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ルカ(聖夜月ルカ)

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005 : 夏至祭の女王

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クロワの知識は私が思っているよりもずっとすごいものなのかもしれない…








その後もジャンの母親は、日一日と回復していった。
彼女はメラニーと言う名だということがわかった。

一週間もすると、ゆっくりとだが歩けるようにもなっていた。

メラニーが外へ出られるようになるのも時間の問題だ。
そうなれば、きっと裏にある墓にも気付くだろう…
いや、それよりも、アンリのことで嘘を突き通すこと自体が、もはや限界なのだ。
こんなにも長い間、姿が見えないことに、彼女はすでに疑いを持っていた。

私達は彼女にアンリのことを打ち明けることに決めた。
元気になってきたとはいえ、まだやっと死の淵から帰ってきたばかりの彼女にそんな残酷なことを言いたくはないのだが…



「実はアンリのことなのですが…」

メラニーは黙って私の話を聞いていた。
ベッドに横たわり、すすけた天井の一点をじっと見据えたままで…
毛布を掴んでいる彼女の拳に力が入っているのがわかった。

私が話し終えても彼女は身動き一つせず、そして一言の言葉も発しなかった。

まるで、息をすることさえ忘れたかのような彼女…



「大丈夫ですか…?」

「………わかってました…」

「…え…?」

「…もうあの子がこの世にいないことは…薄々、感じていました…」

そう言った途端、彼女の瞳からは堰を切ったように涙が流れ始めた。

毛布を掴む手が震えている…



「……話して下さって、ありがとうございました。
…それで、アンリは…アンリは今どこに…?」

「この裏に…」

起き上がった彼女の身体を支え、アンリの元へ連れていった。




「……アンリ……」

 彼女は泣いた…
盛り上がった土に抱きついて泣いた…
彼の名を叫び、顔を泥だらけにして泣いていた…

ただならぬ母の絶叫を聞き付けたジャンが母に抱きつき、一緒になって泣き始めた。




私とクロワはそっとその場を離れた。
二人の慟哭が聞こえない場所を求めて沢へ向かった。
しかし、沢の水音にもかき消されはしない…
耳を塞いでも心に響いてくる…

私達はどうすることも出来ず、ただ流れる水をみつめているばかりだった…
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