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032.花吹雪
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(また……)
あの日以来、ファビアンはウェンディを避けるようになった。
両親の前ではなにもない素振りをしながら、明らかにウェンディを避け、二人っきりになることを避けけていた。
ウェンディも感情に任せてとんでもないことを口走りそうになったことで、気まずい想いを感じていた。
(ファビアンがあんなことを言うからだわ…
だから、私、あんなおかしなことを……)
ぼんやりと考え事をしながら、ウェンディはふとあの木の花のことが気にかかり、あの木に向かって歩き出していた。
(あっ!)
木にはこぼれんばかりの薄桃色の小さな花が咲き、その下には花を眺めるファビアンがいた。
ファビアンは、すぐにウェンディに気付いて顔を強張らせたが、その顔はすぐに照れたような笑顔に変わった。
ウェンディはその笑顔にほっとして肩の力を抜く。
「ウェンディ、ほら…こんなに花が咲いて…」
「なんて綺麗な花なのかしら…」
二人の間の気まずさを、薄桃色の花が補う。
それを見上げる二人の顔には、いつの間にか穏やかな笑みが浮かんでいた。
「こんなに美しい花は初めてだわ…
外にはこんな花がたくさん…あ…」
ウェンディはまたファビアンを不機嫌にさせるようなことを言ってしまったと、慌てて口をつぐんだ。
「……そうだな。
外にはこんな花がいっぱい咲いてるのかもしれないな…」
ファビアンは怒るどころか、何事もなかったように花を見上げながら呟いた。
(ファビアン…)
「と、とにかく咲いてくれて良かったわ。
あぁ、本当に綺麗!」
思い掛けないファビアンの言葉に胸を熱くしたウェンディは、それを気取られまいと、ファビアンが見ていたのとは違う枝の花を見上げた。
(ありがとう…あなたのお陰でファビアンとまたこんな風に話せるようになった…)
(また……)
あの日以来、ファビアンはウェンディを避けるようになった。
両親の前ではなにもない素振りをしながら、明らかにウェンディを避け、二人っきりになることを避けけていた。
ウェンディも感情に任せてとんでもないことを口走りそうになったことで、気まずい想いを感じていた。
(ファビアンがあんなことを言うからだわ…
だから、私、あんなおかしなことを……)
ぼんやりと考え事をしながら、ウェンディはふとあの木の花のことが気にかかり、あの木に向かって歩き出していた。
(あっ!)
木にはこぼれんばかりの薄桃色の小さな花が咲き、その下には花を眺めるファビアンがいた。
ファビアンは、すぐにウェンディに気付いて顔を強張らせたが、その顔はすぐに照れたような笑顔に変わった。
ウェンディはその笑顔にほっとして肩の力を抜く。
「ウェンディ、ほら…こんなに花が咲いて…」
「なんて綺麗な花なのかしら…」
二人の間の気まずさを、薄桃色の花が補う。
それを見上げる二人の顔には、いつの間にか穏やかな笑みが浮かんでいた。
「こんなに美しい花は初めてだわ…
外にはこんな花がたくさん…あ…」
ウェンディはまたファビアンを不機嫌にさせるようなことを言ってしまったと、慌てて口をつぐんだ。
「……そうだな。
外にはこんな花がいっぱい咲いてるのかもしれないな…」
ファビアンは怒るどころか、何事もなかったように花を見上げながら呟いた。
(ファビアン…)
「と、とにかく咲いてくれて良かったわ。
あぁ、本当に綺麗!」
思い掛けないファビアンの言葉に胸を熱くしたウェンディは、それを気取られまいと、ファビアンが見ていたのとは違う枝の花を見上げた。
(ありがとう…あなたのお陰でファビアンとまたこんな風に話せるようになった…)
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