夢の硝子玉

ルカ(聖夜月ルカ)

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ペルージャの獣人

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 「ど、どうしたんだ、フレイザー!?」

 「なんでもない。気にしないでくれ。」

ジャネットとエリオットに両肩を支えられたフレイザーは、目を丸くするラスターに曖昧に微笑み、三人は部屋の中に消えていった。



 「……ラスター…どうかしたの?」

 騒ぎを聞き付け、部屋から出てきたセリナが、ラスターに声をかけた。



 「今、三人が戻ってきたんだけどな。
フレイザーの奴、怪我をしたみたいなんだ。」

 「フレイザーが怪我を!?」

セリナは、すぐにフレイザーの部屋の扉を叩く。



 「……セリナ……」

 浮かない顔をしたジャネットが、ほんの少しだけ扉を開いた。



 「ジャネット、フレイザーが怪我をしたってきいたんだけど……」

 「あ…あぁ、それなら全然たいしたことないんだ。
 心配しないでくれ。」

そう言うと、ジャネットは一方的に扉を閉めた。



 「……ジャ…ジャネット!」



 「なんだかおかしいだろ?」

セリナは立ち尽くしたまま、小さく頷いた。



 「ジャネット…何か隠してるわね。」

 「だよな…
一応、ダルシャに知らせるか?」

 「そうね。町を見てくるって言ってたから、探しに行きましょう!」



 *



 「さぁ、出来たよ。
これを貼り付けて。」

エリオットは、フレイザーのやけどの上に、薬草を潰して作った膏薬を貼り付けた。



 「これでずいぶん痛みが和らぐはずだよ。」

 「ありがとう、エリオット……」

 「何を言ってるの。
ボクの方こそ、本当にごめんね。」

 「エリオット、あんたが謝る必要はないんだ。
 練習台をかって出たのは私だし、私の代わりにやるって言い出したのはフレイザーなんだからな。」

ジャネットの言葉に、フレイザーもゆっくりと頷いた。



 「これで、獣人と戦いになっても大丈夫だ。
おまえなら、必ずうまくやれるよ。」

フレイザーは、エリオットの肩を優しく叩いた。



 「……フレイザー……」

エリオットは唇を噛み締めながら、小さく頷いた。 
 
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