STORY BOXⅡ

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
上 下
14 / 115
001.星の砂

12

しおりを挟む
「あぁ…頭が痛い…
ジャン、あたし、昨夜はかなり飲んでたかい?」

 「あぁ、ものすごい飲み方してたぞ。」

 「そっか…きっとあの世でピエールが怒ってるね…」

 「そんなことないさ、今まで我慢してたんだろ?
ピエールさんも許してくれてるさ。」

 「ジャン…あんたは優しいんだね。」

 「見かけによらず…って言いたいんだろ?」

 「そんなこと、言ってないじゃないか!」

ジャンはしばらくピエールの店に滞在した。
 特に珍しいものがあるわけではない町だ。
 二人は、ピエールの墓前へ参るのが日課になっていた。

サリーは、ピエールがいなくなって、ぽっかりと穴が空いた心の隙間をジャンが埋めてくれたような気がしていた。



 *



 「ちょっと遊びに来たつもりが、もう半年もいついてしまったな…」

 「別に良いじゃないか…
 ……どうせなら、このまま、ここに住んだらどうだい?」

 「………俺は、星の砂を渡しに来ただけだから…」

 「!……そうかい…」

ジャンの言葉は予期しないものだった。
サリーは、ジャンのことをピエールの代わりではなく、新しい家族として感じ始めていた。
そして、その気持ちはジャンも同じだと思いこんでいた。
しかし、そうではなかったとわかった瞬間、サリーは、なんとも言えない激しい苛立ちを感じた。



 「もう星の砂は受け取ったよ。用事は済んだんじゃないのかい?」

 「………そうだな。じゃあ、明日帰るよ…」

 「そうだね。
あたし、今夜はピエールの部屋で寝るよ。」

ベッドを出たサリーの瞳からは、一筋の涙が流れていた。



 *



ジャンが旅立つ朝、サリーは、ジャンに皮袋を手渡した。



 「なんだい?これ」

 「星の砂さ、あんたとの思い出に半分だけもらっとくよ。」

 星の砂が入っていたグラスを見ると、量が半分になっていた。



 「……半分だと、なんだか見た目が寂しくなったな。」

 「良いんだよ。
きっちり半分にしといたからね。
じゃあ、元気でね。」

 「あぁ…サリーも元気でな!」

ジャンは手を振りながら、店を後にした。



 (ジャンの馬鹿野郎!
 遊びなら遊びだって、最初から言えってんだ!
 何が幸せの星の砂だ!)

サリーは、星の砂の入ったグラスを振り上げた。
……しかし、それを投げつけることは、どうしても出来なかった… 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

お礼(無謀)企画

ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
リクエストによるSS集です。 主にファンタジーになるはずです。 リクエスト、激しく募集中! ※表紙イラストはBy.ハチムラリン様です。m(__)m

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

処理中です...