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006 : 黄昏の館
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クロワの旅は順調そのものだった。
地図を見るまでもなく、ただ道なりに進んで行けば良いだけ。
薬を売った代金があったため路銀にも事欠くことはなく、あっという間に目的の町に着いた。
気分的にはあっという間ではあったが、やはり距離はそれなりに離れており、アマンダの言った通り、一週間の時が過ぎていた。
その町は、特にこれといった特徴も感じられないのどかないなか町だった。
人影もまばらだ。
まずは、今夜の宿を探そうと思い、通りがかった男に尋ねてみたが、この町には宿屋がないという。
女の名前はカーラだということを聞いていたので、ついでにカーラのことを尋ねてみると、簡単にカーラの家がみつかった。
カーラは最近町に戻って来たばかりで、そこで赤い髪の男と一緒に暮らしていると言う。
どんな些細なこともすぐに筒抜けになってしまう…
田舎町特有のプライバシーの無さに、クロワは苦々しさを感じていたが、そのおかげでこんなに早くみつかったのだ。
今の所は、幸運だったと考えることにして、クロワはカーラの家を目指した。
三十分程歩くとその家はあった。
こじんまりとした古い家だった。
ちょうど夕食時だったのか、カーラの家からは野菜を煮たような匂いがしていた。
戸惑う気持ちを押し殺して、クロワは力強くドアをノックした。
すぐにカーラと思われる派手な身なりの若い女が出てきた。
「なんだい?」
「あ、あの…こちらはカーラさんのお宅でしょうか?」
「あぁ…あたしがカーラだけど、あんたは?」
「…実は、あなたにお尋ねしたいことがあって…」
カーラはクロワの姿を上から下までジロジロと見つめていた。
「とりあえず、入んな。
食事が冷めちまう。」
クロワは部屋に通された。
部屋の中は、クロワの思った通り食事の最中だったようで、食卓には料理が並べられ、そしてそこには赤毛の男が座っていた。
「あなたは!!」
「なんだい、あんた、ミシェルに用があったのかい?」
「誰なんだ?」
違った…
そこにいた赤毛の男は、年格好は確かにマルタンに似てはいたが、完全な別人だったのだ。
ミシェルという男の顔を見た途端にクロワは全身の力が抜け、その場にへなへなと座り込んでしまった。
クロワの旅は順調そのものだった。
地図を見るまでもなく、ただ道なりに進んで行けば良いだけ。
薬を売った代金があったため路銀にも事欠くことはなく、あっという間に目的の町に着いた。
気分的にはあっという間ではあったが、やはり距離はそれなりに離れており、アマンダの言った通り、一週間の時が過ぎていた。
その町は、特にこれといった特徴も感じられないのどかないなか町だった。
人影もまばらだ。
まずは、今夜の宿を探そうと思い、通りがかった男に尋ねてみたが、この町には宿屋がないという。
女の名前はカーラだということを聞いていたので、ついでにカーラのことを尋ねてみると、簡単にカーラの家がみつかった。
カーラは最近町に戻って来たばかりで、そこで赤い髪の男と一緒に暮らしていると言う。
どんな些細なこともすぐに筒抜けになってしまう…
田舎町特有のプライバシーの無さに、クロワは苦々しさを感じていたが、そのおかげでこんなに早くみつかったのだ。
今の所は、幸運だったと考えることにして、クロワはカーラの家を目指した。
三十分程歩くとその家はあった。
こじんまりとした古い家だった。
ちょうど夕食時だったのか、カーラの家からは野菜を煮たような匂いがしていた。
戸惑う気持ちを押し殺して、クロワは力強くドアをノックした。
すぐにカーラと思われる派手な身なりの若い女が出てきた。
「なんだい?」
「あ、あの…こちらはカーラさんのお宅でしょうか?」
「あぁ…あたしがカーラだけど、あんたは?」
「…実は、あなたにお尋ねしたいことがあって…」
カーラはクロワの姿を上から下までジロジロと見つめていた。
「とりあえず、入んな。
食事が冷めちまう。」
クロワは部屋に通された。
部屋の中は、クロワの思った通り食事の最中だったようで、食卓には料理が並べられ、そしてそこには赤毛の男が座っていた。
「あなたは!!」
「なんだい、あんた、ミシェルに用があったのかい?」
「誰なんだ?」
違った…
そこにいた赤毛の男は、年格好は確かにマルタンに似てはいたが、完全な別人だったのだ。
ミシェルという男の顔を見た途端にクロワは全身の力が抜け、その場にへなへなと座り込んでしまった。
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