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002 : 天井楼閣
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次の日…
まだ朝日が上りきらないうちに、私とクロワは小屋を出た。
こんな朝早くに発つこともないと思ったが、クロワが村の人にみつからないうちにここを出たいというため、そうすることにしたのだ。
クロワは前日は眠ってないのではないかと思われたが、強い気持ちのためか、疲れた様子も見せなかった。
小屋を出ると、クロワはまるで行く先が決まっているかのように足早に歩き出した。
「行きたい場所でもあるのですか?」
「いえ…ただ、あの村から早く離れたいだけなのです…」
そういってクロワは村とは反対側へずんずんと歩いていく。
足慣らしの散歩の時にも来たことのある場所だ。
さらに進んでいくと、だんだんと木の数が増え、その先は深い森になっていた。
「このあたりの地理にはお詳しいのですか?」
「いえ…私はこの森の中までしか来たことがありません。」
つまり、この森の先はクロワにとっても全くの未知の世界だということだ。
こんなにも無謀な旅をしている者がいるだろうか?
しかも、彼女の連れは記憶をなくした哀れなカワセミ…
そんなことを考えているとおかしくなり、私はこみあげてくる笑いを噛み殺すのに必死になっていた。
「……マルタンさん…?
どうかなさいました…?」
「いえ、なんでもありません。」
彼女の問掛けからふっと目をそらした時、目の端に奇異なものをみつけ、再びそこに視線を戻す。
「クロワさん、あれは…!」
彼女は小さく微笑み
「もう少ししたらわかりますわ。」
…と、答えた。
それからさらに少し歩くと、木々はますます深くなっていったが、彼女は確実に目的地への道を知っているようだった。
「これが、さっきの…」
「そうです。
このあたりでは『天井楼閣』と呼ばれているものです。
実は間近で見るのは、私もこれが初めてなんですけど…」
遠くからでもその高さは際立っていたが、真下から見上げてみるとさらに信じられないものだった。
まるで天にも届きそうな高い塔…
そして、私はあるおかしなことに気が付いた。
ないのだ…
この塔には、入り口らしきものがどこにもない。
こんな建造物がこんな人気のない森の中にあること自体おかしなことだが、入り口がないとは一体どういうことなのか?
まだ朝日が上りきらないうちに、私とクロワは小屋を出た。
こんな朝早くに発つこともないと思ったが、クロワが村の人にみつからないうちにここを出たいというため、そうすることにしたのだ。
クロワは前日は眠ってないのではないかと思われたが、強い気持ちのためか、疲れた様子も見せなかった。
小屋を出ると、クロワはまるで行く先が決まっているかのように足早に歩き出した。
「行きたい場所でもあるのですか?」
「いえ…ただ、あの村から早く離れたいだけなのです…」
そういってクロワは村とは反対側へずんずんと歩いていく。
足慣らしの散歩の時にも来たことのある場所だ。
さらに進んでいくと、だんだんと木の数が増え、その先は深い森になっていた。
「このあたりの地理にはお詳しいのですか?」
「いえ…私はこの森の中までしか来たことがありません。」
つまり、この森の先はクロワにとっても全くの未知の世界だということだ。
こんなにも無謀な旅をしている者がいるだろうか?
しかも、彼女の連れは記憶をなくした哀れなカワセミ…
そんなことを考えているとおかしくなり、私はこみあげてくる笑いを噛み殺すのに必死になっていた。
「……マルタンさん…?
どうかなさいました…?」
「いえ、なんでもありません。」
彼女の問掛けからふっと目をそらした時、目の端に奇異なものをみつけ、再びそこに視線を戻す。
「クロワさん、あれは…!」
彼女は小さく微笑み
「もう少ししたらわかりますわ。」
…と、答えた。
それからさらに少し歩くと、木々はますます深くなっていったが、彼女は確実に目的地への道を知っているようだった。
「これが、さっきの…」
「そうです。
このあたりでは『天井楼閣』と呼ばれているものです。
実は間近で見るのは、私もこれが初めてなんですけど…」
遠くからでもその高さは際立っていたが、真下から見上げてみるとさらに信じられないものだった。
まるで天にも届きそうな高い塔…
そして、私はあるおかしなことに気が付いた。
ないのだ…
この塔には、入り口らしきものがどこにもない。
こんな建造物がこんな人気のない森の中にあること自体おかしなことだが、入り口がないとは一体どういうことなのか?
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