変していた。

オーバンは歯をガタガタと鳴らしながら、真っ青な顔をして脂汗を流して震えている。



「どうして!?
ずいぶんよくなりかけてたのに…」

「メラニーさん、ジャンをここから離して下さい。
そうですね、しばらく沢のあたりにでもいるように伝えて下さい。」

「わかりました。」

クロワは、テキパキと男の手足をベッドの支柱に縛り付けた。



「…クロワさん!
あなた、一体何を?!」

「メラニーさん、これからちょっと大変かもしれませんが、頑張って下さい。
そうだわ。何か布切れはないかしら?」

「……布切れ……これで良いですか?」

クロワはメラニーが差し出した布切れをオーバンの口の中に押し込んだ。



「クロワさんっっ!」

メラニーが叫んだのとほぼ同時にそれは始まった。

 縛り付けられたオーバンが狂ったように身体を動かそうと身をよじる。
 怖ろしいうめき声を発しながら…

布を詰め込まれているために言葉にはならないが、その声の大きさは狂気以外の何者でもなかった。

 今にも紐が切れてしまいそうな程、オーバンは身体をひどく動かす。
ベッドがぎしぎしと軋み、床を鳴らす。

そんな中、クロワは勇敢にもオーバンの身体を押さえ込んだ。

オーバンの肘がクロワの顔面を殴打し、膝がクロワの身体を蹴りあげる。

 怖ろしさに動くことも出来ず立ち尽くしていたメラニーが、ハッと我に返り、クロワと一緒にオーバンの身体を押さえ込んだ。


 「頑張って下さい!
すぐによくなりますからね!」

クロワはオーバンに向かって叫びながら、メラニーと共に身体を押さえ続けた。
クロワの声は、オーバンの耳には届いていないようで、オーバンは相変わらず狂ったようにうなり、もがいていた。



……そんな地獄のような時もしばらくするとようやく過ぎ去り、オーバンは死んだようにぐったりとしていた。

ぐったりとしていたのはクロワとメラニーも同様だった。
 二人とも髪を振り乱し、汗にまみれたまま床に座り込んだ。



「……メラニーさん…大丈夫ですか?」

「はい、私は大丈夫です。
それより、クロワさん!
あなた、瞼が……」

オーバンに殴られたクロワの目の周りは、青く変わっていた。



「こんなの…大丈夫ですよ。」

 心配するメラニーをよそに、クロワは起き上がりオーバンの汗を拭いていた。

そして、流し込むようにしてオーバンに薬を飲ませる。
 程なくして、オーバンは静かな寝息を立て始めた。



「……これでしばらくは大丈夫でしょう…」

クロワは乱れた髪を整えながらそうつぶやいた。



「クロワさん…オーバンは…一体どうなってしまったんですか?」
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