438 / 802
ポーリシアの老女
23
しおりを挟む
*
「本当に大丈夫なのか!?
ジャックを一人にして……」
「あぁ、大丈夫だ。
彼女は完全に落ち付いてる。
それに、隣の部屋なんだから彼女が出て行けば、気配でわかるだろう。」
「俺…ちょっと…」
「やめておけ!
……今夜は一人にしてやった方が良い。」
立ち上がったフレイザーの腕を、ダルシャが引き止めた。
「……わかったよ。」
フレイザーは、渋い顔をして再び席に着いた。
「それにしても、ジャックは一体何を隠してるのかしら?
私達には女だってことも、なぜ男のふりをしてるかもすべて打ち明けたのに、今更…」
「……それよりも格段に言いにくいことなのだろうな。
フレイザー……覚悟は出来てるのか?」
「……そうだな。
多分、出来てると思う。
ジャックにどんなことがあったって、俺とジャックが過ごして来た時間は何も変わらない。
それと同じように俺が知ってるジャックが変わることはないと思うんだ。」
「フレイザー……どうかお願い…
ジャックを幸せにしてあげて。
ジャックっていう偽りの衣を脱ぎ捨てて、ジャネットとして生きていけるようにしてあげてほしいの…」
セリナはそう言って、フレイザーの瞳をみつめ、両手を固く握り締めた。
「正直言って俺にはまだ実感もなけりゃ、自信も何もない。
ジャックには誰にも話せない重大な秘密があるみたいだし、ジャックがそれを俺に打ち明けてくれる程信頼してくれるようになるまでには、きっとまだずいぶん時間がかかると思うんだ。
でも…俺は、そんな日がいつかきっと来ると信じて待ってみるよ。
その間に、俺の小さな炎ももっと大きくなってくれれば良いな…」
「君の炎は小さいわけではないと思うぞ。
その証拠に、さっきの君の格好といったら…
ランプもどこでなくしたか覚えていないのだろう?
君はそれほど彼女のことをひたむきに考えていたということだ。
ただ、君が鈍いからどの程度、自分の気持ちが燃え上がってるか気付いていないないだけだな、きっと。」
「鈍いって……そんなにはっきり…酷いじゃないか…
俺ってそんなに鈍いか?」
真面目な顔をして同じように頷いたダルシャとセリナに、フレイザーは思わず噴き出す。
「あぁ、あぁ…俺はどうせ鈍い男だよ。
だから……これからも協力してくれよな。」
「あぁ、もちろんだ。」
三人は顔を見合せ、穏やかに微笑んだ。
「本当に大丈夫なのか!?
ジャックを一人にして……」
「あぁ、大丈夫だ。
彼女は完全に落ち付いてる。
それに、隣の部屋なんだから彼女が出て行けば、気配でわかるだろう。」
「俺…ちょっと…」
「やめておけ!
……今夜は一人にしてやった方が良い。」
立ち上がったフレイザーの腕を、ダルシャが引き止めた。
「……わかったよ。」
フレイザーは、渋い顔をして再び席に着いた。
「それにしても、ジャックは一体何を隠してるのかしら?
私達には女だってことも、なぜ男のふりをしてるかもすべて打ち明けたのに、今更…」
「……それよりも格段に言いにくいことなのだろうな。
フレイザー……覚悟は出来てるのか?」
「……そうだな。
多分、出来てると思う。
ジャックにどんなことがあったって、俺とジャックが過ごして来た時間は何も変わらない。
それと同じように俺が知ってるジャックが変わることはないと思うんだ。」
「フレイザー……どうかお願い…
ジャックを幸せにしてあげて。
ジャックっていう偽りの衣を脱ぎ捨てて、ジャネットとして生きていけるようにしてあげてほしいの…」
セリナはそう言って、フレイザーの瞳をみつめ、両手を固く握り締めた。
「正直言って俺にはまだ実感もなけりゃ、自信も何もない。
ジャックには誰にも話せない重大な秘密があるみたいだし、ジャックがそれを俺に打ち明けてくれる程信頼してくれるようになるまでには、きっとまだずいぶん時間がかかると思うんだ。
でも…俺は、そんな日がいつかきっと来ると信じて待ってみるよ。
その間に、俺の小さな炎ももっと大きくなってくれれば良いな…」
「君の炎は小さいわけではないと思うぞ。
その証拠に、さっきの君の格好といったら…
ランプもどこでなくしたか覚えていないのだろう?
