STORY BOXⅡ

０７９．久遠の絆

７

そんなある日、クレアの入院する病院に、友人からの電話が入った。



 「クレア！身体の具合はどう？
 実はね、今日、ものすごく懐かしい人に出会ったのよ！
ねぇ、誰だと思う？」

 受話器から聞こえる弾んだ声は、学生時代からクレアと仲の良かったレイチェルからのものだった。
 今は離れた町に住んでいるが、年に何度か電話や手紙を送る関係は続いており、クレアは少し体調が悪いとだけ言って入院先を教えてあった。



 「体調はまぁまぁね。
それより誰なの？」

 「おどろかないでよ！
なんと、アーロンよ！
あのアーロンと会ったの！
 彼、今でもとっても素敵だったわよ。
それでね、彼にあなたのことを聞かれて…それで…
 ……ねぇ、クレア、聞いてる？？」

 「………え…えぇ……聞いてるわよ。」

クレアにはそれだけ言うのがやっとだった。
クレアの胸は溢れる感情で押しつぶされそうになっていた。
あのアーロンに会える…夢にまで見たアーロンに…



（神様が最後の贈り物を下さったんだわ…）



アーロンは商用でレイチェルの住む町を訪れているとのことで、明後日、アーロンからレイチェルの家に連絡が入ることになっているらしく、クレアは三日後に病院近くの公園で待つとの伝言を伝えた。



 三日間がクレアにはまるで三年のように思えた。
いつもは苦しい息も、嘘のように楽に感じられた。
 公園へは、病院から車で３０分程の距離だった。
 病院に来てもらえれば楽だったが、弱った自分の姿を見られたくなくて、クレアは入院していることさえアーロンには伝えないでほしいとレイチェルに頼みこんだ。
 少し気恥ずかしい程の明るい色のワンピースを準備して、出掛ける時間を心待ちにしていた時、クレアの病室に医師や看護士が駆けこんだ。



 「なんですか？
どうかしたんですか？」

 「クレアさん、急なことですが、ドナーがみつかったんです。
 今から、緊急手術を行います。」

 「な、何を…私はそんなことはしないと以前…」

 「移植のことは前々からあなたのご両親や弟さんからくれぐれも…と、頼まれていたのです。」

 「待って！待って下さい！
 私には今日どうしても行かないといけない場所が…！」

クレアの叫びも空しく、ベッドに載せられたまま、クレアは運ばれて行った。