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070.柔らかな風
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白い雲が浮かぶのはどこまでも高く青い空…
干草の上にごろりと寝転び、少しずつ姿を変える白い雲を飽きもせずにぼんやりと眺めていたファビアンの瞼が次第に重くなっていく…
「ファビアン!またこんな所でサボってる!」
「わっ!……脅かすなよ、ウェンディ。」
不意にかけられた怒鳴り声に、ファビアンは身体を起こし小さな溜め息を吐き出した。
「まだ終わってないじゃないの。」
「そうガミガミ言うなよ。
さっきまでせっせと働いて、今、ちょっとだけ休んでただけなんだ。
あと少しだし、それに、こんなに気持ちの良いお天気なんだぜ。
ほら、ウェンディ、ここに来てみなよ!」
ファビアンは、ウェンディの腕を取って引き寄せ、自分の横に座らせた。
「ほら、ここにこうやって…」
ゆっくりと干草に身体を預けたファビアンを見て、ウェンディは飽きれたような顔で苦笑した。
「ウェンディ、早く…」
「……わかったわよ。」
顔とは裏腹な少し怒ったような声を出し、ファビアンの隣に同じように寝転んだ。
太陽のにおいのする干草のベッドはほのかに温かく…
ゆっくりとゆっくりと流れる白い雲は、ここでの穏やかな暮らしを象徴しているようで…
「ファビアン…あなた、もう少しで二十歳になるっていうのに、子供の頃と少しも変わってないのね。
子供の頃から、あなたは空を見るのが大好きで…」
「それを言うならウェンディだって同じだろ?
おまえは子供の頃から、星や月を眺めるのが大好きだった。」
空から視線をはずさずに、二人は他愛のない言葉を交わす。
あたりに聞こえるのはどれもかすかな音ばかりで、その静けさに少し気まずさを感じたウェンディが口を開いた。
「ねぇ、ファビアン……本当の空はどんな風に見えるのかしら?」
「ここだって、本当の空だよ。」
「そうだけど…あなたは、見てみたいって思わないの?
もっと広い空を…」
「俺はもう大人だからそんなことは考えないね。
ウェンディ、おまえももうじき二十歳なんだから、そんなことは考えない方が良いと思うぜ。
さ……早く残りの草を刈り取らなきゃな。」
急に不機嫌になった声でそう言うと、ファビアンはおもむろに立ち上がった。
干草の上にごろりと寝転び、少しずつ姿を変える白い雲を飽きもせずにぼんやりと眺めていたファビアンの瞼が次第に重くなっていく…
「ファビアン!またこんな所でサボってる!」
「わっ!……脅かすなよ、ウェンディ。」
不意にかけられた怒鳴り声に、ファビアンは身体を起こし小さな溜め息を吐き出した。
「まだ終わってないじゃないの。」
「そうガミガミ言うなよ。
さっきまでせっせと働いて、今、ちょっとだけ休んでただけなんだ。
あと少しだし、それに、こんなに気持ちの良いお天気なんだぜ。
ほら、ウェンディ、ここに来てみなよ!」
ファビアンは、ウェンディの腕を取って引き寄せ、自分の横に座らせた。
「ほら、ここにこうやって…」
ゆっくりと干草に身体を預けたファビアンを見て、ウェンディは飽きれたような顔で苦笑した。
「ウェンディ、早く…」
「……わかったわよ。」
顔とは裏腹な少し怒ったような声を出し、ファビアンの隣に同じように寝転んだ。
太陽のにおいのする干草のベッドはほのかに温かく…
ゆっくりとゆっくりと流れる白い雲は、ここでの穏やかな暮らしを象徴しているようで…
「ファビアン…あなた、もう少しで二十歳になるっていうのに、子供の頃と少しも変わってないのね。
子供の頃から、あなたは空を見るのが大好きで…」
「それを言うならウェンディだって同じだろ?
おまえは子供の頃から、星や月を眺めるのが大好きだった。」
空から視線をはずさずに、二人は他愛のない言葉を交わす。
あたりに聞こえるのはどれもかすかな音ばかりで、その静けさに少し気まずさを感じたウェンディが口を開いた。
「ねぇ、ファビアン……本当の空はどんな風に見えるのかしら?」
「ここだって、本当の空だよ。」
「そうだけど…あなたは、見てみたいって思わないの?
もっと広い空を…」
「俺はもう大人だからそんなことは考えないね。
ウェンディ、おまえももうじき二十歳なんだから、そんなことは考えない方が良いと思うぜ。
さ……早く残りの草を刈り取らなきゃな。」
急に不機嫌になった声でそう言うと、ファビアンはおもむろに立ち上がった。
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