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ルカ(聖夜月ルカ)

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005 : 夏至祭の女王

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次の朝、私は小鳥のさえずりで目を覚ました。
ジャンはまだ眠っている。
おかしな体勢で寝ていたせいか、足腰が痛かった。

隣の部屋に行くと、そこにクロワの姿はなかった。
しばらくして気付いたのだが、昨夜のむせかえるような嫌な臭いが少し薄らいでいるような気がする。

外へ出てみると両手に重そうな桶を持ったクロワが歩いて来るのが見えた。

私は駆け寄り、彼女の手から桶を取った。



「ありがとうございます。マルタンさん。
ジャンは…まだ眠ってるんですか?」

「ええ。ぐっすりと…
クロワさん、あなた昨夜は眠ってないんじゃありませんか?」

「私は大丈夫です。
それより…ロープか何かあったかしら?」

「ありますよ。今、持ってきます。」

私は桶を小屋の前に置き、袋の中からロープを持ち出しとって帰った。



「このあたりにしましょうか?」

「そうですね!
そこならよく陽があたりそうですね。」

私は木の枝と枝の間にロープを渡し、二人でそこに洗濯物を干した。

洗濯物を干し終えると、私達は少し離れた所にある岩に腰を降ろした。



 「…お疲れになったでしょう?
しばらく休まれてはいかがですか?」

「私ならまだ大丈夫です。
身体だけは丈夫に出来てるんです。」

「そうですか。でも、無理はなさらないで下さいね。
ところで、あの女性は…?」

「足を怪我されていました。
そこから黴菌が入ってあんなことになったんだと思います。
もう少し遅かったら、きっと…」

「…!
では、あの女性は助かるのですか?!」

「ええ。おそらく大丈夫です。
このまま、順調に熱が下がってくれれば、きっと…
いえ、ジャンのためにも、私、必ず、治してみせます!
ジャンを一人ぼっちにはしたくありませんから…」

「…クロワさん…」

今の今まで、そんなことは考えてもみなかった。

あの母親は死んでしまうものだと思い込んでいたが、クロワの力強い言葉で思い出すことが出来た。

そうだ…
この私も瀕死の状態から、こんなにも元気になることが出来たのだ。
 記憶こそまだ帰らないが、これほどまでに回復出来たのだ。
ならば、あの母親が回復することも夢ではないかもしれない。

私の心の中に偽りではない希望の光が灯った。
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