216 / 802
それぞれの旅立ち
109
しおりを挟む
「……これはもう遥か昔…俺がスエルシアに来て間もない頃、偶然みつけたもんなんだ。
俺は、十分、願い石の恐ろしさを知っていたから、これは誰にも渡しちゃいけないと思い、ずっと隠し持っていた。
これから先も一生誰にも見せるつもりはなかったよ。
だが…これも運命なのかもしれん。
いや…ロザリアさんの導きなのかもしれん。
……ラスターとか言ったな。
俺は、おまえが今すべき願いを…この石に願って欲しいと思って持って来たんだ。
……だが、残念なことにこの石が願い石なのか双子石の方なのかは、俺にもわからない。
叶うか、叶わないかはわからないが…やってみるか…?」
ラスターは泣きはらした赤い目で、その石をじっとみつめる。
「ラスター…」
ダルシャの口から、心配そうな声が漏れた。
「俺……」
「わかるな、ラスター!?
おまえが、願うべきことが…
……俺はおまえを信用してるからな。
失望させないでくれよ。」
そう言いながら、オスカーはラスターの手の中に、水色の石をねじ込んだ。
ラスターは、何かを考えるように手の平の石をじっとみつめ、やがて深く頷いた。
「……ありがとう、オスカーさん。
俺…この石を使わせてもらうよ。」
オスカーに向かってそう言ったラスターは、両手で石を包み込んで目を閉じ、微かに震える声で願いを唱えた。
「頼む…
どうか、エリオットの亡骸をここへ…!」
セリナはその願いに口許を両手で押さえ、息を飲んだ。
……しかし、石は割れることなく、その場にエリオットの亡骸が現れることもなかった。
「……残念だな。
やっぱりそれは双子石の方だったか…
でも、おまえはやっぱり俺の見こんだ通りの男だ!
俺が考えてたことを願ってくれた……
ありがとう、ラスター…
本当にすまなかったな。
辛い事をさせて…」
ラスターの身体を抱き締めるオスカーの瞳は、今にもこぼれ落ちそうな涙で潤んでいた。
「いや…礼を言うのはこっちの方だよ。
あのままだったら、俺は…とんでもない間違いを犯す所だった。
エリオットをもっと苦しめる所だったよ。
……あんたの言葉はすごくこたえたけど…でも、良かった。
それに……こんな俺のことを信じてくれてありがとう。
あんたが、この石を使わせてくれたこと…感謝してるよ…」
ラスターの瞳から、また熱いものが流れ落ちた。
今度の涙は、先程とは違う気持ちのこもった涙だった…
俺は、十分、願い石の恐ろしさを知っていたから、これは誰にも渡しちゃいけないと思い、ずっと隠し持っていた。
これから先も一生誰にも見せるつもりはなかったよ。
だが…これも運命なのかもしれん。
いや…ロザリアさんの導きなのかもしれん。
……ラスターとか言ったな。
俺は、おまえが今すべき願いを…この石に願って欲しいと思って持って来たんだ。
……だが、残念なことにこの石が願い石なのか双子石の方なのかは、俺にもわからない。
叶うか、叶わないかはわからないが…やってみるか…?」
ラスターは泣きはらした赤い目で、その石をじっとみつめる。
「ラスター…」
ダルシャの口から、心配そうな声が漏れた。
「俺……」
「わかるな、ラスター!?
おまえが、願うべきことが…
……俺はおまえを信用してるからな。
失望させないでくれよ。」
そう言いながら、オスカーはラスターの手の中に、水色の石をねじ込んだ。
ラスターは、何かを考えるように手の平の石をじっとみつめ、やがて深く頷いた。
「……ありがとう、オスカーさん。
俺…この石を使わせてもらうよ。」
オスカーに向かってそう言ったラスターは、両手で石を包み込んで目を閉じ、微かに震える声で願いを唱えた。
「頼む…
どうか、エリオットの亡骸をここへ…!」
セリナはその願いに口許を両手で押さえ、息を飲んだ。
……しかし、石は割れることなく、その場にエリオットの亡骸が現れることもなかった。
「……残念だな。
やっぱりそれは双子石の方だったか…
でも、おまえはやっぱり俺の見こんだ通りの男だ!
