夢の硝子玉

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
上 下
528 / 802
ポーリシアの老女

114

しおりを挟む
「なんだよ、俺に意見を聞いておいて、その反対のものを買うなんて酷いじゃないか……」

ジャックの抗議を少しも気にしないそぶりで、セリナは微笑む。



 「ジャック、疲れたんじゃない?
 宿に戻って、待ってましょう。」

 「いや、俺はフレイザーの所に行くよ。
ケーキ売りの手伝いをしなきゃ……」

 「今日のはほとんどがダルシャの注文なんでしょう?
ダルシャのお友達があのケーキを気に入って、たくさん頼まれたらしいわよ。」

 「お友達…ねぇ……」

ジャックは皮肉な笑みを浮かべながら、呆れたような声を出す。
その足は宿ではなく、広場に向かっていた。
セリナもそれに気付いたが、あえて反対することはなく、ジャックの後を着いて行った。



 *



 「あら、今日も繁盛してるわね。」

 広場に着き、フレイザーの周りに人だかりがしているのを見て微笑んだセリナの表情がすぐに変わった。



 「……なんだか様子がおかしいわね。」

 近付くにつれ、フレイザーの周りにいる男達が、大きな声で叫んでいる言葉がセリナ達の耳を揺るがした。



 「皆、こんなもの、買うんじゃないぞ!
このケーキには危険な魔法がかかってる!」

 「今時、どこにエレが実ってる!?
このケーキはな、隣町の魔法使いが魔法の木に実らせたエレが使われてるんだ!
しかも、作ってるのは魔法使いだ!
こんなものを食べたらどうなるか、わかりゃしねぇぞ!」



 「畜生…あいつら……!」

 「ジャック、待って!」

 駆け出そうとするジャックの腕をセリナが引きとめた。



 「だけど、このまま放っとけないだろ!」

 「あなたが今飛び出しても何もならないわ!
それよりも、ジャック…こっちに来て!
 私に良い考えがあるわ!」

 「良い考えって……セリナ……」

セリナは、ジャックの手を引き、近くの人気のない場所に向かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

幸せな帝国生活 ~「失敗作」と呼ばれていた王女、人質として差し出された帝国で「最重要人物」に指定される~

絢乃
恋愛
魔力が低いと蔑まれ「失敗作」扱いだった王女ソフィアは、人質として宗主国の帝国に送られる。 しかし、実は彼女の持つ魔力には魔物を追い払う特殊な属性が備わっていた。 そのことに気づいた帝国の皇太子アルトは、ソフィアに力を貸してほしいと頼む。 ソフィアは承諾し、二人は帝国の各地を回る旅に出る――。 もう失敗作とは言わせない! 落ちこぼれ扱いされていた王女の幸せな帝国生活が幕を開ける。

【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!

雨宮羽那
恋愛
 いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。 ◇◇◇◇  私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。  元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!  気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?  元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!  だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。 ◇◇◇◇ ※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。 ※アルファポリス先行公開。 ※表紙はAIにより作成したものです。

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

転生したらチートすぎて逆に怖い

至宝里清
ファンタジー
前世は苦労性のお姉ちゃん 愛されることを望んでいた… 神様のミスで刺されて転生! 運命の番と出会って…? 貰った能力は努力次第でスーパーチート! 番と幸せになるために無双します! 溺愛する家族もだいすき! 恋愛です! 無事1章完結しました!

妹だけを可愛がるなら私はいらないでしょう。だから消えます……。何でもねだる妹と溺愛する両親に私は見切りをつける。

しげむろ ゆうき
ファンタジー
誕生日に買ってもらったドレスを欲しがる妹 そんな妹を溺愛する両親は、笑顔であげなさいと言ってくる もう限界がきた私はあることを決心するのだった

魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

異世界でもプログラム

北きつね
ファンタジー
 俺は、元プログラマ・・・違うな。社内の便利屋。火消し部隊を率いていた。  とあるシステムのデスマの最中に、SIer の不正が発覚。  火消しに奔走する日々。俺はどうやらシステムのカットオーバの日を見ることができなかったようだ。  転生先は、魔物も存在する、剣と魔法の世界。  魔法がをプログラムのように作り込むことができる。俺は、異世界でもプログラムを作ることができる! ---  こんな生涯をプログラマとして過ごした男が転生した世界が、魔法を”プログラム”する世界。  彼は、プログラムの知識を利用して、魔法を編み上げていく。 注)第七話+幕間2話は、現実世界の話で転生前です。IT業界の事が書かれています。   実際にあった話ではありません。”絶対”に違います。知り合いのIT業界の人に聞いたりしないでください。   第八話からが、一般的な転生ものになっています。テンプレ通りです。 注)作者が楽しむ為に書いています。   誤字脱字が多いです。誤字脱字は、見つけ次第直していきますが、更新はまとめてになります。

処理中です...