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005 : 夏至祭の女王
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小屋に戻ると、扉の前にジャンが立っていた。
私達の姿を見るとなり、ジャンは泣きそうな顔をしてクロワの胸に抱きついてきた。
「……行っちゃったのかと思った…」
「大丈夫よ。
私達はお母さんがよくなるまでここにいるから!」
「本当?!」
「ええ、本当よ。
早く、顔を洗ってきなさい。
そしたら、朝御飯にしましょうね!」
クロワの言葉を聞いて、私もまだ顔を洗ってなかったことに気が付き、ジャンと共に沢へ向かった。
沢の水は冷たく清らかで気持ちが良かった。
小屋に戻り、持ってきたパンと缶詰で朝食を採ってから、クロワはまたジャンの母親の看病に就き、私とジャンは特にこれといった目的もなく外へでかけることにした。
部屋にいるよりは、外の方が多少なりとも気が晴れるだろう…
そんな想いからだった。
私達はぶらぶらとあたりを散策していたが、ある地点でジャンの歩みが急に停まった。
「…どうした…?」
「……その石で…」
ジャンが少し向こうにある大きな石を指差した。
「あれか?」
「やめて…!!」
私がその石に歩み寄ろうとした時、ジャンが私の上着の裾を強く引いた。
ジャンの瞳には激しい脅えの色が見て取れた。
「わかった…
じゃ、あっちに戻ろうな。」
私はジャンの肩を抱いて来た道を戻っていった。
「ちょっと休もうか…」
一本の木の根本に腰を下ろすと、ジャンも黙って隣に腰かけた。
さっきのことを聞いた方が良いのか、聞かない方が良いのか…
私達は沈黙し、沢の水音がやけに大きく感じられた。
「……あの石…」
沈黙を破ったのは、ジャンのつぶやきとも言える小さな声だった。
「……あの石に頭ぶつけて…
お兄ちゃんは死んじゃったんだ…
走ってて…転んで…あの石で…
……僕のせいでお兄ちゃんが…」
そこまで言うと、ジャンはうつ向いて泣き出してしまった。
「…それは違うぞ。
お兄ちゃんが死んだのは転んで頭を打ったからなんだろう?
それはジャンのせいじゃない。」
「うぅん、僕のせいなんだ…
だって、僕があんなことを言ったから…」
「あんなこと…?」
涙声で途切れ途切れに話すジャンの話を聞き進めるうちに、私の心は酷く動揺した。
馬鹿な…!
そんなこと、あるはずがない!
私達の姿を見るとなり、ジャンは泣きそうな顔をしてクロワの胸に抱きついてきた。
「……行っちゃったのかと思った…」
「大丈夫よ。
私達はお母さんがよくなるまでここにいるから!」
「本当?!」
「ええ、本当よ。
早く、顔を洗ってきなさい。
そしたら、朝御飯にしましょうね!」
クロワの言葉を聞いて、私もまだ顔を洗ってなかったことに気が付き、ジャンと共に沢へ向かった。
沢の水は冷たく清らかで気持ちが良かった。
小屋に戻り、持ってきたパンと缶詰で朝食を採ってから、クロワはまたジャンの母親の看病に就き、私とジャンは特にこれといった目的もなく外へでかけることにした。
部屋にいるよりは、外の方が多少なりとも気が晴れるだろう…
そんな想いからだった。
私達はぶらぶらとあたりを散策していたが、ある地点でジャンの歩みが急に停まった。
「…どうした…?」
「……その石で…」
ジャンが少し向こうにある大きな石を指差した。
「あれか?」
「やめて…!!」
私がその石に歩み寄ろうとした時、ジャンが私の上着の裾を強く引いた。
ジャンの瞳には激しい脅えの色が見て取れた。
「わかった…
じゃ、あっちに戻ろうな。」
私はジャンの肩を抱いて来た道を戻っていった。
「ちょっと休もうか…」
一本の木の根本に腰を下ろすと、ジャンも黙って隣に腰かけた。
さっきのことを聞いた方が良いのか、聞かない方が良いのか…
私達は沈黙し、沢の水音がやけに大きく感じられた。
「……あの石…」
沈黙を破ったのは、ジャンのつぶやきとも言える小さな声だった。
「……あの石に頭ぶつけて…
お兄ちゃんは死んじゃったんだ…
走ってて…転んで…あの石で…
……僕のせいでお兄ちゃんが…」
そこまで言うと、ジャンはうつ向いて泣き出してしまった。
「…それは違うぞ。
お兄ちゃんが死んだのは転んで頭を打ったからなんだろう?
それはジャンのせいじゃない。」
「うぅん、僕のせいなんだ…
だって、僕があんなことを言ったから…」
「あんなこと…?」
涙声で途切れ途切れに話すジャンの話を聞き進めるうちに、私の心は酷く動揺した。
馬鹿な…!
そんなこと、あるはずがない!
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