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四つ目の大陸
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「どこに行くんだ。
診療所はあっちだぜ。」
「ジャック…風が気持ち良いからちょっと歩こうよ…」
「俺は帰る!」
ジャックはエリオットの誘いを振り切り、診療所の方向へ歩き始めた。
「……フレイザーとのこと…話すから…」
背中からかけられた小さな声に、ジャックは眉をひそめて立ち止まり、やがてゆっくりと身体を反転させた。
「あそこはどう?」
エリオットの指差す先には、小さな空き地が見えた。
公園と言える程のものではないが、ベンチがいくつか置いてあり、昼間は子供達の遊び場として使われていそうな場所だった。
「あ、一番星だ!」
ベンチに腰を降ろしたエリオットが、暗くなり始めた空を見上げて微笑む。
「エリオット、話すなら早く話せよ。」
「……人は死んだら星になるって本当なのかな?」
エリオットは空をみつめたまま、独り言のように呟いた。
「エリオット…話す気がないなら俺は…」
「……ジャック、君…人を殺したことがある?」
肝心な話を避けているようなエリオットの態度に苛立ち、ベンチから腰を浮かせたジャックにエリオットの声がかぶさった。
「何、馬鹿なこと言ってんだ。
そんなこと、あるわけないだろ!
話す気がないなら…」
「僕……人殺しなんだ……」
「えっ……!?」
今、耳にした話が信じられないとでもいうように、ジャックはエリオットの顔をのぞきこむ。
ゆっくりとジャックの方に向き直ったエリオットの瞳には、今にも溢れ出しそうな涙が溜まっていた。
「実はね……」
込み上がる感情を懸命に押さえながら、エリオットは、話し始める。
時間をかけてじっくりと、あの忌まわしき出来事を包み隠さずジャックに話して聞かせた。
診療所はあっちだぜ。」
「ジャック…風が気持ち良いからちょっと歩こうよ…」
「俺は帰る!」
ジャックはエリオットの誘いを振り切り、診療所の方向へ歩き始めた。
「……フレイザーとのこと…話すから…」
背中からかけられた小さな声に、ジャックは眉をひそめて立ち止まり、やがてゆっくりと身体を反転させた。
「あそこはどう?」
エリオットの指差す先には、小さな空き地が見えた。
公園と言える程のものではないが、ベンチがいくつか置いてあり、昼間は子供達の遊び場として使われていそうな場所だった。
「あ、一番星だ!」
ベンチに腰を降ろしたエリオットが、暗くなり始めた空を見上げて微笑む。
「エリオット、話すなら早く話せよ。」
「……人は死んだら星になるって本当なのかな?」
エリオットは空をみつめたまま、独り言のように呟いた。
「エリオット…話す気がないなら俺は…」
「……ジャック、君…人を殺したことがある?」
肝心な話を避けているようなエリオットの態度に苛立ち、ベンチから腰を浮かせたジャックにエリオットの声がかぶさった。
「何、馬鹿なこと言ってんだ。
そんなこと、あるわけないだろ!
話す気がないなら…」
「僕……人殺しなんだ……」
「えっ……!?」
今、耳にした話が信じられないとでもいうように、ジャックはエリオットの顔をのぞきこむ。
ゆっくりとジャックの方に向き直ったエリオットの瞳には、今にも溢れ出しそうな涙が溜まっていた。
「実はね……」
込み上がる感情を懸命に押さえながら、エリオットは、話し始める。
時間をかけてじっくりと、あの忌まわしき出来事を包み隠さずジャックに話して聞かせた。
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