432 / 802
ポーリシアの老女
17
しおりを挟む
*
「ジャックーーー!」
隣町はフォスターとはまるで違い、寂れた小さな田舎町といった風情で、外灯や店の明かりも少ないため、暗く、人通りもまばらだった。
汗にまみれ、転んで膝をすりむき、髪をふり乱したフレイザーの姿は異様なものだったが、幸いにもその暗さのお陰で目立つことなく闇に紛れた。
町に着くなり、フレイザーはジャックを探して走りまわる。
宿屋を発見したフレイザーは、そこにジャックらしい者が泊まっていることを突きとめたが、ジャックは部屋にはおらず出掛けていることを聞かされ、余計に不安な気持ちを募らせた。
「ジャック!
どこにいるんだ!
ジャーーーック!」
(……どうか…どうか、間に合ってくれ!
神様!お願いだ!
どうか、俺が行くまでジャックを引きとめてくれ!)
心の中で普段はあまり思い出すことのない神に手を合わせ、半狂乱になってジャックを探すフレイザーは、やがて、町のはずれにジャックらしき者が歩いて行くのを見たという話を聞きこみ、教えられた方向へ駆け出した。
*
今宵の月は小さく、あたりの様子はあまりよく見えない。
ジャックは沼のほとりに佇み、薄明かりの中、懸命に目を凝らす。
「ジャーーーック!」
背後から聞こえてきた聞き覚えのある声に、ジャックは我が耳を疑いながらゆっくりと振り返った。
「ジャックーーー!」
「……フレイザー…?」
暗くてはっきりと見えないとはいえ、その体型や声でやはりそれが幻ではなく本物のフレイザーだということをジャックは確認する。
「この……馬鹿野郎!」
突然、響いた乾いた音と同時にジャックは頬に痛みを覚え、一瞬、眩暈のようなものを感じた。
何が起きたかを理解する前に、今度はフレイザーに強く抱き締められ、ジャックの頭の中は混乱の度合いを増す。
「ジャック…なんでこんなことを…」
フレイザーの身体は熱い熱を帯び、早鐘を打つ心臓の鼓動がジャックにもはっきりと伝わった。
激しい息遣いの合間に聞こえるすすり泣きの声に、ジャックの鼓動も速さを増した。
「……フレイザー…泣いてるのか?どうした!?
何かあったのか!?」
「な…何かじゃないだろ…
おまえ、言ったじゃないか。
あんな痛くて苦しい想いはもう二度としたくないって、だから信じてたのに…酷いじゃないか。
なんでこんな馬鹿なこと……」
「……なんだって?」
「……でも、良かった…
おまえが無事でいてくれて……
おまえに何かあったら、俺は……」
「……ちょ…ちょっと待ってくれ…
フレイザー…一体、何のことを言ってるんだ?」
ジャックは、フレイザーの身体を優しく押し離した。
「ジャックーーー!」
隣町はフォスターとはまるで違い、寂れた小さな田舎町といった風情で、外灯や店の明かりも少ないため、暗く、人通りもまばらだった。
汗にまみれ、転んで膝をすりむき、髪をふり乱したフレイザーの姿は異様なものだったが、幸いにもその暗さのお陰で目立つことなく闇に紛れた。
町に着くなり、フレイザーはジャックを探して走りまわる。
宿屋を発見したフレイザーは、そこにジャックらしい者が泊まっていることを突きとめたが、ジャックは部屋にはおらず出掛けていることを聞かされ、余計に不安な気持ちを募らせた。
「ジャック!
どこにいるんだ!
ジャーーーック!」
(……どうか…どうか、間に合ってくれ!
神様!お願いだ!
どうか、俺が行くまでジャックを引きとめてくれ!)
心の中で普段はあまり思い出すことのない神に手を合わせ、半狂乱になってジャックを探すフレイザーは、やがて、町のはずれにジャックらしき者が歩いて行くのを見たという話を聞きこみ、教えられた方向へ駆け出した。
*
今宵の月は小さく、あたりの様子はあまりよく見えない。
ジャックは沼のほとりに佇み、薄明かりの中、懸命に目を凝らす。
「ジャーーーック!」
背後から聞こえてきた聞き覚えのある声に、ジャックは我が耳を疑いながらゆっくりと振り返った。
「ジャックーーー!」
「……フレイザー…?」
暗くてはっきりと見えないとはいえ、その体型や声でやはりそれが幻ではなく本物のフレイザーだということをジャックは確認する。
「この……馬鹿野郎!」
突然、響いた乾いた音と同時にジャックは頬に痛みを覚え、一瞬、眩暈のようなものを感じた。
何が起きたかを理解する前に、今度はフレイザーに強く抱き締められ、ジャックの頭の中は混乱の度合いを増す。
「ジャック…なんでこんなことを…」
フレイザーの身体は熱い熱を帯び、早鐘を打つ心臓の鼓動がジャックにもはっきりと伝わった。
激しい息遣いの合間に聞こえるすすり泣きの声に、ジャックの鼓動も速さを増した。
「……フレイザー…泣いてるのか?どうした!?
