夢の硝子玉

ルカ(聖夜月ルカ)

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 「それでダルシャ、ゾラーシュに向かってどうするんだ?」

ガタゴトと走る馬車の中で、ラスターがダルシャに問いかけた。



 「まだなんとも言えない所だが…万一、ジャックの狙いが願い石だとすれば、セリナからこの大陸にもう願い石がないことを知り、おそらくはジャーマシーに渡ることを考える筈だ。
しかし、船に乗るには金がいる…」

 「ゾラーシュで盗みでもやるっていうのか?」

 「それもあるかもしれんが…
セリナが、宿屋にジャックあての金を預けていることを言っていれば、彼は宿屋へ向かうはずだ。
そして、ゾラーシュから新しい港の方へ向かうと思う。」

 「なるほど…!
じゃ、とにかく、まずは宿屋だな?」

ダルシャは、黙って頷いた。



 「……ダルシャ…それで、もしジャックを捕まえたら…どうするつもりなんだ?」

 窓の外に目を向けたまま、フレイザーが呟くようにそう尋ねた。



 「……そうだな…
セリナを誘拐したのだから自警団に引き渡す…」

その言葉に、フレイザーは強張った表情でダルシャの顔をみつめる。



 「……と、言いたい所だが……
ジャックのことは君に任せよう。
 君が思う通りにすれば良い。」

 「おい、ダルシャ!
そんな甘い事言ってて良いのか?
フレイザーはどうせまたあいつをかばうに決まってる。
だが、ジャックはセリナをかどわかしたんだぞ。
セリナがどんな目に遭ってるかもまだわからない。
うかつに許したら、今度こそ取り返しのつかないことになるかもしれないぞ!」

ダルシャは、ラスターに向かって小さく笑う…



「私はフレイザーを信じているよ。
 彼の判断なら間違いはないだろう…
 ……な、フレイザー?」

 「ダルシャ……ありがとう。」

 二人の耳に、ラスターの舌打ちが聞こえた。



 「そもそもフレイザーの判断が正しくなかったから、こんなことになったんだろ?
そんな面倒な奴と関わってたら…」

 「ラスターも、ジャックに会ってみればわかるよ…
彼が心底悪い人じゃないってことは…」

 今まで黙っていたエリオットが口を挟み、フレイザーに向かって頷きながら微笑む。
フレイザーは一瞬戸惑ったような表情を浮かべながらも、同じように微笑を返した。
ラスターは、二人のその様子に眉をひそめぷいと顔を背けた。
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