STORY BOXⅡ

ルカ(聖夜月ルカ)

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011.お菓子の家

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「ギャブリエ様…お呼びでしょうか?」

 恐る恐るかけられた声に振り向いたギャブリエが、鋭い視線を向けた。



 「……ディディエ…
今日、呼ばれたのは、なぜだかわかるか…?」

 「え……えっと…ですね…
お部屋のお掃除をしてないことでしょうか?
それとも…図書室の本をまだ返してないこと…?
 勉強をサボって、雲の上で昼ねしてたこと…?
いや、もしかしたら、先日、少年の前に姿を現してしまったことでしょうか?」

 「……ディディエ…
おまえ…そんなことを……!!」

ギャブリエの拳が震え、こめかみに青い血管が浮き上がる…



「ギャ…ギャブリエ様…
お、落ちついて…!」

 「お…お…おまえのせいで、私はいつも体調が悪くなる!!」

ギャブリエは、机の上の水差しからグラスに水を注ぎ、一気に飲み干した。



 「良く聞くのだ!ディディエ!!
 夢の中のものを現実に持ち帰らせてはいかんと、今までにも何度も言ったはずだ!
それなのに、おまえという奴は…!!」

 「あ…あぁ…あの件でしたか!
 申し訳ありません、ギャブリエ様!
あの双子の家はとても貧しく、お菓子なんてものはめったに食べることが出来ず…」

 「そんなことは言われずともわかっておる!
だが、規則は規則だ!!
 今度またこのようなことがあったら…」

 「も、申し訳ありません!!
このようなことはもう二度と致しません。
あ、大変です!
 私、神様にも呼ばれていたのです。
 早く、行かなければ!!
し…失礼します!!」

 「こ…こら、待て、ディディエ!
まだ話は…」

 伸ばされたギャブリエの片手が力なく降ろされた。



 (馬鹿者めが…)

ギャブリエは、肩をすくめて小さく微笑んだ。



 *



 (本当に良い家族ですね…)

ディディエは、雲の隙間から見た光景にそっと目頭の涙を拭った。



 (あの家族がもっと幸せになれるように、私も頑張らなくては!)



そんなディディエの後ろ姿を、ギャブリエがそっとみつめていたことを当のディディエが知るはずはなかった…
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