STORY BOXⅡ

ルカ(聖夜月ルカ)

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026.雪の花

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(ここが噂の町だな。
ってことは、あの山ってことになるが…とてもそんな風には見えねぇなぁ…)

ラリーは、小さな町の向こうに見える山並みをみつめ、訝しげに小首を傾げる。



 (ま、とりあえず、話を聞いてみるか。)

 気を取り直し、ラリーは目に付いた町の酒場へと歩を進めた。



 *



 「やっぱりあの山のことだったか。」

 「そうさ、一時はあんたみたいな冒険家が詰め掛けた時期もあったらしいが、今じゃそんな伝説すら忘れ去られてるよ。
あんたも変わってるな。」

 「昔からよくそう言われるよ。」

ラリーは苦笑いを浮かべ、グラスの酒を飲み干した。

こういうことは若いうちにしか出来ないと、ラリーが家を飛び出したのは16の時だった。
ラリーの住む町はこれといって何の取り柄もないひなびた小さな町だった。
 産業もないため、若者達は皆遠くの町へ出て行く。
ラリーもそのつもりだったが、最初は興味深く感じるであろう都会の町も、慣れればきっとすぐに色褪せる。
その前に見知らぬ世界を旅してみたい…そんなことを思いつき、ふらりと始めたあてのない旅…足の向くまま、気の向くままに、町から町を渡り歩き、金がなくなればしばらく働いて金を稼ぎ、また別の町に向かう。
そんな生活は、ラリーの性分にとても合うもので、気が付けば十数年の歳月が流れていた。
ここ何年かは、ただ漠然と旅することをやめ、面白いもの、珍しい物を求めて旅することが多くなっていた。

 今回は、少し離れた町で聞いた伝説の雪の花を探す旅だった。
それはなんとも不思議な伝説で、花のある場所ははっきりと特定されているのに、それを見た者は誰もおらず、どんな花なのかということもよくわからないというあやふやなものだった。



 「それにしてもおかしな話だと思わんか?
 誰も見た事がないっていうのに、なんでそこにそんなものがあるって言われてるんだろう?
 俺、子供の頃からそのことを不思議に思ってたんだ。」

 「俺もそれが気になったからわざわざやって来たんだけどな…
ま、この手の話は結局何もわからないで終わるもんなんだが、それでもやっぱり気になるんだよなぁ…」

 普段から人見知りしないラリーは、酒が入るとその人懐っこい性格がさらに強まる。
それは相手も同じだったらしく、たまたま同じテーブルに座った三人の男達は、まるで昔からの友人のように打ち解けて酒を酌み交わした。
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