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004 : 夜光珠の杯
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「そうかい。
てっきり夫婦かと思ったぜ。
ところで、事情ってのは何なんだい?」
男は少し酔っている様子で、こちらに断りもなく同席して酒を頼み、どうでも良いような話に花を咲かせた。
「あぁ!!思い出しました!」
話をしている過程でやっと思い出すことが出来た。
この男は、夜光珠の杯の横でいかめしい顔をして立っていたあの男だったのだ。
そして、男はある重要な話を教えてくれた。
実は展示されているあの杯は偽物だというのだ。
私達が町に着く数日前に本物の夜光石の杯は何者かに盗まれてしまったという。
「本物はな、細工からして素人でも見事さがわかるってなもんさ。
今、あそこにおいてある偽物とは比べもんにならないぜ。」
「しかし、誰が盗んだんでしょうね…手掛りはないんですか?」
「それが何もないのさ。
今頃はもう売り捌かれちまってるかもしれねぇな。」
当時見張りをしていたのは老人だったらしい。
可哀想にその老人は、その杯が盗まれてしまったせいで職を失ってしまったそうだ。
「今まであれを盗もうとした奴なんていなかったからなぁ…」
「なぜですか?
伝説の杯ならそれなりの値で売り捌けるのではありませんか?」
「…それがだな。
あの杯には、祠から持ち出した者には死が与えられるっていう、気味の悪い言い伝えがあってな…」
「なるほど。
先人達はそういう伝説を作って、泥棒よけにしていたというわけですね。」
「馬鹿言うな!
そんなもんじゃねぇ!
現実に杯を持ち出した奴が何人もおっ死んでやがるんだ。」
「それは最近の話ですか?」
「あぁ、最近もいたさ。
何年か前に、祠をもっと立派なものにしようということになり、工事の間町長が杯を預かることになって家に持って帰ったんだが、次の朝、ベッドの中で町長は冷たくなってたんだ。
そのことがあって、祠の工事は中止になり、昔からのまんまああして残ってるってわけさ。」
クロワは男の話を真剣に聞いている。
おそらく、町長は祠の建て替えのことで当時忙しく、身体が弱っていて心臓発作か何かを起こしただけのことだろう。
それがたまたま杯を持ち出した日と重なり、根拠のない伝説に拍車をかけただけのこと…
よくある話だ…
てっきり夫婦かと思ったぜ。
ところで、事情ってのは何なんだい?」
男は少し酔っている様子で、こちらに断りもなく同席して酒を頼み、どうでも良いような話に花を咲かせた。
「あぁ!!思い出しました!」
話をしている過程でやっと思い出すことが出来た。
この男は、夜光珠の杯の横でいかめしい顔をして立っていたあの男だったのだ。
そして、男はある重要な話を教えてくれた。
実は展示されているあの杯は偽物だというのだ。
私達が町に着く数日前に本物の夜光石の杯は何者かに盗まれてしまったという。
「本物はな、細工からして素人でも見事さがわかるってなもんさ。
今、あそこにおいてある偽物とは比べもんにならないぜ。」
「しかし、誰が盗んだんでしょうね…手掛りはないんですか?」
「それが何もないのさ。
今頃はもう売り捌かれちまってるかもしれねぇな。」
当時見張りをしていたのは老人だったらしい。
可哀想にその老人は、その杯が盗まれてしまったせいで職を失ってしまったそうだ。
「今まであれを盗もうとした奴なんていなかったからなぁ…」
「なぜですか?
伝説の杯ならそれなりの値で売り捌けるのではありませんか?」
「…それがだな。
あの杯には、祠から持ち出した者には死が与えられるっていう、気味の悪い言い伝えがあってな…」
「なるほど。
先人達はそういう伝説を作って、泥棒よけにしていたというわけですね。」
「馬鹿言うな!
そんなもんじゃねぇ!
現実に杯を持ち出した奴が何人もおっ死んでやがるんだ。」
「それは最近の話ですか?」
「あぁ、最近もいたさ。
何年か前に、祠をもっと立派なものにしようということになり、工事の間町長が杯を預かることになって家に持って帰ったんだが、次の朝、ベッドの中で町長は冷たくなってたんだ。
そのことがあって、祠の工事は中止になり、昔からのまんまああして残ってるってわけさ。」
クロワは男の話を真剣に聞いている。
おそらく、町長は祠の建て替えのことで当時忙しく、身体が弱っていて心臓発作か何かを起こしただけのことだろう。
それがたまたま杯を持ち出した日と重なり、根拠のない伝説に拍車をかけただけのこと…
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