何かあったのか!?」
「な…何かじゃないだろ…
おまえ、言ったじゃないか。
あんな痛くて苦しい想いはもう二度としたくないって、だから信じてたのに…酷いじゃないか。
なんでこんな馬鹿なこと……」
「……なんだって?」
「……でも、良かった…
おまえが無事でいてくれて……
おまえに何かあったら、俺は……」
「……ちょ…ちょっと待ってくれ…
フレイザー…一体、何のことを言ってるんだ?」
ジャックは、フレイザーの身体を優しく押し離した。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
転生したらチートすぎて逆に怖い
至宝里清
ファンタジー
前世は苦労性のお姉ちゃん
愛されることを望んでいた…
神様のミスで刺されて転生!
運命の番と出会って…?
貰った能力は努力次第でスーパーチート!
番と幸せになるために無双します!
溺愛する家族もだいすき!
恋愛です!
無事1章完結しました!
後宮の棘
香月みまり
キャラ文芸
蔑ろにされ婚期をのがした25歳皇女がついに輿入り!相手は敵国の禁軍将軍。冷めた姫vs堅物男のチグハグな夫婦は帝国内の騒乱に巻き込まれていく。
☆完結しました☆
スピンオフ「孤児が皇后陛下と呼ばれるまで」の進捗と合わせて番外編を不定期に公開していきます。
第13回ファンタジー大賞特別賞受賞!
ありがとうございました!!
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
悪役令嬢戦記!~大切な人のために戦います~
naturalsoft
ファンタジー
【2020年大幅な見直しと挿絵の増加、追加執筆中】
どうやら生前大ヒットした国民的乙女ゲームに良く似た世界に転生しました。
現在の私のキャラなのですが、タイトル通り悪役令嬢の立場であるシオン・フィリアス公爵令嬢として産まれ変わりました。
本来なら良くある卒業パーティーで、断罪イベントの中でざまぁされるキャラですが【良く似ている世界】であってゲームとは違うのですよ。偶発的にモンスターの大氾濫(スタンピード)が発生してしまい国内が大いに荒れて大勢の人が死に、国は弱体化しました。それに付け込んで他国も侵略してきたからさー大変です!悪役令嬢物語が戦国乱戦のゲームに早変わり!私、生き残れるのかしら!?ってゆーか、ヒロインよ!何とかしなさいな!えっ、恋愛乙女ゲームだったから何の力も無いですって!?
使えなーい!!!!ヒロインって何でしたっけ???
※投稿スピード重視の為、誤字脱字は気付き次第直していきます。
※100話を記念して【漫画】を投稿しました。同名タイトルの漫画もお楽しみ下さい!
【キャラ画像公開しました!イラストでよりイメージしやすくなると思います!】
【漫画版】漫画:少女部門ランキング1位獲得!
【悪役令嬢戦記!パロディ編】絵本部門ランキング1位獲得!
(試し書きの練習版で1位とか……)
ありがとうございます!
(小説より高評価で複雑な気持ちです)
【完】転職ばかりしていたらパーティーを追放された私〜実は88種の職業の全スキル極めて勇者以上にチートな存在になっていたけど、もうどうでもいい
冬月光輝
ファンタジー
【勇者】のパーティーの一員であったルシアは職業を極めては転職を繰り返していたが、ある日、勇者から追放(クビ)を宣告される。
何もかもに疲れたルシアは適当に隠居先でも見つけようと旅に出たが、【天界】から追放された元(もと)【守護天使】の【堕天使】ラミアを【悪魔】の手から救ったことで新たな物語が始まる。
「わたくし達、追放仲間ですね」、「一生お慕いします」とラミアからの熱烈なアプローチに折れて仕方なくルシアは共に旅をすることにした。
その後、隣国の王女エリスに力を認められ、仕えるようになり、2人は数奇な運命に巻き込まれることに……。
追放コンビは不運な運命を逆転できるのか?
(完結記念に澄石アラン様からラミアのイラストを頂きましたので、表紙に使用させてもらいました)
転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ
如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白?
「え~…大丈夫?」
…大丈夫じゃないです
というかあなた誰?
「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」
…合…コン
私の死因…神様の合コン…
…かない
「てことで…好きな所に転生していいよ!!」
好きな所…転生
じゃ異世界で
「異世界ってそんな子供みたいな…」
子供だし
小2
「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」
よろです
魔法使えるところがいいな
「更に注文!?」
…神様のせいで死んだのに…
「あぁ!!分かりました!!」
やたね
「君…結構策士だな」
そう?
作戦とかは楽しいけど…
「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」
…あそこ?
「…うん。君ならやれるよ。頑張って」
…んな他人事みたいな…
「あ。爵位は結構高めだからね」
しゃくい…?
「じゃ!!」
え?
ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!
死霊使いの花嫁
羽鳥紘
ファンタジー
死霊が住まうという屋敷で目覚めたミオは、自分が死霊使いである当主の花嫁であると聞かされる。覚えのないことに戸惑いながらも、当面の衣食住のため、ミオは当主ミハイルと契約を結ぶことにするが――◆小匙一杯ずつのラブとシリアスとコメディとバトルとミステリーとホラーが入ったファンタジー。番外編4コマ⇒https://www.alphapolis.co.jp/manga/452083416/619372892web◆拍手⇒http://unfinished-koh.net/patipati/ufpati.cgi
結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください
シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。
国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。
溺愛する女性がいるとの噂も!
それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。
それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから!
そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー
最後まで書きあがっていますので、随時更新します。
表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる