夢の硝子玉

ルカ(聖夜月ルカ)

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四つ目の大陸

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 「おめでとう、フレイザー!」

 「おめでとう!」

 「ありがとう!みんな…」

 少し照れ臭そうな顔をして、フレイザーはセリナからの花束を受け取った。

 数日が経ち、ようやく退院の許可が出たフレイザーを祝い、宿屋の部屋でちょっとしたパーティが催された。
フレイザーは、色鮮やかな花束よりも病院で食べていたものとはまるで違うボリュームのある料理に目を輝かせる。



 「あぁ~、やっぱりうちは良いな。」

 「うちって…ここは君の家じゃないだろ!」

 「旅してる間は泊まってる宿屋が家みたいなもんじゃないか。
ここは薬のにおいもしないし、なんだかほっとするよ。」

フレイザーは、嬉しそうに微笑みながら、目の前の料理に手を伸ばす。



 「フレイザー、まだ酒は駄目だぞ。
それと、脂っこいものは控えめにして…」

フレイザーのすぐ傍で、フレイザーの行動を監視するように寄り添うジャックを見て、セリナは方を震わせる。



 「な、なんだよ!セリナ!
なに笑ってんだよ!」

 「……なんでもないわ。」

セリナはそう言って小さく肩をすくめた。



 「フレイザー…あの…俺…」

 今まで口を開かなかったラスターが、何か言いたげにおずおずとフレイザーの傍に近寄ると、ジャックがフレイザーの前につと立ちはだかった。
その様子に、セリナやエリオットは表情を変え、あたりには緊迫した空気が流れた。



 「…ラスター、おまえもこれが食べたいのか?
ほら!」

フレイザーは、テーブルの上のチキンの脚を掴むと、ジャックの頭越しにそれをラスターに手渡した。



 「あ、ありがとう。
あのさ、フレイザー…俺……」

 「早く食べろよ。
……う~ん…うまい!
ジャック、ほら、おまえも食べろ!」

ジャックは差し出されたチキンを不機嫌な表情で受け取り、それを持ったまま立ち尽す。



 「フレイザー、私もいただくわ。」

そう言ってセリナは、フレイザーとラスターの間に割って入った。
それが、セリナの気遣いであることをフレイザーはすぐに気付いた。



 「ラスター…もうこの傷のことは言うなよな。
おまえにはもう何回も謝ってもらってる。
ジャックももう忘れるんだぞ。
そうでなきゃ、俺達、この先一緒に旅を続けられないからな。
 皆仲良く…なんてことは言わないけど、喧嘩だけはやめようぜ。な!」

フレイザーはそう言うと、ジャックの肩を軽く叩く。
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