夢の硝子玉

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
上 下
382 / 802
ディーラスを目指して

68

しおりを挟む
「そうじゃないよ。
……何度も言ってるじゃないか、ボクはフレイザーに恋愛感情なんて持ってないし、フレイザーだってそうだよ。
 彼とボクとは…親友みたいなもんだね。」

 「親友…?
 男と女の間に友情なんてあるもんか。
それに、おまえとフレイザーとじゃ年だってずいぶん違う。」

ラスターは意地悪い口調でそう言って、口端を僅かに上げた。



 「エリオット…ラスターは酔っ払ってるのよ。
 相手にすることなんてないわ。
そんなことより、ラスター…さっきのあの願いは本心なの?
 大金がほしいだなんて…」

セリナはエリオットをかばうように肩を抱き、厳しい視線でラスターを睨み付ける。



 「あぁ、本心だとも。
 俺がほしいものは金だけだ。
 子供の頃から、俺はずっと金のことで苦労して来た。
 金さえあれば、俺はあんな惨めな想いはすることはなかったんだ。
 金のない辛さなんて…体験しなきゃわからないだろうけどな…」

 「だけど…」

 「お説教なんて聞きたくないね。
……さて、と…俺は外で飲んで来るかな…
ここじゃ、うまい酒は飲めそうにないからな…」



その場の雰囲気を悪くした張本人は、酒瓶片手に鼻歌を歌いながら食堂を出て行った。



 「……相変わらずだな…」

ラスターの後ろ姿を目で追いながら、ジャックが吐き捨てるように呟いた。



 「まぁ、良いじゃないか…
あいつの言うことも、ま、もっともと言えばもっともだからな。」

 「……フレイザー、なんでなんだ?
 普段のあんたはどんなに辛いことでもそのことから逃げるような人間じゃない…
なのに、どうして…」

 「それは…だな…」

フレイザーがジャックに返す言葉を捜すうちに、エリオットはジャックの横に席を移し、耳元で小さな声で囁いた。



 「ジャック…ボク…以前、話したよね…魔法で、ほら…
フレイザーは、きっと、過去にもそんなことがあったんじゃないかって考えてるんだと思うんだ。」

ジャックは大きく目を見開いてエリオットをみつめ、エリオットはそれとは裏腹に冷静な顔でゆっくりと頷く。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

魔王が現れたから、勇者の子孫らしい俺がちょっくら倒してくる

あさぼらけex
ファンタジー
はるか昔。ここサーイターマルドは深い闇に包まれていた。 しかしどこからともなく現れた勇者ウラワが、神から授かったと言われる幻の金水晶の力を使って、闇の魔王を討ち滅ぼし、この地に平和が訪れた。 金水晶はこの地を治める時の王、ゴハン一世の手に渡り、勇者ウラワはどこかに姿を消した。 しばらく平和の世が続く。 しかしゴハン16世の御代になり、闇の魔王を名乗る者が現れた。 闇の魔王はお城にあった金水晶を奪い、この国の王女を連れ去った。 闇の魔王を倒すため、多くの者が旅たった。 しかし、戻ってくる者はひとりもいなかった。 この地に再び平和を! 誰もがあきらめかけたその時、預言者ミツフタは預言した。 勇者ウラワの血を引く子孫が、間もなく現れる。 そして闇の魔王を倒してくれるだろうと。

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ

karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。 しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」  リーリエは喜んだ。 「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」  もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。

成長率マシマシスキルを選んだら無職判定されて追放されました。~スキルマニアに助けられましたが染まらないようにしたいと思います~

m-kawa
ファンタジー
第5回集英社Web小説大賞、奨励賞受賞。書籍化します。 書籍化に伴い、この作品はアルファポリスから削除予定となりますので、あしからずご承知おきください。 【第七部開始】 召喚魔法陣から逃げようとした主人公は、逃げ遅れたせいで召喚に遅刻してしまう。だが他のクラスメイトと違って任意のスキルを選べるようになっていた。しかし選んだ成長率マシマシスキルは自分の得意なものが現れないスキルだったのか、召喚先の国で無職判定をされて追い出されてしまう。 一方で微妙な職業が出てしまい、肩身の狭い思いをしていたヒロインも追い出される主人公の後を追って飛び出してしまった。 だがしかし、追い出された先は平民が住まう街などではなく、危険な魔物が住まう森の中だった! 突如始まったサバイバルに、成長率マシマシスキルは果たして役に立つのか! 魔物に襲われた主人公の運命やいかに! ※小説家になろう様とカクヨム様にも投稿しています。 ※カクヨムにて先行公開中

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

他人の寿命が視える俺は理を捻じ曲げる。学園一の美令嬢を助けたら凄く優遇されることに

千石
ファンタジー
魔法学園4年生のグレイ・ズーは平凡な平民であるが、『他人の寿命が視える』という他の人にはない特殊な能力を持っていた。 ある日、学園一の美令嬢とすれ違った時、グレイは彼女の余命が本日までということを知ってしまう。 グレイは自分の特殊能力によって過去に周りから気味悪がられ、迫害されるということを経験していたためひたすら隠してきたのだが、 「・・・知ったからには黙っていられないよな」 と何とかしようと行動を開始する。 そのことが切っ掛けでグレイの生活が一変していくのであった。 他の投稿サイトでも掲載してます。

処理中です...