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「ラスターは相変わらずなのか?」
「そうだよ。
もう船には何回も乗ってるのに、なかなか慣れないみたい。
……そういえば、フレイザーはもうすっかり慣れたみたいだね。」
「……まぁな。」
心地良い海風に髪をなびかせ、フレイザーはどこかおかしそうに微笑んだ。
船に酔わないのがダグラスの薬のおかげであることは、フレイザーとジャックの小さな秘密だった。
「……本当に薬を渡してやらなくて良いのか?」
「あぁ…たかが数日のことだ。
船の中でまたおまえと喧嘩にでもなったら困るからな。
しばらくはおとなしくしといてもらおう。」
小声で囁きあうジャックとフレイザーに、エリオットは不思議そうに小首を傾げる。
ゾラーシュから馬車に乗り、新しい港へ着いた一行は、次の日、ジャーマシー行きの船に乗りこみスエルシアの地を離れた。
スエルシアからジャーマシーへは四日の船旅だ。
船に乗りこんで数時間経つか経たないかの頃からラスターは船酔いでダウンした。
食べ物もほとんど口にせず、部屋の中でずっとおさまらない気分の悪さに耐えていた。
「そういえば、前から気になってたんだけど、どこの大陸に移っても言葉が変わらないのはありがたいよな。」
フレイザーの言葉に頷くエリオットとは裏腹に、ジャックは怪訝な顔を向けた。
「フレイザーはおかしなことを考えるんだな。
同じ世界で言葉が違うなんて考えたこともなかった。
大陸によって言葉が違ったら、不便過ぎて他所の大陸になんて行けないじゃないか。」
「……そりゃあ、まぁ、そうなんだけどな…」
エリオットとフレイザーは苦笑いを浮かべて顔を見合わせる。
自分達の世界には、たくさんの言語があることを知ったら、ジャックはどんな顔をするだろう?
そんなことを考えると、すっかり慣れた筈のこの世界がエリオットにはやはりとても不安なものに感じられた。
「フレイザー…僕達、いつ記憶を取り戻せるかわからないわけだし…また最初から文字を勉強しない?」
「え?あ……あぁ、そうだな。
それも良いかもしれないな。
そうだ、ジャック……俺達に読み書きを教えてくれないか?」
「それは良いけど…
俺、そんな難しい言葉は知らないぜ。」
「いいんだ。
子供と同じ程度の簡単な読み書きだけで。」
「……わかったよ。」
「ラスターは相変わらずなのか?」
「そうだよ。
もう船には何回も乗ってるのに、なかなか慣れないみたい。
……そういえば、フレイザーはもうすっかり慣れたみたいだね。」
「……まぁな。」
心地良い海風に髪をなびかせ、フレイザーはどこかおかしそうに微笑んだ。
船に酔わないのがダグラスの薬のおかげであることは、フレイザーとジャックの小さな秘密だった。
「……本当に薬を渡してやらなくて良いのか?」
「あぁ…たかが数日のことだ。
船の中でまたおまえと喧嘩にでもなったら困るからな。
しばらくはおとなしくしといてもらおう。」
小声で囁きあうジャックとフレイザーに、エリオットは不思議そうに小首を傾げる。
ゾラーシュから馬車に乗り、新しい港へ着いた一行は、次の日、ジャーマシー行きの船に乗りこみスエルシアの地を離れた。
スエルシアからジャーマシーへは四日の船旅だ。
船に乗りこんで数時間経つか経たないかの頃からラスターは船酔いでダウンした。
食べ物もほとんど口にせず、部屋の中でずっとおさまらない気分の悪さに耐えていた。
「そういえば、前から気になってたんだけど、どこの大陸に移っても言葉が変わらないのはありがたいよな。」
フレイザーの言葉に頷くエリオットとは裏腹に、ジャックは怪訝な顔を向けた。
「フレイザーはおかしなことを考えるんだな。
同じ世界で言葉が違うなんて考えたこともなかった。
大陸によって言葉が違ったら、不便過ぎて他所の大陸になんて行けないじゃないか。」
「……そりゃあ、まぁ、そうなんだけどな…」
エリオットとフレイザーは苦笑いを浮かべて顔を見合わせる。
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そんなことを考えると、すっかり慣れた筈のこの世界がエリオットにはやはりとても不安なものに感じられた。
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「え?あ……あぁ、そうだな。
それも良いかもしれないな。
そうだ、ジャック……俺達に読み書きを教えてくれないか?」
「それは良いけど…
俺、そんな難しい言葉は知らないぜ。」
「いいんだ。
子供と同じ程度の簡単な読み書きだけで。」
「……わかったよ。」
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