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ルカ(聖夜月ルカ)

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005 : 夏至祭の女王

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それからのメラニーの回復は目覚ましく、杖をついておぼつかない足取りで歩いていた数日後には杖なしで歩けるようになった。
動けるようになると食欲も出てきたようで、痩せ細りこけていた頬も日増しにふっくらとしてきた。
化膿していた足の傷もほとんど目立たなくなり、痛みもなくなったようだ。




…私達がここへ来て一ヶ月程経っただろうか…
彼女の身体は日常の家事には困らない程に回復していた。
そろそろ、ここを離れる時期かもしれない…

ここでの生活は楽しかった。
私達はまるで家族のように毎日を過ごしていた。

このままここで暮らしていたいような気にもなった。
特に行くあてがある旅でもないのだから…

しかし、それでも私達はやはり前に進むことを決断した。
理由などわからない。
ただ、心のどこかでそうするべきだと何かが囁いている…
いや、そんな気がしているだけかもしれない。

私達はそのことをジャン母子に伝えた。

 二人はとても名残惜しそうな顔をしたが、私達の気持ちをわかってくれた。

「本当にお二人にはお世話になりました。
このご恩は一生忘れません。」

「何をおっしゃるのです。
私達こそ長い間お世話になってしまって…」

そんな言葉を交しただけで、この一月の日々のことがよみがえってくる。
 決意した気持ちがぐらつきそうになる。

しかし、もう決めたのだ。

 地図によるとこの先の山を越したあたりに町があることになっているが、メラニーに聞いてみると事実その通りで、そこは割と大きな町らしい。

「そうだわ!
確か、明日からその町で夏至祭があるはずですよ!」

「夏至祭?」

「ええ、賑かな祭です。
市もたちますから、そこで薬を売ればよく売れると思いますよ。」

「まぁ!
私達って本当にツイてますね、マルタンさん!」

クロワは顔を輝かせて喜んでいる。

彼女のことだ。
少しでもたくさん売ろうと考えて、また夜遅くまで薬を作るのではなかろうか。
何か手伝おうとは思うものの何も役に立てない自分が歯がゆい…





その夜、私達はいつもより遅くまで語り合った。
生活を共にし、毎日、顔をあわせていたというのに、よくもこんなに話題があるものだと感心してしまう程に…


 
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