STORY BOXⅡ

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
上 下
5 / 115
001.星の砂

しおりを挟む
あの日、レヴやヴェールと一緒に行った滝にも足を運んだ。
 湖はあの時と変わらず、深い緑色の水を湛え、薄い靄に包まれて幻想的な雰囲気を醸し出していた。



 (ここの帰りだったね…レヴが倒れたのは…
あの時は本当に心配したよ…
ヴェールがいてくれたから良かったけど、あたし一人だったら町まで運ぶのも大変だっただろうな…)



 時間をかけてゆっくりとまわった思い出の旅も終わりが見えて来た。
 気になっていた所はすべて立ち寄り、会いたかった人達にもほとんど会えた。



 (これからは、ピエールと一緒にのんびり暮らしていこう。
そうだ、ピエールになにかお土産を買って帰らないとね…何が良いかな?)



その時、サリーの脳裏に浮かんだのは、あのジャンの顔だった。
 今回の旅で唯一、会えなかった人物だ。
 近所の人に聞いた所によると、最近はしばらく見ないから旅行にでも出てるんじゃないかということだった。
その人の言う通り、旅行に出ているのならいつ帰って来るかもわからない。
 残念だが、縁がなかったと思い、サリーはジャンとの再会を諦めることにしたのだった。



 (特別、遠回りになるわけでもないし…
もう一度だけ寄ってみよう。)



 再び、立ち寄ったジャンの屋敷はこの前と変わらず留守のままだった。



 (あ~あ…まだ帰ってないのか…
仕方ないね。)



サリーが町へ向かって歩き出した時、大きな荷物を抱えた男と出会った。



 「ジャン…!ジャンだろう?
あたしのこと覚えてるかい?」

 「サリーじゃないか!
どうしたんだ、こんな所で!」

 「どうした…って…
旅の途中でちょっとあんたのことを思い出して、今、あんたん家に行ってみたら留守で…」

 「そうだったのか。
 俺も、しばらく旅に出ててな。
 今、帰って来た所なんだ。
ちょうど会えて良かったよ。」

 二人はジャンの屋敷へ戻った。



 *



 「今、お茶を煎れてくるからな。」

 「お茶なんていいよ。
あんたも疲れてるんだから、構わなくていいよ。」

 「なに、俺が飲みたいから煎れるんだよ。」

そういうとジャンは、台所へ入って行った。



 (しかし、相変わらずひどい部屋だね、まったく…)



サリーは、散らかったものを片付け始めた。
でかける前に着ていくものに迷いでもしたのか、たくさんの服が床に脱ぎ捨てたままだった。
サリーは、それらを畳み、ハンガーに吊るしていく。 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

お礼(無謀)企画

ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
リクエストによるSS集です。 主にファンタジーになるはずです。 リクエスト、激しく募集中! ※表紙イラストはBy.ハチムラリン様です。m(__)m

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~

WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
 1~8巻好評発売中です!  ※2022年7月12日に本編は完結しました。  ◇ ◇ ◇  ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。  ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。  晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。  しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。  胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。  そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──  ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?  前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!

魔術師セナリアンの憂いごと

野村にれ
ファンタジー
エメラルダ王国。優秀な魔術師が多く、大陸から少し離れた場所にある島国である。 偉大なる魔術師であったシャーロット・マクレガーが災い、争いを防ぎ、魔力による弊害を律し、国の礎を作ったとされている。 シャーロットは王家に忠誠を、王家はシャーロットに忠誠を誓い、この国は栄えていった。 現在は魔力が無い者でも、生活や移動するのに便利な魔道具もあり、移住したい国でも挙げられるほどになった。 ルージエ侯爵家の次女・セナリアンは恵まれた人生だと多くの人は言うだろう。 公爵家に嫁ぎ、あまり表舞台に出る質では無かったが、経営や商品開発にも尽力した。 魔術師としても優秀であったようだが、それはただの一端でしかなかったことは、没後に判明することになる。 厄介ごとに溜息を付き、憂鬱だと文句を言いながら、日々生きていたことをほとんど知ることのないままである。

元聖女だった少女は我が道を往く

春の小径
ファンタジー
突然入ってきた王子や取り巻きたちに聖室を荒らされた。 彼らは先代聖女様の棺を蹴り倒し、聖石まで蹴り倒した。 「聖女は必要がない」と言われた新たな聖女になるはずだったわたし。 その言葉は取り返しのつかない事態を招く。 でも、もうわたしには関係ない。 だって神に見捨てられたこの世界に聖女は二度と現れない。 わたしが聖女となることもない。 ─── それは誓約だったから ☆これは聖女物ではありません ☆他社でも公開はじめました

処理中です...