80 / 641
007 : バラの村
20
しおりを挟む
*
「ミシェル、あたし、やっぱり行くよ!」
カーラは、数日考えた末に、やはりクロワに伝えないままでは、もやもやして気持ちが悪いと言い出した。
「あたしがクロワだったら、やっぱりどんな情報でも聞きたいと思うもの。
役に立たない情報かもしれないけど、クロワの探してる人が生きてるって希望に繋がるかもしれないしさ。」
「……わかったよ。
おまえがそこまで言うなら、俺もついていくさ。」
「大丈夫だよ。
足はもうそんなに痛まないからさ。」
「行くって言ってんだろ!」
「……ミシェル…」
クロワが今、どこにいるかはわからない。
二人はとりあえず夏至祭の町へ向かうことにした。
*
やがて、二人はカーラの働いていた町に着いた。
「懐かしいね…」
「そんな気持ちになるにはまだ早いんじゃないか?」
「懐かしい気持ちに早いも遅いもあるもんか。
ここにはけっこう長い間いたからね。」
「……俺はあんまり来たくない場所だな…」
「……そんなこと言ったって、過去は消えてなくなったりはしないんだよ。
あんた、私のやってきたことをわかった上で好きだと言ってくれたんだろ?」
「そりゃあ、そうだけどな…」
町を歩くと、男達が気安くカーラの名前を呼ぶ。
そんな光景は、ミシェルにとってはあまり嬉しいものではなかった。
「おやまぁ!カーラじゃないか!」
珍しく女の声がカーラを呼んだ。
「あ!あんたは…えっと…」
「アマンダだよ、あん時は世話になったね。
私の店はすぐそこさ、一杯飲んで行きなよ。」
早くクロワに伝えたいという想いはあったが、ちょうど一休みしたい時でもあった。
少しくらいならかまわないだろうと、二人はアマンダに促されるまま、店に入った。
あの時のお礼だと言って、アマンダが二人の前に酒を並べた。
*
「なんだって!?
じゃ、クロワの探してる人じゃなかったのかい!」
カーラは、自分と一緒に町を出た赤毛の男はこのミシェルで、クロワの探してる人ではなかったことを話した。
アマンダはひどく驚き、クロワのことを心配している様子だった。
カーラは、さらに、自分達は薔薇の村で見た男のことをクロワに伝えたくてクロワを探しており、夏至祭の町に行く途中だと言うことを話した。
「なんだって?薔薇の村?」
カウンターの隅にいた男が驚いたように声をあげた。
「ミシェル、あたし、やっぱり行くよ!」
カーラは、数日考えた末に、やはりクロワに伝えないままでは、もやもやして気持ちが悪いと言い出した。
「あたしがクロワだったら、やっぱりどんな情報でも聞きたいと思うもの。
役に立たない情報かもしれないけど、クロワの探してる人が生きてるって希望に繋がるかもしれないしさ。」
「……わかったよ。
おまえがそこまで言うなら、俺もついていくさ。」
「大丈夫だよ。
足はもうそんなに痛まないからさ。」
「行くって言ってんだろ!」
「……ミシェル…」
クロワが今、どこにいるかはわからない。
二人はとりあえず夏至祭の町へ向かうことにした。
*
やがて、二人はカーラの働いていた町に着いた。
「懐かしいね…」
「そんな気持ちになるにはまだ早いんじゃないか?」
「懐かしい気持ちに早いも遅いもあるもんか。
ここにはけっこう長い間いたからね。」
「……俺はあんまり来たくない場所だな…」
「……そんなこと言ったって、過去は消えてなくなったりはしないんだよ。
あんた、私のやってきたことをわかった上で好きだと言ってくれたんだろ?」
「そりゃあ、そうだけどな…」
町を歩くと、男達が気安くカーラの名前を呼ぶ。
そんな光景は、ミシェルにとってはあまり嬉しいものではなかった。
「おやまぁ!カーラじゃないか!」
珍しく女の声がカーラを呼んだ。
「あ!あんたは…えっと…」
「アマンダだよ、あん時は世話になったね。
私の店はすぐそこさ、一杯飲んで行きなよ。」
早くクロワに伝えたいという想いはあったが、ちょうど一休みしたい時でもあった。
少しくらいならかまわないだろうと、二人はアマンダに促されるまま、店に入った。
あの時のお礼だと言って、アマンダが二人の前に酒を並べた。
*
「なんだって!?
