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ディーラスを目指して
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「わぁ、きのこがいっぱいだね。」
「ちぇ~…
俺はこんなものよりも、肉の方が良かったな…」
ヘイレンは山に囲まれたのどかな町。
エリオットやセリナは、普段あまり見る事のない珍しいきのこ料理に目を輝かせたが、ラスターはそれとは裏腹に不服そうな声を漏らした。
「まぁ、そう言うな。
ほら、川魚もあるぞ。」
「だから、俺が肉が食べたいんだって!」
ダルシャの差し出した料理に、ラスターは不機嫌に顔を背けた。
「……ねぇ、ところで、ここには誰が残る?」
ダルシャとラスターのやりとりをあえて無視したセリナが問いかけた。
「……残る?」
ダルシャは怪訝な顔をして、セリナの言葉を繰り返す。
「そうよ。
だって、フレイザー達とはここで落ちあうことになってたじゃない。
ブライアンが徒歩で行くものと考えてたから、彼らを待っても十分間に合うと思ってたけど、状況が変わった。
すぐにディーラスに向かわないとブライアンには追い付けないんですもの。
誰かが残って、二人に事情が変わったことを伝えないと…」
「そうだな…だったら、エリオットかラスターが残れば良いんじゃないか?」
「おい、なんで、俺かエリオットなんだ。
なんで、あんたは候補に入ってないんだよ。」
「そりゃあそうだろう?
君達はまだ大人じゃない。
私がついていなくちゃ……」
「何言ってんだ!」
感情的な声と共に、ラスターがテーブルを両手で叩き、店の中に大きな音が響き渡った。
「ラスター、およしなさいよ。」
セリナにたしなめられたラスターは俯いて小さく舌を打つ。
「ラスター、冷静に聞いてくれ。
ブライアンがどんな男かわからないだけではなく、セリナは常にどこで誰に狙われてるかわからんのだぞ。
だからこそ…」
「ブライアンはごろつきじゃねぇぞ。
あんたと同じ女たらしのただの占い師で、しかも一人なんだぜ。
そんなに危険な筈ないだろう。
それに、エリオットの魔法があれば、あんたの剣より役に立つと思うぜ。
俺だって、そんな奴が相手なら十分に戦えるしな。」
「しかし……」
「だったら、公平にくじにしよう!」
「くじ……?」
「なにか……」
ラスターポケットに手を突っ込み、次にバッグの中をごそごそとし始めた。
「あ、そうだわ!」
その様子を見たセリナが、バッグの中から何かを取り出してそれをテーブルの上に置きその上からハンカチをかぶせた。
「さぁ、みんな、この中にある石を一つだけ取って。」
三人は、ハンカチの中に手を伸ばし、それを同時にテーブルの上に置いた。
「あ……」
ラスターとエリオットの選んだ石は透明のもので、ダルシャの選んだ物だけが青い石だった。
「残念だけど、ダルシャ…ここに残るのはあなたね。」
「わぁ、きのこがいっぱいだね。」
「ちぇ~…
俺はこんなものよりも、肉の方が良かったな…」
ヘイレンは山に囲まれたのどかな町。
エリオットやセリナは、普段あまり見る事のない珍しいきのこ料理に目を輝かせたが、ラスターはそれとは裏腹に不服そうな声を漏らした。
「まぁ、そう言うな。
ほら、川魚もあるぞ。」
「だから、俺が肉が食べたいんだって!」
ダルシャの差し出した料理に、ラスターは不機嫌に顔を背けた。
「……ねぇ、ところで、ここには誰が残る?」
ダルシャとラスターのやりとりをあえて無視したセリナが問いかけた。
「……残る?」
ダルシャは怪訝な顔をして、セリナの言葉を繰り返す。
「そうよ。
だって、フレイザー達とはここで落ちあうことになってたじゃない。
ブライアンが徒歩で行くものと考えてたから、彼らを待っても十分間に合うと思ってたけど、状況が変わった。
すぐにディーラスに向かわないとブライアンには追い付けないんですもの。
誰かが残って、二人に事情が変わったことを伝えないと…」
「そうだな…だったら、エリオットかラスターが残れば良いんじゃないか?」
「おい、なんで、俺かエリオットなんだ。
なんで、あんたは候補に入ってないんだよ。」
「そりゃあそうだろう?
君達はまだ大人じゃない。
私がついていなくちゃ……」
「何言ってんだ!」
感情的な声と共に、ラスターがテーブルを両手で叩き、店の中に大きな音が響き渡った。
「ラスター、およしなさいよ。」
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「ラスター、冷静に聞いてくれ。
ブライアンがどんな男かわからないだけではなく、セリナは常にどこで誰に狙われてるかわからんのだぞ。
だからこそ…」
「ブライアンはごろつきじゃねぇぞ。
あんたと同じ女たらしのただの占い師で、しかも一人なんだぜ。
そんなに危険な筈ないだろう。
それに、エリオットの魔法があれば、あんたの剣より役に立つと思うぜ。
俺だって、そんな奴が相手なら十分に戦えるしな。」
「しかし……」
「だったら、公平にくじにしよう!」
「くじ……?」
「なにか……」
ラスターポケットに手を突っ込み、次にバッグの中をごそごそとし始めた。
「あ、そうだわ!」
その様子を見たセリナが、バッグの中から何かを取り出してそれをテーブルの上に置きその上からハンカチをかぶせた。
「さぁ、みんな、この中にある石を一つだけ取って。」
三人は、ハンカチの中に手を伸ばし、それを同時にテーブルの上に置いた。
「あ……」
ラスターとエリオットの選んだ石は透明のもので、ダルシャの選んだ物だけが青い石だった。
「残念だけど、ダルシャ…ここに残るのはあなたね。」
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