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ポーリシアの老女
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「えっと……
これからどうする?
町でもぶらつくか?」
その場にジャックと二人っきりでいることを気詰まりに感じたフレイザーが、唐突に提案した。
「ここは、フォスターと違って店もあんまりないぜ。
なんでも屋みたいな店が二、三軒と酒場が一軒、そしてこの宿屋があるだけだ。
買い物はほとんど皆フォスターまで行くんじゃないか?」
「そういえば、最初ここが宿屋だとはなかなか気付かなかった。
宿屋の場所を聞こうと思って入ったら、ここが宿屋で、それでおまえがここに泊まってることもわかったんだ。」
「確かにそうだな。でも、やたらと大きな看板が出てただろ?
あ…夜だったら見えなかったか…
この宿屋、部屋も四部屋しかないんだ。
フォスターの宿屋よりずいぶん安いからって、たまに泊まる奴がいるみたいだ。」
「なるほどな…
あ、そうだ…ジャック、昨夜の沼地に行ってみないか?」
ジャックもずっとそこにいるのがいやだったのか、フレイザーの提案にあっさりと従った。
「わぁ!こんなにデカイ看板があったのか!
これならこんな外観でも宿屋だってわかるけど、でも、夜に来たんじゃこれが見えないからちっとも効果はないな。」
宿の壁に貼り付けられた馬鹿でかい看板にフレイザーは失笑する。
「自宅をほんの少し改築しただけって感じだな。
だけど、料理はうまかっただろ?」
「あぁ、うまかった。
見た目はぱっとしないのに、量も多いしとってもうまかったよ。」
「料理もあの主人が作ってんのかな?」
「さぁ…どうなんだろうなぁ…」
他愛ない会話を交わしながら、ジャックとフレイザーはゆっくりと沼に向かって歩き続けた。
フォスターとさほど変わらない程の広さはあるが、建物や住人の数は比べものにならない程少ない。
その分、畑や草原が多く、フォスターとはまるで違った風景を見せていた。
「ジャック、昨日の沼ってこんなに遠かったか?
もしかして道を間違えてたりしないのか?」
沼地になかなか辿りつかないことにフレイザーは不信感を抱き、きょろきょろとあたりを見渡す。
「ダルシャじゃあるまいし…
間違ってないさ。
沼地はけっこう遠くて……ほら、あそこ……」
ジャックの指差す先に、陽の光りを浴びてきらきらと光るものがあった。
「あ……!
本当だ…
へぇ…こんなに遠かったんだな…」
その言葉を聞いて、ジャックは昨夜のフレイザーがどれほど冷静でなかったかを改めて悟った。
足の痛みも、距離感も何もかも忘れて自分を助けに来てくれたのだと思うと、ジャックは胸の奥がじんと熱くなるのを感じた。
「えっと……
これからどうする?
町でもぶらつくか?」
その場にジャックと二人っきりでいることを気詰まりに感じたフレイザーが、唐突に提案した。
「ここは、フォスターと違って店もあんまりないぜ。
なんでも屋みたいな店が二、三軒と酒場が一軒、そしてこの宿屋があるだけだ。
買い物はほとんど皆フォスターまで行くんじゃないか?」
「そういえば、最初ここが宿屋だとはなかなか気付かなかった。
宿屋の場所を聞こうと思って入ったら、ここが宿屋で、それでおまえがここに泊まってることもわかったんだ。」
「確かにそうだな。でも、やたらと大きな看板が出てただろ?
あ…夜だったら見えなかったか…
この宿屋、部屋も四部屋しかないんだ。
フォスターの宿屋よりずいぶん安いからって、たまに泊まる奴がいるみたいだ。」
「なるほどな…
あ、そうだ…ジャック、昨夜の沼地に行ってみないか?」
ジャックもずっとそこにいるのがいやだったのか、フレイザーの提案にあっさりと従った。
「わぁ!こんなにデカイ看板があったのか!
これならこんな外観でも宿屋だってわかるけど、でも、夜に来たんじゃこれが見えないからちっとも効果はないな。」
宿の壁に貼り付けられた馬鹿でかい看板にフレイザーは失笑する。
「自宅をほんの少し改築しただけって感じだな。
だけど、料理はうまかっただろ?」
「あぁ、うまかった。
見た目はぱっとしないのに、量も多いしとってもうまかったよ。」
「料理もあの主人が作ってんのかな?」
「さぁ…どうなんだろうなぁ…」
他愛ない会話を交わしながら、ジャックとフレイザーはゆっくりと沼に向かって歩き続けた。
フォスターとさほど変わらない程の広さはあるが、建物や住人の数は比べものにならない程少ない。
その分、畑や草原が多く、フォスターとはまるで違った風景を見せていた。
「ジャック、昨日の沼ってこんなに遠かったか?
もしかして道を間違えてたりしないのか?」
沼地になかなか辿りつかないことにフレイザーは不信感を抱き、きょろきょろとあたりを見渡す。
「ダルシャじゃあるまいし…
間違ってないさ。
沼地はけっこう遠くて……ほら、あそこ……」
ジャックの指差す先に、陽の光りを浴びてきらきらと光るものがあった。
「あ……!
本当だ…
へぇ…こんなに遠かったんだな…」
その言葉を聞いて、ジャックは昨夜のフレイザーがどれほど冷静でなかったかを改めて悟った。
足の痛みも、距離感も何もかも忘れて自分を助けに来てくれたのだと思うと、ジャックは胸の奥がじんと熱くなるのを感じた。
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