じゃ、クロワの探してる人じゃなかったのかい!」
カーラは、自分と一緒に町を出た赤毛の男はこのミシェルで、クロワの探してる人ではなかったことを話した。
アマンダはひどく驚き、クロワのことを心配している様子だった。
カーラは、さらに、自分達は薔薇の村で見た男のことをクロワに伝えたくてクロワを探しており、夏至祭の町に行く途中だと言うことを話した。
「なんだって?薔薇の村?」
カウンターの隅にいた男が驚いたように声をあげた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
勘当された少年と不思議な少女
レイシール
ファンタジー
15歳を迎えた日、ランティスは父親から勘当を言い渡された。
理由は外れスキルを持ってるから…
眼の色が違うだけで気味が悪いと周りから避けられてる少女。
そんな2人が出会って…
わけありのイケメン捜査官は英国名家の御曹司、潜入先のロンドンで絶縁していた家族が事件に
川喜多アンヌ
ミステリー
あのイケメンが捜査官? 話せば長~いわけありで。
もしあなたの同僚が、潜入捜査官だったら? こんな人がいるんです。
ホークは十四歳で家出した。名門の家も学校も捨てた。以来ずっと偽名で生きている。だから他人に化ける演技は超一流。証券会社に潜入するのは問題ない……のはずだったんだけど――。
なりきり過ぎる捜査官の、どっちが本業かわからない潜入捜査。怒涛のような業務と客に振り回されて、任務を遂行できるのか? そんな中、家族を巻き込む事件に遭遇し……。
リアルなオフィスのあるあるに笑ってください。
主人公は4話目から登場します。表紙は自作です。
主な登場人物
ホーク……米国歳入庁(IRS)特別捜査官である主人公の暗号名。今回潜入中の名前はアラン・キャンベル。恋人の前ではデイヴィッド・コリンズ。
トニー・リナルディ……米国歳入庁の主任特別捜査官。ホークの上司。
メイリード・コリンズ……ワシントンでホークが同棲する恋人。
カルロ・バルディーニ……米国歳入庁捜査局ロンドン支部のリーダー。ホークのロンドンでの上司。
アダム・グリーンバーグ……LB証券でのホークの同僚。欧州株式営業部。
イーサン、ライアン、ルパート、ジョルジオ……同。
パメラ……同。営業アシスタント。
レイチェル・ハリー……同。審査部次長。
エディ・ミケルソン……同。株式部COO。
ハル・タキガワ……同。人事部スタッフ。東京支店のリストラでロンドンに転勤中。
ジェイミー・トールマン……LB証券でのホークの上司。株式営業本部長。
トマシュ・レコフ……ロマネスク海運の社長。ホークの客。
アンドレ・ブルラク……ロマネスク海運の財務担当者。
マリー・ラクロワ……トマシュ・レコフの愛人。ホークの客。
マーク・スチュアート……資産運用会社『セブンオークス』の社長。ホークの叔父。
グレン・スチュアート……マークの息子。
工芸職人《クラフトマン》はセカンドライフを謳歌する
鈴木竜一
ファンタジー
旧題:工芸職人《クラフトマン》はセカンドライフを謳歌する~ブラック商会をクビになったので独立したら、なぜか超一流の常連さんたちが集まってきました~
【お知らせ】
このたび、本作の書籍化が正式に決定いたしました。
発売は今月(6月)下旬!
詳細は近況ボードにて!