君はそれほど彼女のことをひたむきに考えていたということだ。
ただ、君が鈍いからどの程度、自分の気持ちが燃え上がってるか気付いていないないだけだな、きっと。」
「鈍いって……そんなにはっきり…酷いじゃないか…
俺ってそんなに鈍いか?」
真面目な顔をして同じように頷いたダルシャとセリナに、フレイザーは思わず噴き出す。
「あぁ、あぁ…俺はどうせ鈍い男だよ。
だから……これからも協力してくれよな。」
「あぁ、もちろんだ。」
三人は顔を見合せ、穏やかに微笑んだ。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
四代目は身代わりの皇后④十年後~皇后アリカの計画と皇太子ラテの不満
江戸川ばた散歩
ファンタジー
何十年も後継者が出来なかった「帝国」の皇帝の世継ぎである「息子」を身ごもったサヘ将軍家の娘アリカ。そしてその側近の上級女官となったサボン。
実は元々はその立場は逆だったのだが、お互いの望みが一緒だったことで入れ替わった二人。結果として失われた部族「メ」の生き残りが皇后となり、将軍の最愛の娘はそのお付きとなった。
膨大な知識を皇后となったことでインプットされてしまった「アリカ」と、女官となったことで知り得なかった人生を歩むこととなった「サボン」の波乱と友情と日常のはなし。
皇太子誕生から十年後。ちゃくちゃくと進んで行くアリカの計画だが、息子は……
豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜
自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成!
理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」
これが翔の望んだ力だった。
スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!?
ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。
※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。
悪役令嬢と弟が相思相愛だったのでお邪魔虫は退場します!どうか末永くお幸せに!
ユウ
ファンタジー
乙女ゲームの王子に転生してしまったが断罪イベント三秒前。
婚約者を蔑ろにして酷い仕打ちをした最低王子に転生したと気づいたのですべての罪を被る事を決意したフィルベルトは公の前で。
「本日を持って私は廃嫡する!王座は弟に譲り、婚約者のマリアンナとは婚約解消とする!」
「「「は?」」」
「これまでの不始末の全ては私にある。責任を取って罪を償う…全て悪いのはこの私だ」
前代未聞の出来事。
王太子殿下自ら廃嫡を宣言し婚約者への謝罪をした後にフィルベルトは廃嫡となった。
これでハッピーエンド。
一代限りの辺境伯爵の地位を許され、二人の幸福を願ったのだった。
その潔さにフィルベルトはたちまち平民の心を掴んでしまった。
対する悪役令嬢と第二王子には不測の事態が起きてしまい、外交問題を起こしてしまうのだったが…。
タイトル変更しました。
パーフェクトアンドロイド
ことは
キャラ文芸
アンドロイドが通うレアリティ学園。この学園の生徒たちは、インフィニティブレイン社の実験的試みによって開発されたアンドロイドだ。
だが俺、伏木真人(ふしぎまひと)は、この学園のアンドロイドたちとは決定的に違う。
俺はインフィニティブレイン社との契約で、モニターとしてこの学園に入学した。他の生徒たちを観察し、定期的に校長に報告することになっている。
レアリティ学園の新入生は100名。
そのうちアンドロイドは99名。
つまり俺は、生身の人間だ。
▶︎credit
表紙イラスト おーい
アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活
ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。
「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。
現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。
ゆっくり更新です。はじめての投稿です。
誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。
子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!
八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。
『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。
魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。
しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も…
そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。
しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。
…はたして主人公の運命やいかに…
婚約者に嫌われているようなので離れてみたら、なぜか抗議されました
花々
恋愛
メリアム侯爵家の令嬢クラリッサは、婚約者である公爵家のライアンから蔑まれている。
クラリッサは「お前の目は醜い」というライアンの言葉を鵜呑みにし、いつも前髪で顔を隠しながら過ごしていた。
そんなある日、クラリッサは王家主催のパーティーに参加する。
いつも通りクラリッサをほったらかしてほかの参加者と談笑しているライアンから離れて廊下に出たところ、見知らぬ青年がうずくまっているのを見つける。クラリッサが心配して介抱すると、青年からいたく感謝される。
数日後、クラリッサの元になぜか王家からの使者がやってきて……。
✴︎感想誠にありがとうございます❗️
✴︎(承認不要の方)ご指摘ありがとうございます。第一王子のミスでした💦
✴︎ヒロインの実家は侯爵家です。誤字失礼しました😵
魔力無し判定の令嬢は冒険者を目指します!
まるねこ
恋愛
「マーロア様には魔力がございません」
神官のその言葉に父は絶句し、母は泣き崩れた。
私は魔力を持つ貴族社会では生きづらいだろうと領地の端にある村へと送られ、生活することになった。
村で先生と出会い、冒険者になるという夢を持って王都に戻り、学院に入学し、騎士科で過ごす。幼馴染のファルスと共に先輩や王族との出会いを通じてマーロアの世界は広がっていった。
魔獣を倒すので人によってはグロと感じるかもしれません。
《11月29日より開始のカクヨムコン10に応募しています。★のご協力頂ければ嬉しいです。》
Copyright©︎2022-まるねこ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる