601 / 802
伝言
16
しおりを挟む
「そういえば、オズワルドさんは……」
「あんた方は急ぎの旅をしているのかい?」
「いえ…そうではありませんが……」
「それなら、今夜はここに泊まって行ったら良い。
実は、今、夕飯の買い物に行く途中だったんだ。
良かったら一緒に行かないか?」
トーマスに誘われ、三人は一緒に買い出しに出かけ、彼の家で夕食をいただくことになった。
「オズワルドとはよくこうして一緒に食事をしたもんだ。」
そう呟いたトーマスの声や表情は、とても寂しげなものだった。
「あ…そういえば、あんたらはオズワルドのことを良く知らないんだったな。」
「ええ、オズワルドさんはどういう方なんですか?
私達には関係がないといえばない方ですが、せっかくのご縁ですし、どんな方なのかと少し気になりまして……」
トーマスは、何度も小さく頷いた。
「オズワルドは、あんたより少し若い……だが、精神的にはとても成熟した男だ。
あいつは、自分のことについてはほとんど話さない。
この町に来たのは、七~八年前だったか。
ふらっと来て、そのまま居着いたんだ。
町の者ともあまり親しくはしない。
あいつはけっこうな男前でな、だが、女が嫌いなのかと思うくらい、誰が言い寄っても素っ気ない態度を取るんだ。
一度わしは聞いたことがある。
結婚はしないのかって……
そしたら、あいつはおかしなことを言ったんだ。
『子供は必要だが妻はいらない』ってな。
子供がほしいというのならわかるが、『必要だ』とは酷くおかしな言いようだと思わないか?
だから、わしは訊ねたんだ。
子供が必要だとはどういうことかって…
そしたら、あいつは『僕はそういう運命のもとに生まれたんだ…』と答えたんだ。
何か、よほど深い理由があるんだろうと思ったからそれ以上は聞かなかったが……なにしろ、少し変わった奴だよ。」
「……そうなんですか。」
ダルシャ達には、オズワルドの答えた言葉の意味するところがわかっていたが、それは当然話せるはずもなく……ダルシャは曖昧な返事をするしかなかった。
「あんた方は急ぎの旅をしているのかい?」
「いえ…そうではありませんが……」
「それなら、今夜はここに泊まって行ったら良い。
実は、今、夕飯の買い物に行く途中だったんだ。
良かったら一緒に行かないか?」
トーマスに誘われ、三人は一緒に買い出しに出かけ、彼の家で夕食をいただくことになった。
「オズワルドとはよくこうして一緒に食事をしたもんだ。」
そう呟いたトーマスの声や表情は、とても寂しげなものだった。
「あ…そういえば、あんたらはオズワルドのことを良く知らないんだったな。」
「ええ、オズワルドさんはどういう方なんですか?
私達には関係がないといえばない方ですが、せっかくのご縁ですし、どんな方なのかと少し気になりまして……」
トーマスは、何度も小さく頷いた。
「オズワルドは、あんたより少し若い……だが、精神的にはとても成熟した男だ。
あいつは、自分のことについてはほとんど話さない。
この町に来たのは、七~八年前だったか。
ふらっと来て、そのまま居着いたんだ。
町の者ともあまり親しくはしない。
あいつはけっこうな男前でな、だが、女が嫌いなのかと思うくらい、誰が言い寄っても素っ気ない態度を取るんだ。
一度わしは聞いたことがある。
結婚はしないのかって……
そしたら、あいつはおかしなことを言ったんだ。
『子供は必要だが妻はいらない』ってな。
子供がほしいというのならわかるが、『必要だ』とは酷くおかしな言いようだと思わないか?
だから、わしは訊ねたんだ。
子供が必要だとはどういうことかって…
そしたら、あいつは『僕はそういう運命のもとに生まれたんだ…』と答えたんだ。
何か、よほど深い理由があるんだろうと思ったからそれ以上は聞かなかったが……なにしろ、少し変わった奴だよ。」
「……そうなんですか。」
ダルシャ達には、オズワルドの答えた言葉の意味するところがわかっていたが、それは当然話せるはずもなく……ダルシャは曖昧な返事をするしかなかった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
オタクおばさん転生する
ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。
天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。
投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
時々おまけを更新しています。
「お前のような役立たずは不要だ」と追放された三男の前世は世界最強の賢者でした~今世ではダラダラ生きたいのでスローライフを送ります~
平山和人
ファンタジー
主人公のアベルは転生者だ。一度目の人生は剣聖、二度目は賢者として活躍していた。
三度目の人生はのんびり過ごしたいため、アベルは今までの人生で得たスキルを封印し、貴族として生きることにした。
そして、15歳の誕生日でスキル鑑定によって何のスキルも持ってないためアベルは追放されることになった。
アベルは追放された土地でスローライフを楽しもうとするが、そこは凶悪な魔物が跋扈する魔境であった。
襲い掛かってくる魔物を討伐したことでアベルの実力が明らかになると、領民たちはアベルを救世主と崇め、貴族たちはアベルを取り戻そうと追いかけてくる。
果たしてアベルは夢であるスローライフを送ることが出来るのだろうか。
鬼神転生記~勇者として異世界転移したのに、呆気なく死にました。~
月見酒
ファンタジー
高校に入ってから距離を置いていた幼馴染4人と3年ぶりに下校することになった主人公、朝霧和也たち5人は、突然異世界へと転移してしまった。
目が覚め、目の前に立つ王女が泣きながら頼み込んできた。
「どうか、この世界を救ってください、勇者様!」
突然のことに混乱するなか、正義感の強い和也の幼馴染4人は勇者として魔王を倒すことに。
和也も言い返せないまま、勇者として頑張ることに。
訓練でゴブリン討伐していた勇者たちだったがアクシデントが起き幼馴染をかばった和也は命を落としてしまう。
「俺の人生も……これで終わり……か。せめて……エルフとダークエルフに会ってみたかったな……」
だが気がつけば、和也は転生していた。元いた世界で大人気だったゲームのアバターの姿で!?
================================================
一巻発売中です。
娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る
ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。
異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。
一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。
娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。
そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。
異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。
娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。
そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。
3人と1匹の冒険が、今始まる。
※小説家になろうでも投稿しています
※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!
よろしくお願いします!
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください
シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。
国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。
溺愛する女性がいるとの噂も!
それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。
それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから!
そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー
最後まで書きあがっていますので、随時更新します。
表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる