STORY BOXⅡ

ルカ(聖夜月ルカ)

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014.賢者の石

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「ただ、この町には昔から言い伝えがあったんです。
この山には『賢者の石』っていうものがあると…
特にそれにまつわる話があったということでもないのですが、その名前から考えると、きっと、その石を持ってると頭が良くなるんじゃないか…?子供の頃、そんなことを考えた僕達は友達と一緒に賢者の石を探しに来たことがあるんですが、その時はやはりみつかりませんでした。
みつからなかったからこそ、まだここにある…そんな気がしたんです。」

 「なんともあやふやな話だな。
それで、その石はどんな見掛けの石なんだ?」

 「実は…それも……」

 「何?それもわからなくて掘ってたっていうのか?嘘だろ…?!」

 「……本当に、馬鹿にも程がありますね…
僕はどうかしてたんだ。
 試験に受かりたい一心で、この町に来てから両親の所にも寄らずずっとここで石を探して…
何やってたんだろ…僕は…」

ガエタンは、がっくりと肩を落としてうな垂れた。



 「不思議な力を持つ石の伝説はけっこうあるし、そういうものを探してる奴もけっこういる。
ところで、あんたはなんでそんなに必死なんだ?
あんたの願いはそこまで必死になるほどのもんでもないように思うんだが…」

 「必死……そうですね。
 僕は、必死過ぎて周りが見えなくなってたんですね。」

 「……なにか事情があるのか?」

ガエタンは、寂しそうに微笑み、そしてぽつりぽつりと話し始めた。
ガエタンの話によると、彼には年の離れた妹がいたそうだ。
 彼が、13歳の時、その妹が高熱を出した。
しばらく様子をみていたが、一向に下がる気配がなかったので、ガエタンは両親と共に妹を隣町の診療所まで連れて行ったらしい。
ところが、隣町に向かう途中でガエタンの妹は容態が急変しそのままあっけなく死んでしまったということだった。




 「その時、僕は誓ったんです。
 僕は将来立派な医者になって病気で苦しむ人を一人でも多く助けようと。
 両親は、僕のその気持ちを理解し、大変な無理をして僕に勉強をさせてくれました。
 医師の資格が取れたら大きな町に住んで、両親を呼び寄せるつもりなんです。
そこで、楽な生活をさせてやりたい…そのためにも、僕はなんとしても試験に受かりたくて、頭の中にはそれしかなくて…
僕はすっかり冷静さを失ってました。
どんなものかもわからない…いや、あるかどうかさえわからないそんな石を探すのに必死になってたなんて
……ジュリアンさんありがとう。
あなたのおかげで目が覚めました。」

 「いや…あんたの気持ちはよくわかった。
だが、どうせなら、ここで石を掘るより、両親に会いに行く方が良さそうだな。
あんたの顔見たら、おふくろさん達きっと喜ぶぜ!」
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