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007 : バラの村
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これといった特徴のない田舎町を三つ程通りすぎて、私達はやっと目的の村に着いた。
けっこう無理をして進んだので、予想していたより少し早くに到着した。
村の入り口には赤い薔薇を這わせたアーチがあり、「薔薇の村へようこそ」と、書かれた看板が下げられていた。
それだけではない。
村の至る所に、薔薇の花の花壇があった。
赤い薔薇、白い薔薇、小さな薔薇に八重咲の大輪…
様々な種類のものがあるが、どこもかしこも薔薇ばかりなのだ。
村中がかぐわしき薔薇の香りに包まれている。
「…すごいものだな。
こんなにたくさんの薔薇を見たのは初めてだ。」
「そうだろうな。
俺も、初めてここに来た時は驚いたぜ。」
「けっこう客も多いな。」
「あぁ、これほど見事な薔薇園はめったにないからな。
しかも、このあたりには遊ぶ所もほとんどない。
だから、ここには自然と人が集まって来るのさ。
本当は目立ちたくないんだが、夕方には店が閉まっちまうし、夜だと薔薇の木がしっかり見極められないからなぁ。
…とりあえず、さっさと買い付けて早くに出ようぜ。」
「前から不思議に思ってたんだが…
なんで、そんなに身を潜めなきゃならないんだ?」
オーバンは呆れたような顔を向けてこう言った。
「そんなこともわからないのか?
俺達が女王の世話をしていることがバレたら、男達から妬みを受けてどんな仕打ちを受けるかわからない。
考えてもみろよ。
普通の奴らには近寄ることさえ許されない…年に一度、パレードで遠巻きに見ることだけがせいぜいの女王なんだぞ。
神に選ばれた女王なんだぞ。
そんな女王の身近にいるなんてことがバレて俺達がひどい目に遭っては大変だと、女王は案じてくれているんだ。」
「そうだったのか…
女王はそんなにも俺達のことを…」
慈愛に満ちた女神のことを考えると、今、再び、私の心の中は彼女への感謝と愛で溢れんばかりとなっていた…
(あぁ…早く帰りたい…
早く彼女をこの手で抱き締めたい!)
私達は、村の中心部にある薔薇の店へ向かった。
「しっかり見るんだぞ。
病気にかかってないか、虫がついていないか、しっかりとな!」
私はオーバンに言われた通りに、店頭に並んだ薔薇の苗木を丁寧に見て回った。
これといった特徴のない田舎町を三つ程通りすぎて、私達はやっと目的の村に着いた。
けっこう無理をして進んだので、予想していたより少し早くに到着した。
村の入り口には赤い薔薇を這わせたアーチがあり、「薔薇の村へようこそ」と、書かれた看板が下げられていた。
それだけではない。
村の至る所に、薔薇の花の花壇があった。
赤い薔薇、白い薔薇、小さな薔薇に八重咲の大輪…
様々な種類のものがあるが、どこもかしこも薔薇ばかりなのだ。
村中がかぐわしき薔薇の香りに包まれている。
「…すごいものだな。
こんなにたくさんの薔薇を見たのは初めてだ。」
「そうだろうな。
俺も、初めてここに来た時は驚いたぜ。」
「けっこう客も多いな。」
「あぁ、これほど見事な薔薇園はめったにないからな。
しかも、このあたりには遊ぶ所もほとんどない。
だから、ここには自然と人が集まって来るのさ。
本当は目立ちたくないんだが、夕方には店が閉まっちまうし、夜だと薔薇の木がしっかり見極められないからなぁ。
…とりあえず、さっさと買い付けて早くに出ようぜ。」
「前から不思議に思ってたんだが…
なんで、そんなに身を潜めなきゃならないんだ?」
オーバンは呆れたような顔を向けてこう言った。
「そんなこともわからないのか?
俺達が女王の世話をしていることがバレたら、男達から妬みを受けてどんな仕打ちを受けるかわからない。
考えてもみろよ。
普通の奴らには近寄ることさえ許されない…年に一度、パレードで遠巻きに見ることだけがせいぜいの女王なんだぞ。
神に選ばれた女王なんだぞ。
そんな女王の身近にいるなんてことがバレて俺達がひどい目に遭っては大変だと、女王は案じてくれているんだ。」
「そうだったのか…
女王はそんなにも俺達のことを…」
慈愛に満ちた女神のことを考えると、今、再び、私の心の中は彼女への感謝と愛で溢れんばかりとなっていた…
(あぁ…早く帰りたい…
早く彼女をこの手で抱き締めたい!)
私達は、村の中心部にある薔薇の店へ向かった。
「しっかり見るんだぞ。
病気にかかってないか、虫がついていないか、しっかりとな!」
私はオーバンに言われた通りに、店頭に並んだ薔薇の苗木を丁寧に見て回った。
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