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006 : 黄昏の館
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ほぼ元の通りに体調が戻り、私はソレイユの館に住み込みで働かせてもらうことになった。
館には私の他にもう一人の男がいた。
最初は必要なこと以外は話さなかったが、何度か顔を合わせているうちに、少しづつ打ち解けて話すようになっていた。
彼は名をオーバンと言った。
まだ若いが、私よりは幾分年上のようだ。
数年前、私と同じように流行り病にかかり生死の境をさまよっている所をソレイユに救われたのだという。
ここにはもう一人使用人がいたが、先月亡くなってしまったのだそうだ。
「あんたが来てくれて助かるよ。」
オーバンは、私に仕事の手順をいろいろと教えてくれた。
食糧や日々の生活に必要なものは、三ヶ月に一度、決まった者が貢ぎものとして運んでくるそうだが、日持ちのしない野菜や果物は、自給自足で賄っているらしい。
ソレイユの身のまわりの世話から、広大な庭や屋敷の手入れ等その一切を最近はこのオーバンが一人で手掛けていたのだ。
「それは大変だったな。
これからは、私も手伝うからなんでも言ってくれ。」
「よろしく頼むよ。
特に、あの…」
そういって、オーバンは庭の一点を指差した。
「あの薔薇園とその隣の畑は女王のお気に入りだからな。
念入りに手入れをしなくちゃならないんだ。」
「あれは、何の畑なんだ?」
「なにやら大切な薬草らしい。」
「そうか…
しかし、これだけ広いと本当に忙しそうだな。」
「あぁ、ゆっくり休む暇なんてないぜ。
…それに……」
「なんだ?」
「…あんたにゃ、きっと特別な仕事も与えられるだろうからな。」
「特別な仕事…?」
「あぁ…とてもありがたい仕事さ…」
そういうとオーバンは意味ありげな微笑みを浮かべたが、私には何のことだか、まるで見当がつかなかった。
「さてと、そろそろ、食事の準備に取り掛からなくてはな。
あんた、料理はどうだい?」
「申し訳ないがほとんど作ったことがない。」
「そうか。
それなら、薪割りをやってくれるかい?」
「あぁ、それなら出来る。」
私は館の裏に回り、薪割りを始めた。
(…そのうち、オーバンに料理も教えてもらおう…)
館には私の他にもう一人の男がいた。
最初は必要なこと以外は話さなかったが、何度か顔を合わせているうちに、少しづつ打ち解けて話すようになっていた。
彼は名をオーバンと言った。
まだ若いが、私よりは幾分年上のようだ。
数年前、私と同じように流行り病にかかり生死の境をさまよっている所をソレイユに救われたのだという。
ここにはもう一人使用人がいたが、先月亡くなってしまったのだそうだ。
「あんたが来てくれて助かるよ。」
オーバンは、私に仕事の手順をいろいろと教えてくれた。
食糧や日々の生活に必要なものは、三ヶ月に一度、決まった者が貢ぎものとして運んでくるそうだが、日持ちのしない野菜や果物は、自給自足で賄っているらしい。
ソレイユの身のまわりの世話から、広大な庭や屋敷の手入れ等その一切を最近はこのオーバンが一人で手掛けていたのだ。
「それは大変だったな。
これからは、私も手伝うからなんでも言ってくれ。」
「よろしく頼むよ。
特に、あの…」
そういって、オーバンは庭の一点を指差した。
「あの薔薇園とその隣の畑は女王のお気に入りだからな。
念入りに手入れをしなくちゃならないんだ。」
「あれは、何の畑なんだ?」
「なにやら大切な薬草らしい。」
「そうか…
しかし、これだけ広いと本当に忙しそうだな。」
「あぁ、ゆっくり休む暇なんてないぜ。
…それに……」
「なんだ?」
「…あんたにゃ、きっと特別な仕事も与えられるだろうからな。」
「特別な仕事…?」
「あぁ…とてもありがたい仕事さ…」
そういうとオーバンは意味ありげな微笑みを浮かべたが、私には何のことだか、まるで見当がつかなかった。
「さてと、そろそろ、食事の準備に取り掛からなくてはな。
あんた、料理はどうだい?」
「申し訳ないがほとんど作ったことがない。」
「そうか。
それなら、薪割りをやってくれるかい?」
「あぁ、それなら出来る。」
私は館の裏に回り、薪割りを始めた。
(…そのうち、オーバンに料理も教えてもらおう…)
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