超絶ブラックな労働環境のバーネット商会に所属する工芸職人《クラフトマン》のウィルムは、過労死寸前のところで日本の社畜リーマンだった前世の記憶がよみがえる。その直後、ウィルムは商会の代表からクビを宣告され、石や木片という簡単な素材から付与効果付きの武器やアイテムを生みだせる彼のクラフトスキルを頼りにしてくれる常連の顧客(各分野における超一流たち)のすべてをバカ息子であるラストンに引き継がせると言いだした。どうせ逆らったところで無駄だと悟ったウィルムは、退職金代わりに隠し持っていた激レアアイテムを持ちだし、常連客たちへ退職報告と引き継ぎの挨拶を済ませてから、自由気ままに生きようと隣国であるメルキス王国へと旅立つ。
ウィルムはこれまでのコネクションを駆使し、田舎にある森の中で工房を開くと、そこで畑を耕したり、家畜を飼育したり、川で釣りをしたり、時には町へ行ってクラフトスキルを使って作ったアイテムを売ったりして静かに暮らそうと計画していたのだ。
一方、ウィルムの常連客たちは突然の退職が代表の私情で行われたことと、その後の不誠実な対応、さらには後任であるラストンの無能さに激怒。大貴族、Sランク冒険者パーティーのリーダー、秘境に暮らす希少獣人族集落の長、世界的に有名な鍛冶職人――などなど、有力な顧客はすべて商会との契約を打ち切り、ウィルムをサポートするため次々と森にある彼の工房へと集結する。やがて、そこには多くの人々が移住し、最強クラスの有名人たちが集う村が完成していったのだった。
転移先は薬師が少ない世界でした
饕餮
ファンタジー
★この作品は書籍化及びコミカライズしています。
神様のせいでこの世界に落ちてきてしまった私は、いろいろと話し合ったりしてこの世界に馴染むような格好と知識を授かり、危ないからと神様が目的地の手前まで送ってくれた。
職業は【薬師】。私がハーブなどの知識が多少あったことと、その世界と地球の名前が一緒だったこと、もともと数が少ないことから、職業は【薬師】にしてくれたらしい。
神様にもらったものを握り締め、ドキドキしながらも国境を無事に越え、街でひと悶着あったから買い物だけしてその街を出た。
街道を歩いている途中で、魔神族が治める国の王都に帰るという魔神族の騎士と出会い、それが縁で、王都に住むようになる。
薬を作ったり、ダンジョンに潜ったり、トラブルに巻き込まれたり、冒険者と仲良くなったりしながら、秘密があってそれを話せないヒロインと、ヒロインに一目惚れした騎士の恋愛話がたまーに入る、転移(転生)したヒロインのお話。
探検隊ルイーザと不思議な物語
旅立 マス
ファンタジー
ファンタジーは空想だけの世界だと思っていた。
絵や小説の中だけのものだと。
ある冒険家との出会いが、
主人公であるジュンの運命を変える。
ジュンはある出来事をきっかけに探検家として旅をする事を決意。
目的地は全ての異界の始まりの地と言われている、その名も始まりの異界
この地を求めて、ジュンは様々な出会いや戦いを通して冒険者として成長していく物語です。
果たして、始まりの異界とはどのような場所なのか
その場所を見つける事ができるのか?
魔がさした? 私も魔をさしますのでよろしく。
ユユ
恋愛
幼い頃から築いてきた彼との関係は
愛だと思っていた。
何度も“好き”と言われ
次第に心を寄せるようになった。
だけど 彼の浮気を知ってしまった。
私の頭の中にあった愛の城は
完全に崩壊した。
彼の口にする“愛”は偽物だった。
* 作り話です
* 短編で終わらせたいです
* 暇つぶしにどうぞ
小林結城は奇妙な縁を持っている
木林 裕四郎
ファンタジー
「谷崎町の山奥にある古屋敷に行けば、奇妙な事件を解決してくれる」
そんな噂を耳にした人々が、今日も古屋敷の前へとやって来る。
だが本当に奇妙なのは、そこに住まう者たちだった。
小林結城と、彼の持つ不思議な縁に引き寄せられて集まった仲間たち。
傷者部
ジャンマル
青春
高校二年生に上がった隈潟照史(くまがた あきと)は中学の時の幼なじみとのいざこざを未だに後悔として抱えていた。その時の後悔からあまり人と関わらなくなった照史だったが、二年に進学して最初の出席の時、三年生の緒方由紀(おがた ゆき)に傷者部という部活に入ることとなるーー
後悔を抱えた少年少女が一歩だけ未来にあゆみ出すための物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる