夢の硝子玉

ルカ(聖夜月ルカ)

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ポーリシアの老女

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「フレイザー…
私は何も君を非難しているわけではない。
 無理にジャックとつきあえというのでもない。
ただ、現実を見てほしかっただけだ。
それと…恋愛に…いや、人生に傷はつきものだ。
むろん、あえて傷付けるようなことはいけないと思うが、そんなつもりはなくとも傷付けてしまうことは少なくない。
だが、傷付けることを怖れる余り、本当の自分を出せなくなるのは愚かな事だと思う。
 要はその後の対処ではないか?
 誰もが癒す力を持っている。
 自分をも他人をもだ。
 誰かを傷付けてしまったと思えば、その傷を癒す手伝いをすれば良い。
ジャックを女性として愛せないなら、友達として愛してやれば良いのではないか?
……でも、正直言って、私は今回願い石がみつからなければ良いと…みつかっても、双子石であれば良いと願っている。
……私の勝手な想いだが、ジャックには女性として生きてほしい。
 女性として幸せになってほしいと、な……」

 話を終え、ダルシャが飲み干したグラスをテーブルに置いた音が小さく響いた。



 「……ダルシャ、ありがとう。
 俺、もう一度、じっくりと自分の気持ちを確かめてみるよ。
……あぁぁ…やっぱりあんたは大人だな。
エリオットの言う通り、あんたに相談して良かったよ。」

 「そんな風に言うと、まるで私が君よりずっと年上みたいじゃないか。
さほど変わらんだろう。」

 「あんた、いくつなんだ?」

 「……さぁ、そんなことは忘れたな。」

ダルシャは、とぼけた事を口にして、自分とフレイザーのグラスにワインを注ぎ入れた。



 「おかしな人だな…
女じゃあるまいし、自分の年を隠すなんて…」

 「隠しているわけじゃない。
そういうものに縛られたくないだけだ。
……そんなことより、エリオットにはよく謝っておくんだぞ。
つまらないことで喧嘩をするな。
 彼女は君よりずっと年下なんだから。」

フレイザーはその言葉に苦笑して、ゆっくりとワインを流しこんだ。



 「そういえば、ブライアンに言われた弟のことや、変わった家のことについて何か思い出すことはないのか?」

 唐突なダルシャの問いに、フレイザーはむせて咳き込む。



 「あ…あぁ、あのこと…
それがやっぱり何も思い出さないんだ。
エリオットも同じらしい。」

フレイザーは俯いたまま、そう答えた。



 「……そうか、残念だな。
しかし、ブライアンの占いに間違いはない。
エリオットの双子の兄弟と近代的な変わった家は、きっとなんらかの手掛かりになると思う。」

 「そうだな…うん。
しっかり覚えとくよ。」

 二人は、他愛ない会話を交わしながら穏やかな時を過ごした。
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