夢の硝子玉

ルカ(聖夜月ルカ)

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四つ目の大陸

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「す、好きって…ど、どういうことなんだよ!?」

 「だから…あなたは男性としてのフレイザーにひかれてる…そういうことでしょ?」

 「ば、ば、ば、馬鹿言うな!
お、俺は、あいつを男として見たことなんかない!
あいつも、俺のことを弟みたいに思ってるし、お、俺もまったく同じ気持ちだ!
それ以外の気持ちなんてあるもんか!
お、俺は、男なんか好きにならないんだ!」

 興奮したジャックの声は大きく響き、廊下にいたダルシャが心配して扉から顔を出した。



 「どうかしたのか!?」

セリナは、ダルシャに向かってにっこり微笑む。



 「どうもしないわ。
ジャックとちょっと面白い話をしてただけよ。
ねぇ、ジャック!」

セリナの視線の先で、真っ赤な顔をしたジャックはダルシャに背を向けたままただ俯いていた。



 「ダルシャ、ジャックとの話はもう済んだから、入って来て良いわよ。」

 「そうか…それで、面白い話っていうのはどんな話なんだ?」

ダルシャの言葉に、ジャックは思わず顔を上げ、セリナをじっとみつめる。
セリナはジャックに悪戯っぽい笑みを返した。



 「……それは私とジャックだけの秘密!
ね!」

 小さな溜め息を吐きながら、ジャックはほっとしたように何度も頷く。



 「なんだ、君達は意地悪だな。
それに、セリナ…彼女をジャックと呼ぶのは…
 …そういえば、君の本当の名前は…」

 「『ジャック』よ!
……ダルシャ、ジャックはしばらくこのままでいたいって言ってるから、あなたもさっき聞いたことはしばらく忘れていてあげて!」

 「しかし……」

 「ダルシャ、わかったわね!お願いよ!」

ダルシャは、セリナの厳しい口調に諦めたように頷いた。



 「はいはい、わかりましたよ。
 君はこれからも、ジャックだな。
よくわかった。
ただ…困ったことがあれば、すぐに私に相談するんだ。
フレイザーにも言えないようなことがたまにはあるだろう?
そんな時は、私に言うんだぞ。」

ダルシャに肩を叩かれたジャックは、一瞬、身を固くする。



 「……ジャック…どうかしたのか?」

 「いや…なんでも…
どうかよろしくお願いします。」

ジャックは小さな声で呟いた。
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