夢の硝子玉

ルカ(聖夜月ルカ)

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 「おまえ…よっぽど、腹減ってたんだな…」

すべての料理を綺麗にたいらげたジャックを見て、フレイザーがくすりと笑う。



 「……し、仕方ないだろ!」

ジャックはわずかに頬を染め、怒ったようにそう言って俯いた。



 「ラスターに殴られたのか?」

 「……あんなの、なんてことない。」

 「……そうか……じゃ、そろそろ話してもらおうか…
ジャック…なぜ、あんなことをした?」

ジャックは、フレイザーの問いに俯いたまま何も答えない。



 「……セリナに聞いた。
 占い師に言われたんだってな。
 銀色の髪の人間がおまえの願いを叶えてくれるって…
 ……それで、俺がセリナのことを話した時、あんなに興味を示したんだな?」

ジャックは、小さく頷いた。



 「なぜ、そのことを俺に言わなかった?
 話してくれてたら、あんなことはしなくて済んだのに…」

ジャックは俯いたまま拳を握り締め、唇を噛み締める。



 「なぁ、ジャック…」

 「じゃあ……」

 「……え?」

 不意に顔を上げたジャックの瞳は涙で潤んでいた。
その様子に驚き戸惑うフレイザーに、ジャックは思い詰めた顔を向け、叫ぶように声を上げた。



 「じゃあ、あんたはなぜ俺に親切にしてくれたんだ!?
 俺を助けて、一体どんな得があるっていうんだよ!」

それだけ言うと、ジャックの瞳から一粒の涙がこぼれ落ちた。



 「ジャック…」

フレイザーは立ち上がり、向かいに座るジャックの後ろからその華奢な身体を抱き締めた。



 「何すんだ!馬鹿野郎!」

フレイザーの腕の中でジャックが抗っても、フレイザーはその腕を離さなかった。



 「ジャック…
おまえ、今までにどんな辛いことがあったんだ?」

 「そんなもん…俺には辛い事なんて…」

 「ジャック、俺の前では無理すんな。
 前にも言っただろ?
おまえのことは俺が守ってやるって。
おまえに兄弟がいるかどうかは知らないが、俺のことは兄貴だと思ってなんでも話せよ。
 兄が弟を助けるのに、損も得もないだろ?
……偉そうなことを言うつもりじゃないけど、困ってる者がいたら何かしたいって考えるのは当然のことだと思うんだ。
 俺達も皆にはあれこれ助けられた。
エリオットが、魔物の山で助けられたのも知ってるだろ?
 皆、なにかを目的に助けるわけじゃない。
 目の前に困ってる人がいたら、自分の出来る事をする……それは、ごく当たり前のことなんだ。」

 「嘘だ!
 俺は、今まで……」

ジャックはそれだけ言うと、唇をきつく噛み締める。
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