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ルカ(聖夜月ルカ)

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005 : 夏至祭の女王

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ここにいる私には、クロワにしてやれることは何もない。
だから、私は、今、ここで出来ることをすべきなのだ。

そう思い、ジャンの母親の看病をしたり、ジャンに食事を採らせたりしたのだが、クロワのことが心配で気が入らない…

ジャンの母親は、いまだ意識が混濁しているようだったが、最初に見た時より格段に良くなってきているのは明らかだ。
 痙攣を起こすこともなく、熱はまだ高いとはいえ、あの時の滝のような汗は流してはいない。
おぼつかない手付きで、私はクロワに教わった通りに看病をこなしていた。
ジャンは少し離れた所から心配そうに母親の姿を見ていた。

やがて、時は過ぎ、真夜中になった…
ふと、耳にさわさわという静かな音が聞こえてきた。
……雨だ…

扉を開けてみると、欠けた月は雲に覆いつくされていた。

この雨が、クロワに味方してくれれば良いのだが…




ジャンの母親の傍らの椅子に座りながらうとうとしていると、低いうなり声で目が覚めた。

 体調に異変があったのか?
クロワのいない時に、どうしよう…?!

私にはジャンの母親の様子を見守ることしか出来ない。

その時だった…

静かに、その瞳が開いたのは…

ジャンの母親はしばらく虚ろに宙をみつめていたが、やがて、その視線を私に向けると一瞬その目を大きく見開いた。



「…怖がらないで下さい。
怪しい者ではありません。」

部屋の中に見ず知らずの男がいるのだ。
それを、そんな風に言うことには無理があるが、今はとにかくそう言うことしか思いつかなかったのだ。



「やっと気が付かれたのですね。
良かった…」

ジャンの母親はしばらく黙っていたが、おぼろ気ながら今の状況が飲み込めたのか、不意に身体を起こそうとしたがその弱りきった身体では起き上がること等出来はしない。



「まだ無理ですよ…」

「……あなた様が…私を助けて下さったのですね…?」

ジャンの母親は涙を浮かべ、私のことをじっと見つめていた。



「本当に良かった…」

「ありがとうございます。
あなたのお陰で、私は…」

「いえ…私ではないのです。
だが、そんなことは後の話です。
今は、良くなることだけを考えてお休みなさい。
まだ、夜も明けてはいませんよ。」

「ありがとうございます…」

そう言って目を閉じるとすぐに、ジャンの母親は静かな寝息をたて始めた。


 
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