夢の硝子玉

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
上 下
606 / 802
伝言

21

しおりを挟む





「ラスター!」

名前を呼ばれ、顔を上げると、手を振りながら駆けて来るフレイザーとジャネットがいた。



「どうかしたのか?」

「みつけた!
その女性のことらしき情報をみつけたんだ!
さ、こっちだ!」

フレイザーに促され、ラスターは二人の後ろを追いかけて行く。








「多分、その人に間違いないと思うが……」

港で、船の案内をしているという老人がぽつりぽつりと話し始めた。



「もう半年くらい前になるかね。
長い金髪をした女がここにやってきた。
まだ若いだろうに、痩せこけてやつれた雰囲気で、常にあたりを警戒してるような素振りをしていた。
その女は、とにかくこの大陸を出たいのだが、カルボ以外で船が出ている港はないかと聞いてきた。
普通なら、行き先を言うもんだが、その女は行き先にはこだわっていない様子だった。
この大陸から出られりゃ、どこでも良かったんだろうな。
つまりは、わけありなんだとすぐにわかったよ。」

そう話すと、老人は手に持っていたパイプをくゆらせた。



「それで…その女はどこへ行ったんだ?」

「わしが運行表を調べてみたところ、ポーリシア行きの船は四日前に出たばかりで、ベルーシアに向かう船は、二日後に出港だった。
パルメンの港は遠い。
とてもじゃないがたった二日で行けるはずもなく、それからしばらくはどちらの船もないことを話すと、女は酷く沈んだ顔をした。」

「それ以外に何か言ってなかったか?
たとえば、行き先について何か……」

「……あんたら、誰なんだ?
その女の知り合いか?」

「え……」

思いがけない質問に、フレイザーとラスターは顔を見合わせた。




「わ、私の姉さんだ。」

「姉さんだと…?」

突然、ありもしないことを言い出したジャネットに、老人だけではなくフレイザー達も驚いた表情を浮かべた。



「あぁ、そうだ。
ただ、私とは父親は違うが、小さい頃からけっこう仲は良かった。
姉さんは、数年前に結婚したんだが、その旦那は酷い酒乱らしくてな。
ずいぶんと酷い仕打ちを受けていたようだ。
なのに、姉さんは私達には何も言わず…でも、どうにもたまらなくなって家を出たらしいんだ。
旦那がうちに怒鳴り込んで来たから、私達もそのことを知った。
その旦那は酷く執念深い性格で、姉さんのことをどんな手を使っても探すと言っていて……だから、私は姉さんのことが心配で心配で……」

ジャネットは、苦しそうに唇を噛み締めた。 

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。 なんと、彼女は学園のマドンナだった……! こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。 彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。 そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。 そして助けられた少女もまた……。 二人の青春、そして成長物語をご覧ください。 ※中盤から甘々にご注意を。 ※性描写ありは保険です。 他サイトにも掲載しております。

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

博愛無私のお姫様~舘家の三兄弟③~

トウリン
恋愛
舘家の三兄弟、聖人、賢人、優人の恋愛模様。三部作です。愛しい彼女の為に、野郎どもが右往左往するお話。 優人は兄が働く病院で一人の女性に遭遇した。彼女は無駄働きが嫌いな優人とは正反対で、病院ボランティアに精を出す看護学生だ。自分のことより他人のこと、そんな彼女といると、時に苛々し、時に心地良く……。女に嵌まるなんて有り得ない、そう信じていた優人が深みに転がり落ちていくお話。

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

「守ることしかできない魔法は不要だ」と追放された結界師は幼なじみと共に最強になる~今更俺の結界が必要だと土下座したところでもう遅い~

平山和人
ファンタジー
主人公のカイトは、ラインハルト王太子率いる勇者パーティーの一員として参加していた。しかし、ラインハルトは彼の力を過小評価し、「結界魔法しか使えない欠陥品」と罵って、宮廷魔導師の資格を剥奪し、国外追放を命じる。 途方に暮れるカイトを救ったのは、同じ孤児院出身の幼馴染のフィーナだった。フィーナは「あなたが国を出るなら、私もついていきます」と決意し、カイトとともに故郷を後にする。 ところが、カイトが以前に張り巡らせていた強力な結界が解けたことで、国は大混乱に陥る。国民たちは、失われた最強の結界師であるカイトの力を必死に求めてやってくるようになる。 そんな中、弱体化したラインハルトがついにカイトの元に土下座して謝罪してくるが、カイトは申し出を断り、フィーナと共に新天地で新しい人生を切り開くことを決意する。

ブレイブエイト〜異世界八犬伝伝説〜

蒼月丸
ファンタジー
異世界ハルヴァス。そこは平和なファンタジー世界だったが、新たな魔王であるタマズサが出現した事で大混乱に陥ってしまう。 魔王討伐に赴いた勇者一行も、タマズサによって壊滅してしまい、行方不明一名、死者二名、捕虜二名という結果に。このままだとハルヴァスが滅びるのも時間の問題だ。 それから数日後、地球にある後楽園ホールではプロレス大会が開かれていたが、ここにも魔王軍が攻め込んできて多くの客が殺されてしまう事態が起きた。 当然大会は中止。客の生き残りである東零夜は魔王軍に怒りを顕にし、憧れのレスラーである藍原倫子、彼女のパートナーの有原日和と共に、魔王軍がいるハルヴァスへと向かう事を決断したのだった。 八犬士達の意志を継ぐ選ばれし八人が、魔王タマズサとの戦いに挑む! 地球とハルヴァス、二つの世界を行き来するファンタジー作品、開幕! Nolaノベル、PageMeku、ネオページ、なろうにも連載しています!

転生弁護士のクエスト同行記 ~冒険者用の契約書を作ることにしたらクエストの成功率が爆上がりしました~

昼から山猫
ファンタジー
異世界に降り立った元日本の弁護士が、冒険者ギルドの依頼で「クエスト契約書」を作成することに。出発前に役割分担を明文化し、報酬の配分や責任範囲を細かく決めると、パーティ同士の内輪揉めは激減し、クエスト成功率が劇的に上がる。そんな噂が広がり、冒険者は誰もが法律事務所に相談してから旅立つように。魔王討伐の最強パーティにも声をかけられ、彼の“契約書”は世界の運命を左右する重要要素となっていく。

晴明、異世界に転生する!

るう
ファンタジー
 穢れを祓うことができる一族として、帝国に認められているロルシー家。獣人や人妖を蔑視する人間界にあって、唯一爵位を賜った人妖一族だ。前世で最強人生を送ってきた安倍晴明は、このロルシー家、末の息子として生を受ける。成人の証である妖への転変もできず、未熟者の証明である灰色の髪のままの少年、それが安倍晴明の転生した姿だった。

処理中です...