夢の硝子玉

再会

４３

「……おまえは挨拶の仕方も知らないようだな。
 挨拶ってのはな、こういうもんははずしてするんだよ！」

そう言うと、ラスターはジャックのフードを乱暴に後ろへめくりあげ、その反動でジャックは身体のバランスを崩してその場に膝を着いた。



 「やめろっ！」

ラスターの前に立ちはだかったフレイザーに、ラスターは悪びれるどころか威嚇するような目を向けた。



 「俺はこいつに礼儀を教えてやっただけだぜ。
こいつは礼儀知らずみたいだからな。」

 「ラスター、いい加減にしないか！」

オスカーの叱責に、ラスターは小さな舌打ちを残し、一人さっさと歩き始めた。



 「エリオット、すまないがラスターのことを頼む。」

ダルシャの言葉に頷き、エリオットはすぐにラスターの後を追う。



 「……ジャック、すまなかったな。」

オスカーの方にも顔を向けず、ジャックは俯いたままで小さく頷き立ち上がった。
フレイザーは、ジャックの膝に着いた土を払い、いつものようにジャックの頭にフードをかぶせる。



 「さぁ、では、私達もそろそろでかけるとするか。」

 「ダルシャ…面倒をかけるかもしれないがあいつのことを頼んだぜ。」

ダルシャはにこやかに頷き、オスカーと固い握手を交わした。



 「オスカーさん、お世話になりました。
ラスターのことなら心配しないで。」

 「ありがとうよ、セリナ…
それと、セリナ……」

オスカーはセリナを傍へ呼び寄せると、小さな声でセリナの耳に何事かを囁いた。
セリナの瞳が一瞬大きく見開かれてオスカーの顔をじっとみつめ、オスカーはそれに向かって小さな目配せを一つ返す。

ラスターのせいで、なんとも後味の悪い出発となったことを少し残念に感じながらも、オスカーは離れて行くダルシャ達に大きく手を振って見送った。
 胸の奥で皆の旅の安全を祈りながら…