夢の硝子玉

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
上 下
251 / 802
再会

34

しおりを挟む




 「おい、食べないのか?」

オスカーの差し出した食べ物に、ジャックはぷいと顔を背けた。



 「ま、一食くらい食わなくても死にゃしない。
 食いたくないなら食わなくてけっこうだ。」

オスカーはそう言うと、さっさと食べ物を運び去って行った。
その後ろ姿を、ジャックは恨めしそうにみつめる。



 「じゃ、セリナ、俺は宿屋に行って来る。
 絶対にこいつの縄を解くんじゃないぞ。」

そう言い残し、オスカーは家を後にした。



 *



 「……ジャック、何か食べる?
おなか減ってるんでしょう?」

 優しく声をかけたセリナを、ジャックは鼻で笑った。



 「……良い気味だと思ってるだろう。」

 「そんなことないわ。
そりゃあ、あなたから解放されたことはほっとしてるけど…
良い気味だなんて思ってないわ。」

 「ふん、罠を仕掛けておいてよく言うぜ!」

ジャックは、冷やかな視線でセリナを睨みつける。



 「……あなたが信じないのならそれで良いけど…
私は、宿屋にお金を預けてあったことしか知らない。
もちろん、他の仲間もね。
オスカーさんは、あなたのことが気になってて、それで宿屋のご主人にあなたが来たら知らせるようにって頼んでたらしいのよ。」

 「今更そんなこと…もうどうだって良いさ。
……あのおっさんはどこへ行った?
 自警団に報せにでも行ったのか?」

 「ジャック…私はそんなことするつもりはないわ。
オスカーさんは、宿屋に行ったの。
 息子さんに頼んで、フレイザー達に連絡を取ってもらうように。
……前にも言ったでしょ?
 皆には、私からお願いしてあげる。
そして、一緒に願い石を探しましょう…ね、ジャック…」

 「触るな!」

 肩にそっと置かれたセリナの手を振り払うように、ジャックは大きく身体をねじらせた。



 「俺がそんな甘い言葉に騙されるとでも思ってるのか?
 俺みたいに、何の役にも立たない人間を仲間にするなんて、誰が考えてもおかしな話だ。
 何を企んでるか知らないが、俺は絶対に騙されないからな!」

 「ジャック…
 ……あなた、フレイザーのこともそんな風に思ってたの?
フレイザーがあなたに声をかけ、一緒に旅をしたのは、裏に何か企みがあるとでも思ってたの?」

その言葉にジャックの表情は険しいものに変わり、唇を固く噛み締めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活

ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。 「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。 現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。 ゆっくり更新です。はじめての投稿です。 誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。

愛想を尽かした女と尽かされた男

火野村志紀
恋愛
※全16話となります。 「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」

光のもとで1

葉野りるは
青春
一年間の療養期間を経て、新たに高校へ通いだした翠葉。 小さいころから学校を休みがちだった翠葉は人と話すことが苦手。 自分の身体にコンプレックスを抱え、人に迷惑をかけることを恐れ、人の中に踏み込んでいくことができない。 そんな翠葉が、一歩一歩ゆっくりと歩きだす。 初めて心から信頼できる友達に出逢い、初めての恋をする―― (全15章の長編小説(挿絵あり)。恋愛風味は第三章から出てきます) 10万文字を1冊として、文庫本40冊ほどの長さです。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 時々おまけを更新しています。

プラス的 異世界の過ごし方

seo
ファンタジー
 日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。  呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。  乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。 #不定期更新 #物語の進み具合のんびり #カクヨムさんでも掲載しています

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

人生負け組のスローライフ

雪那 由多
青春
バアちゃんが体調を悪くした! 俺は長男だからバアちゃんの面倒みなくては!! ある日オヤジの叫びと共に突如引越しが決まって隣の家まで車で十分以上、ライフラインはあれどメインは湧水、ぼっとん便所に鍵のない家。 じゃあバアちゃんを頼むなと言って一人単身赴任で東京に帰るオヤジと新しいパート見つけたから実家から通うけど高校受験をすててまで来た俺に高校生なら一人でも大丈夫よね?と言って育児拒否をするオフクロ。  ほぼ病院生活となったバアちゃんが他界してから築百年以上の古民家で一人引きこもる俺の日常。 ―――――――――――――――――――――― 第12回ドリーム小説大賞 読者賞を頂きました! 皆様の応援ありがとうございます! ――――――――――――――――――――――

ファンタジーは知らないけれど、何やら規格外みたいです 神から貰ったお詫びギフトは、無限に進化するチートスキルでした

渡琉兎
ファンタジー
『第3回次世代ファンタジーカップ』にて【優秀賞】を受賞! 2024/02/21(水)1巻発売! 2024/07/22(月)2巻発売!(コミカライズ企画進行中発表!) 2024/12/16(月)3巻発売! 応援してくださった皆様、誠にありがとうございます!! 刊行情報が出たことに合わせて02/01にて改題しました! 旧題『ファンタジーを知らないおじさんの異世界スローライフ ~見た目は子供で中身は三十路のギルド専属鑑定士は、何やら規格外みたいです~』 ===== 車に轢かれて死んでしまった佐鳥冬夜は、自分の死が女神の手違いだと知り涙する。 そんな女神からの提案で異世界へ転生することになったのだが、冬夜はファンタジー世界について全く知識を持たないおじさんだった。 女神から与えられるスキルも遠慮して鑑定スキルの上位ではなく、下位の鑑定眼を選択してしまう始末。 それでも冬夜は与えられた二度目の人生を、自分なりに生きていこうと転生先の世界――スフィアイズで自由を謳歌する。 ※05/12(金)21:00更新時にHOTランキング1位達成!ありがとうございます!

処理中です...