俺が考えてたことを願ってくれた……
ありがとう、ラスター…
本当にすまなかったな。
辛い事をさせて…」
ラスターの身体を抱き締めるオスカーの瞳は、今にもこぼれ落ちそうな涙で潤んでいた。
「いや…礼を言うのはこっちの方だよ。
あのままだったら、俺は…とんでもない間違いを犯す所だった。
エリオットをもっと苦しめる所だったよ。
……あんたの言葉はすごくこたえたけど…でも、良かった。
それに……こんな俺のことを信じてくれてありがとう。
あんたが、この石を使わせてくれたこと…感謝してるよ…」
ラスターの瞳から、また熱いものが流れ落ちた。
今度の涙は、先程とは違う気持ちのこもった涙だった…
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
転生したらチートすぎて逆に怖い
至宝里清
ファンタジー
前世は苦労性のお姉ちゃん
愛されることを望んでいた…
神様のミスで刺されて転生!
運命の番と出会って…?
貰った能力は努力次第でスーパーチート!
番と幸せになるために無双します!
溺愛する家族もだいすき!
恋愛です!
無事1章完結しました!
錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。
いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成!
この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。
戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。
これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。
彼の行く先は天国か?それとも...?
誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。
小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中!
現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
悪役令嬢戦記!~大切な人のために戦います~
naturalsoft
ファンタジー
【2020年大幅な見直しと挿絵の増加、追加執筆中】
どうやら生前大ヒットした国民的乙女ゲームに良く似た世界に転生しました。
現在の私のキャラなのですが、タイトル通り悪役令嬢の立場であるシオン・フィリアス公爵令嬢として産まれ変わりました。
本来なら良くある卒業パーティーで、断罪イベントの中でざまぁされるキャラですが【良く似ている世界】であってゲームとは違うのですよ。偶発的にモンスターの大氾濫(スタンピード)が発生してしまい国内が大いに荒れて大勢の人が死に、国は弱体化しました。それに付け込んで他国も侵略してきたからさー大変です!悪役令嬢物語が戦国乱戦のゲームに早変わり!私、生き残れるのかしら!?ってゆーか、ヒロインよ!何とかしなさいな!えっ、恋愛乙女ゲームだったから何の力も無いですって!?
使えなーい!!!!ヒロインって何でしたっけ???
※投稿スピード重視の為、誤字脱字は気付き次第直していきます。
※100話を記念して【漫画】を投稿しました。同名タイトルの漫画もお楽しみ下さい!
【キャラ画像公開しました!イラストでよりイメージしやすくなると思います!】
【漫画版】漫画:少女部門ランキング1位獲得!
【悪役令嬢戦記!パロディ編】絵本部門ランキング1位獲得!
(試し書きの練習版で1位とか……)
ありがとうございます!
(小説より高評価で複雑な気持ちです)
【完】転職ばかりしていたらパーティーを追放された私〜実は88種の職業の全スキル極めて勇者以上にチートな存在になっていたけど、もうどうでもいい
冬月光輝
ファンタジー
【勇者】のパーティーの一員であったルシアは職業を極めては転職を繰り返していたが、ある日、勇者から追放(クビ)を宣告される。
何もかもに疲れたルシアは適当に隠居先でも見つけようと旅に出たが、【天界】から追放された元(もと)【守護天使】の【堕天使】ラミアを【悪魔】の手から救ったことで新たな物語が始まる。
「わたくし達、追放仲間ですね」、「一生お慕いします」とラミアからの熱烈なアプローチに折れて仕方なくルシアは共に旅をすることにした。
その後、隣国の王女エリスに力を認められ、仕えるようになり、2人は数奇な運命に巻き込まれることに……。
追放コンビは不運な運命を逆転できるのか?
(完結記念に澄石アラン様からラミアのイラストを頂きましたので、表紙に使用させてもらいました)
結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください
シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。
国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。
溺愛する女性がいるとの噂も!
それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。
それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから!
そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー
最後まで書きあがっていますので、随時更新します。
表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
赤い流星 ―――ガチャを回したら最強の服が出た。でも永久にコスプレ生活って、地獄か!!
ほむらさん
ファンタジー
ヘルメット、マスク、そして赤い軍服。
幸か不幸か、偶然この服を手に入れたことにより、波乱な人生が幕を開けた。
これは、異世界で赤い流星の衣装を一生涯着続けることになった男の物語。
※服は話の流れで比較的序盤に手に入れますが、しばらくは作業着生活です。
※主人公は凄腕付与魔法使いです。
※多種多様なヒロインが数多く登場します。
※戦って内政してガチャしてラッキースケベしてと、バラエティー豊かな作品です。
☆祝・100万文字達成!皆様に心よりの感謝を!
小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる