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ポーリシアの老女
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「やっぱりいない…」
フレイザーの表情は暗く、その声も沈んだものだった。
「まさか、ジャック…
おかしなことでも考えて……」
セリナの一言で、部屋の中の雰囲気は俄かに緊迫したものに変わった。
「そんなことあるもんか!」
この宿には食堂がないため、夕食はダルシャの部屋に運んでもらうことになっていた。
夕食の時間が近付き、エリオットとセリナが、そしてラスターがやって来て、夕食が運ばれて来ても、一つだけ埋まらない席があった。
ジャックが夕食に遅れることは珍しいため、心配したフレイザーが町にジャックを探しに行ったが、その姿をみつけることは出来なかった。
「……あいつは今までに何度か死に損なってるんだ。
だから、あんな痛くて苦しい想いは二度としないって、そう言ってた。」
「だけど、フレイザー…
昨夜、ジャックはこうも言ったんでしょ?
思い残すことはもう何もないって。」
エリオットのその言葉に、部屋の中はざわめいた。
「なんだって!?
フレイザー、あんた、あいつに何か言ったのか?
思い残すことはないなんて…ただ事じゃないぜ!
今日は一緒じゃなかったのか?」
「あ…あぁ……朝食の後、俺はエリオットと会って、それからはずっとダルシャと一緒にいて…」
「何やってんだ!
そんなおかしなこと言った後なら、ずっと傍にいて注意してやらなきゃいけないだろ!
あいつ、俺達にまで自分が女だってことや話しにくい過去のことまで話して…
男になるなんて言って、実は最初から死ぬつもりじゃなかったのか?
だから、あんなことを…」
感情の高ぶったラスターは、フレイザーを責めたてるような視線で睨み付けた。
「ラスター、滅多なことを言うもんじゃない。
ところで、今日、ジャックはどうしてたんだ?
誰か、一緒じゃなかったのか?」
「私はエリオットと一緒に町にいたわ。」
「……俺もさっきまで町をぶらついてたけど、あいつの姿はみかけなかったぜ。」
「では、ジャックは一人でどこかに行ったのだな。
フレイザー、ジャックの荷物はどうだった?」
「あ……見て来る。」
フレイザーはその場から駆け出した。
残された四人は、食事にも手を付けず、落ち付かない様子でフレイザーの戻るのを待った。
「やっぱりいない…」
フレイザーの表情は暗く、その声も沈んだものだった。
「まさか、ジャック…
おかしなことでも考えて……」
セリナの一言で、部屋の中の雰囲気は俄かに緊迫したものに変わった。
「そんなことあるもんか!」
この宿には食堂がないため、夕食はダルシャの部屋に運んでもらうことになっていた。
夕食の時間が近付き、エリオットとセリナが、そしてラスターがやって来て、夕食が運ばれて来ても、一つだけ埋まらない席があった。
ジャックが夕食に遅れることは珍しいため、心配したフレイザーが町にジャックを探しに行ったが、その姿をみつけることは出来なかった。
「……あいつは今までに何度か死に損なってるんだ。
だから、あんな痛くて苦しい想いは二度としないって、そう言ってた。」
「だけど、フレイザー…
昨夜、ジャックはこうも言ったんでしょ?
思い残すことはもう何もないって。」
エリオットのその言葉に、部屋の中はざわめいた。
「なんだって!?
フレイザー、あんた、あいつに何か言ったのか?
思い残すことはないなんて…ただ事じゃないぜ!
今日は一緒じゃなかったのか?」
「あ…あぁ……朝食の後、俺はエリオットと会って、それからはずっとダルシャと一緒にいて…」
「何やってんだ!
そんなおかしなこと言った後なら、ずっと傍にいて注意してやらなきゃいけないだろ!
あいつ、俺達にまで自分が女だってことや話しにくい過去のことまで話して…
男になるなんて言って、実は最初から死ぬつもりじゃなかったのか?
だから、あんなことを…」
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ところで、今日、ジャックはどうしてたんだ?
誰か、一緒じゃなかったのか?」
「私はエリオットと一緒に町にいたわ。」
「……俺もさっきまで町をぶらついてたけど、あいつの姿はみかけなかったぜ。」
「では、ジャックは一人でどこかに行ったのだな。
フレイザー、ジャックの荷物はどうだった?」
「あ……見て来る。」
フレイザーはその場から駆け出した。
残された四人は、食事にも手を付けず、落ち付かない様子でフレイザーの戻るのを待った。
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