夢の硝子玉

ルカ(聖夜月ルカ)

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伝言

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「あぁ、そうだよ。
若くて良い男だったね。」




老人が案内したのは、老人の家から歩いてすぐの花屋だった。




「このあたりに医者か薬屋はないかと訊ねられたんだよ。
でも、この町にはどちらもないから、隣町に行けば薬屋があり、三つほど先の町に行けば診療所があるって教えたんだ。」

「女性は具合が悪そうでしたか?」

「あぁ、見るからに辛そうだったね。
一見して熱があるんだろうって、あたしでもわかったくらいさ。
あの時は、ちょうど肌寒い日が続いてたから、風邪でもひいたのかもしれないね。」

「そうでしたか…それで、お二人はどこへ?」

「この町には宿屋もないからね。
隣町に向かったんじゃないかねぇ?」

花屋の女は、そう話すと、桶を持って店の裏へ引っ込んだ。



「あの時、わしはちょうど家に戻って来た所で、あの男をここで見かけて、確か、あれはトーマスの家の傍に住んでる男じゃなかったかと思ったんじゃ。
女も具合が悪そうだったし、家に戻ってからもどうにも気になって、また見に来たんだが、ふたりはもうどこにもいなかった。
わしがもう少し早くに声をかけてやりゃあ良かった…
うちで休ませてやれば良かった。」

「おじいさんのせいじゃないよ。」

エリオットは、老人の背中にそっと手を回し、老人はエリオットの優しい仕草に嬉しそうに微笑んだ。



「それでは、おそらく隣町の薬屋に行けば、二人の手掛かりがみつかりそうですね。」

「そうじゃな。だが、もうだいぶ前のことじゃからなぁ……
ところで、あの男…どうにかしたのか?
もしかして、駆け落ちか?」

「ま、まぁ、そんなところです。」

「そうか…やっぱりな……」

老人は納得したように何度も頷いた。



「隣町へはどのくらいかかりますか?」

「そうじゃな、今から出れば暗くなるまでには着くじゃろう。」

「それでは、早速今から隣町に向かいます。
本当にお世話になりました。
それと、その前に少しお願いが……」 
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