夢の硝子玉

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
上 下
232 / 802
再会

15

しおりを挟む




「オスカーさん、長い間お世話になりました。」

「オスカーさん、本当にどうもありがとうございました。」

まだ夜の明けきらない薄紫の空の下で、ダルシャ達は口々にオスカーへの言葉を述べる。



「そっちの用事がすんだら、またいつでも遊びに来てくれ。
待ってるからな。」

お互いが手を振り、オスカーの家から離れて行く最中、ラスターが振り向き一際大きな声をはりあげた。



「おやじーーー!
必ずまた戻って来るからな!」

そう叫ぶと、ラスターは町に向かって駆け出した。
残された者達は、一瞬戸惑いながらも、ラスターの言葉に顔を見合わせにっこりと微笑む。



「……あの野郎……」

オスカーは、目尻に溜まった涙をそっと指で拭った。







「あれ~?
皆、どうしたんだ?こんな朝っぱらから。」

眠そうな顔をしたフレイザーが、扉の隙間から顔をのぞかせた。



「……フレイザー…結局、連れの者はみつからなかったのだろう…?」

「……まぁな。」

「そうか……さぁ、行くぞ!
すぐに準備してくれ。」

「えっ!?な、なんで?」

「話は後だ。さぁ、急ぐんだ。」

ダルシャの有無を言わさぬその口調に、フレイザーはまだぼんやりしながらもその指示に従った。
フレイザーが顔を洗い服を着替えると、扉の前にはすでにラスターがフレイザーの荷物を持って立っていた。



「さぁ、行くぞ!」

「行くって…どこへ?」

「良いから早く!」

眠気はなくなっていたものの、わけもわからないままに歩かされ……フレイザーはついにたまらなくなってダルシャに声をかけた。



「なぁ、ダルシャ、そんなに急いでどこへ行くんだよ。」

「次の町から馬車に乗る。」

「馬車ならゾラーシュからも出てるだろ?
なんでわざわざ…」

「良いから、良いから!
さ、頑張って歩くよ!」

誰からも詳しいことを聞けないまま、フレイザーは皆と一緒に歩き続けた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】過保護な竜王による未来の魔王の育て方

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
魔族の幼子ルンは、突然両親と引き離されてしまった。掴まった先で暴行され、殺されかけたところを救われる。圧倒的な強さを持つが、見た目の恐ろしい竜王は保護した子の両親を探す。その先にある不幸な現実を受け入れ、幼子は竜王の養子となった。が、子育て経験のない竜王は混乱しまくり。日常が騒動続きで、配下を含めて大騒ぎが始まる。幼子は魔族としか分からなかったが、実は将来の魔王で?! 異種族同士の親子が紡ぐ絆の物語――ハッピーエンド確定。 #日常系、ほのぼの、ハッピーエンド 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/08/13……完結 2024/07/02……エブリスタ、ファンタジー1位 2024/07/02……アルファポリス、女性向けHOT 63位 2024/07/01……連載開始

放逐された転生貴族は、自由にやらせてもらいます

長尾 隆生
ファンタジー
旧題:放逐された転生貴族は冒険者として生きることにしました ★第2回次世代ファンタジーカップ『痛快大逆転賞』受賞★ ★現在三巻まで絶賛発売中!★ 「穀潰しをこのまま養う気は無い。お前には家名も名乗らせるつもりはない。とっとと出て行け!」 苦労の末、突然死の果てに異世界の貴族家に転生した山崎翔亜は、そこでも危険な辺境へ幼くして送られてしまう。それから十年。久しぶりに会った兄に貴族家を放逐されたトーアだったが、十年間の命をかけた修行によって誰にも負けない最強の力を手に入れていた。 トーアは貴族家に自分から三行半を突きつけると憧れの冒険者になるためギルドへ向かう。しかしそこで待ち受けていたのはギルドに潜む暗殺者たちだった。かるく暗殺者を一蹴したトーアは、その裏事情を知り更に貴族社会への失望を覚えることになる。そんな彼の前に冒険者ギルド会員試験の前に出会った少女ニッカが現れ、成り行きで彼女の親友を助けに新しく発見されたというダンジョンに向かうことになったのだが―― 俺に暗殺者なんて送っても意味ないよ? ※22/02/21 ファンタジーランキング1位 HOTランキング1位 ありがとうございます!

暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~

暇人太一
ファンタジー
 仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。  ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。  結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。  そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?  この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

神の手違い転生。悪と理不尽と運命を無双します!

yoshikazu
ファンタジー
橘 涼太。高校1年生。突然の交通事故で命を落としてしまう。 しかしそれは神のミスによるものだった。 神は橘 涼太の魂を神界に呼び謝罪する。その時、神は橘 涼太を気に入ってしまう。 そして橘 涼太に提案をする。 『魔法と剣の世界に転生してみないか?』と。 橘 涼太は快く承諾して記憶を消されて転生先へと旅立ちミハエルとなる。 しかし神は転生先のステータスの平均設定を勘違いして気付いた時には100倍の設定になっていた。 さらにミハエルは〈光の加護〉を受けておりステータスが合わせて1000倍になりスキルも数と質がパワーアップしていたのだ。 これは神の手違いでミハエルがとてつもないステータスとスキルを提げて世の中の悪と理不尽と運命に立ち向かう物語である。

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)

いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。 --------- 掲載は不定期になります。 追記 「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。 お知らせ カクヨム様でも掲載中です。

魔力無し判定の令嬢は冒険者を目指します!

まるねこ
恋愛
「マーロア様には魔力がございません」 神官のその言葉に父は絶句し、母は泣き崩れた。 私は魔力を持つ貴族社会では生きづらいだろうと領地の端にある村へと送られ、生活することになった。 村で先生と出会い、冒険者になるという夢を持って王都に戻り、学院に入学し、騎士科で過ごす。幼馴染のファルスと共に先輩や王族との出会いを通じてマーロアの世界は広がっていった。 魔獣を倒すので人によってはグロと感じるかもしれません。 《11月29日より開始のカクヨムコン10に応募しています。★のご協力頂ければ嬉しいです。》 Copyright©︎2022-まるねこ

ご期待に沿えず、誠に申し訳ございません

野村にれ
恋愛
人としての限界に達していたヨルレアンは、 婚約者であるエルドール第二王子殿下に理不尽とも思える注意を受け、 話の流れから婚約を解消という話にまでなった。 ヨルレアンは自分の立場のために頑張っていたが、 絶対に婚約を解消しようと拳を上げる。

処理中です...