夢の硝子玉

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
上 下
542 / 802
ポーリシアの老女

128

しおりを挟む




 「そんなことになってたのか。
すごいもんだな……」

フレイザーは、感心したように大きく頷く。



エリオットは、サンドラの家にかけられた魔法についてフレイザーに話して聞かせた。
 井戸や台所、そして家には精霊が住まわせてあり、サンドラが自分が主人だと宣言することで、精霊達はサンドラの言うことを聞くようになったとのことだった。
 井戸からは澄みきった水がわき、かまどには薪を入れなくてもいつも火が燃えるようになった。



 「良かったなぁ…
これからは、もう泉に水を汲みに行くこともないし、薪を集める手間もいらないんだ。
もしかしたら、これはおばあさんが暮らしやすいようにかけられた魔法かもしれないな。」

 「……そうだろうかね。
そうだったら嬉しいけどね……」

 「きっとそうだよ。
あ、そうだ!ここにもう一台オーブンを買ったらどうだ?
そしたら、もっとたくさんのケーキが焼けるようになるじゃないか。」

 「フレイザー、忘れたの?
エレのケーキは火加減が難しいんだよ。」

 「あぁ…そうだったな…
結局、人手が足りないんだな…
でも、そのうち、ケーキがもっと売れるようになったら人を雇えるようになるかもしれないぞ。」

サンドラは、フレイザーの言葉に苦笑いを浮かべた。



 「おばあさん、冗談じゃないよ。
 本当にそうなるかもしれないよ。
この前、大人向けのケーキの話もしてたじゃない。
これから、イリヤと一緒に新しいケーキも作って、どんどん売ってみたら良いよ。
おばあさんの考えたケーキならきっと売れるよ。
だって、とってもおいしいんだもん!」

 「……本当かい?
 本当にそう思うかい?」

 「もちろんだよ!」

サンドラは、エリオットをみつめ嬉しそうに微笑み、そしてゆっくりと頷いた。



 「これは私もうかうかしてられないね。
もっと元気になって、いろんなケーキを考えなきゃね。」

 「おばあさん……
そうだよ!ボク、旅が終わったらまた遊びに来るからいつまでも元気で長生きしてよ!」

 「エリオット……ありがとうよ……」

 手を握り合う二人の姿をみつめながら、フレイザーはふとこの旅の終わりのことを考えた。
フレイザーの視線がゆっくりとジャックの方へ移り、そして、すぐに俯いた。



 (……ずっとは一緒にいられないんだな……)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

スキルハンター~ぼっち&ひきこもり生活を配信し続けたら、【開眼】してスキルの覚え方を習得しちゃった件~

名無し
ファンタジー
 主人公の時田カケルは、いつも同じダンジョンに一人でこもっていたため、《ひきこうもりハンター》と呼ばれていた。そんなカケルが動画の配信をしても当たり前のように登録者はほとんど集まらなかったが、彼は現状が楽だからと引きこもり続けていた。そんなある日、唯一見に来てくれていた視聴者がいなくなり、とうとう無の境地に達したカケル。そこで【開眼】という、スキルの覚え方がわかるというスキルを習得し、人生を大きく変えていくことになるのだった……。

結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください

シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。 国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。 溺愛する女性がいるとの噂も! それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。 それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから! そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー 最後まで書きあがっていますので、随時更新します。 表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

そんなにホイホイ転生させんじゃねえ!転生者達のチートスキルを奪う旅〜好き勝手する転生者に四苦八苦する私〜

Open
ファンタジー
就活浪人生に片足を突っ込みかけている大学生、本田望結のもとに怪しげなスカウトメールが届く。やけになっていた望結は指定された教会に行ってみると・・・ 神様の世界でも異世界転生が流行っていて沢山問題が発生しているから解決するために異世界に行って転生者の体の一部を回収してこい?しかも給料も発生する? 月給30万円、昇給あり。衣食住、必要経費は全負担、残業代は別途支給。etc...etc... 新卒の私にとって魅力的な待遇に即決したけど・・・ とにかくやりたい放題の転生者。 何度も聞いた「俺なんかやっちゃいました?」       「俺は静かに暮らしたいのに・・・」       「まさか・・・手加減でもしているのか・・・?」       「これぐらい出来て普通じゃないのか・・・」 そんな転生者を担ぎ上げる異世界の住民達。 そして転生者に秒で惚れていく異世界の女性達によって形成されるハーレムの数々。 もういい加減にしてくれ!!! 小説家になろうでも掲載しております

侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。 3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。 高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。 これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!! 転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

後宮の棘

香月みまり
キャラ文芸
蔑ろにされ婚期をのがした25歳皇女がついに輿入り!相手は敵国の禁軍将軍。冷めた姫vs堅物男のチグハグな夫婦は帝国内の騒乱に巻き込まれていく。 ☆完結しました☆ スピンオフ「孤児が皇后陛下と呼ばれるまで」の進捗と合わせて番外編を不定期に公開していきます。 第13回ファンタジー大賞特別賞受賞! ありがとうございました!!

処理中です...