夢の硝子玉

ルカ(聖夜月ルカ)

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それぞれの旅立ち

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 「そんなことがあったのか…
大変だったんだな。
それで、エリオット…皆とはどこで別れたんだ?」

 「それが…僕…
まだよくわからなくて…
ただ、皆と旅をしていたことくらいしか……」

エリオットは、俯きもどかしげに唇を噛んだ。



 「まぁ、そう慌てても仕方がない。
とにかく、本当の名前がわかって、仲間と会えて良かったじゃないか。
 今日は、これで店仕舞いして家でゆっくりしようじゃないか。」

シャルロッテの提案に従い、皆は薬を片付けシャルロッテの家へと戻った。



 *



 「エリオット、本当にこれおまえが作ったのか?」

フレイザーは出された料理の皿を、信じられないといった表情でじっとみつめた。



 「僕…前はそんなに何も出来なかったの?」

 「まぁ、そんなに料理をする機会がなかったっていうのもあるけど、おまえはセリナと比べても出来ない方だったぞ。
しばらく離れてる間に、ずいぶん成長したもんだなぁ…」

フレイザーは、感心しきったようにしみじみと答える。



 「マー…いや、エリオットじゃったな。
エリオットはもういつでも嫁に出せるくらいに仕込んであるぞ。
 料理も掃除もみっちりとな。」

 「もうっ!シャルロッテったら!」

 頬を赤く染めるエリオットを見て、フレイザーは複雑な表情を浮かべる。



 *



 「エリオット、ちょっと良いかな?」

 夕食後、フレイザーはエリオットを呼び出し、家の周りをゆっくりと歩き始めた。




 「エリオット…おまえ、まだ記憶が戻ってないんだよな?
それじゃあ、俺達のことは覚えてるか?」

 「お…俺達のことって……」

エリオットは真っ赤になって俯き、そのまま言葉が途切れた。



 「な、な、何、赤くなってんだよ!」

 「ご…ごめん!
でも、僕、きっとすぐに思い出すと思う。
だって…君のことは思い出したんだもの。
 君が傍にいてくれると、なんか、とっても安心出来るし…だから、きっと…その…そうじゃないかって思ってたんだ…」

 「お…お…おいっ!エリオット、しっかりしてくれよ!」

 「ま…待って!
 僕…すぐに思い出すから……」

そう言いながらエリオットは走り去り、フレイザーはその場に呆然と立ち尽し、エリオットの後姿をみつめていた。



 (あいつ……
ものすごい勘違いしてないか…?)

 
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